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22使ってみた感想

「学校に行くのが憂鬱だ……」


 次の日の朝、目覚ましの音で起床した私は気分が最低だった。今日もまた彼女たちとの応酬が待ち受けている。それを思うと、気分が上がるわけがない。それでも、彼女たちに負けず、もう少し新しい学校生活を頑張ると決めたのだ。


 私は両手で頬を叩いて無理やりやる気を出し、学校に行く準備を始めた。




「おはよう、シャンプー、使ってみてくれたんだね。どうだった?見た目はツヤツヤに見えるし、香りも素敵だけど」


 学校に着いて玄関で靴を履き替えていると、昨日、シャンプーを貸してくれた津谷さんに声をかけられた。


「おはようございます。確かに髪につやが出たような気がしますが、私的には香りが……」


「だよね?他人から見て髪がツヤツヤに見えるんだから、本人はもっと自覚するよね。今なら、動画の広告欄の下のURLに飛ぶだけで、だいぶ安くシャンプーを購入できるから、試してみるといいよ。次は、自分の髪質診断で自分にあった最適なシャンプーを作ってもらって自分専用シャンプーを作れるから、さらに髪にツヤが出るね!あああ、いい香り。やっぱりラベンダーの香りって落ち着くよねえ。次もラベンダーの香りにしよう」


 本日も、人の話を聞かないこの高校の生徒っぷりは顕在のようだ。



 さて、このままここにいては、クラスの人以外にも目をつけられる可能性がある。クラスメイトでさえ面倒くさいのに、他のクラス、他の学年にまで自分の容姿に難癖をつけられてしまっては敵わない。


「しゃ、シャンプーの感想は教室で……。他の子たちのおすすめ商品も使ってみたから、それについても……」


「そうだね!平さんはいろいろ試さなくてはいけないことがたくさんあるから、私だけが独占してはいけないね。ごめんごめん、クラスでの約束を破るところだった」


「クラスの約束……」


 いったい、クラスでどんな約束が交わされたというのだろうか。想像するのが恐ろしいが、きっと私がらみで何らかの約束がされて、それはおそらく、『独占』という言葉から連想できるものだろう。深く考えたら、立ち直れなくなりそうなので、頭の片隅に追いやることにした。



「おはよう!あら、平さん、一日で見違えるようにきれいになったね!」


「ほんとだ!髪と顔色が良くなったね」


「あれ?除毛クリームは使わなかったの?毛の処理がしていないようだけど」


 教室では毎度おなじみの光景が待ち受けていた。私が教室を入るのを確認していたかのように、ドアを開けた瞬間、複数の女子から私の容姿に関する感想を聞かされた。こんなにタイミングよく私に声をかけてくると不気味である。監視カメラでも設置されていて、私が教室に入るタイミングを見て、一斉に声をかけてきたみたいだ。


「いや、それもこの学校ならありえそうで怖い……」


「ねえ、聞いてる?」


「きっと、自分の身体の変わりようについていけていないのよ。でも、まだまだ改善の余地があるから、頑張ってもらわなくちゃ」


「髪と顔がきれいになったけど、あれ?昨日、除毛クリーム渡していなかった?」


 私が彼女たちの行動を推察していて返事をしないと、勝手に話しは進められていた。別に髪が少しばかりツヤが出て、肌は汚れが落ちて白くなったくらいで、自分の身体の変化についていけずに言葉を失うわけがない。そもそも、そこまで髪も顔についても悩んではいない。コンプレックスでもないのだ。そこが少し改善されたからと言って何になるというのか。根本的に彼女たちとは意見が異なるようだ。


「ああ、除毛クリームは今日、試してみるよ。シャンプーと洗顔であまりにも効果が高くて、興奮して忘れちゃった(ハート)」


 とりあえず、今日、除毛クリームを試すことを伝えてみる。高校生だからと言って、語尾にハートをつけてみるが、私がやって果たして可愛いものかわからない。しかし、効果はあったようだ。彼女たちは感動で目が潤み始めていた。


『平さん、素直でいい子!』


 どうして、こんな陳腐な言葉でいい子呼ばわりされないといけないのか。そもそも、私はあんたたちの子供でもないので、その妙に上から目線の言葉が癪に障る。


 そうこうしているうちに、予冷がなったので、私たちは席に着く。面倒くさい一日がまた始まった。

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