18もう少し頑張ってみることにした
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12保健室に行って早退したい の続きからになります。
家に無事にたどりついた時には、私は疲れてぐったりとしてしまった。
「ただいまあ」
「おかえり。ずいぶんと疲れた顔をしているわね。先にお風呂にでも入る?まだ夕飯までに時間があるけど」
「うん、そうする」
母親が私の声を聞いて玄関前に姿を現す。そして、私の姿をみて気を利かせて風呂を入れてくれた。風呂が入るまでの間に、私はカバンを自分の部屋に置き制服からスウェットに着替えた。
ちなみに制服は紺色のブレザーに赤いリボンタイ、赤のチャック柄のスカートで、近所からは可愛らしいと評判の制服らしい。私としては、校則で規定されているスカート丈がやけに短い気がするのだが、それが女子にはうれしいことらしい。普通は膝下くらいだと思うのだが、なぜか膝上で規定されていた。確かに、この学校に通う生徒なら、生足をさらしても問題はないくらいに細くて白い。何も問題はないだろう。
私以外の生徒にとっては。私だって別に足が太いわけではないが、足を堂々と晒せるほどの自信はない。膝下くらいがちょうどよいと思う。
「はあ、転校したいなあ」
風呂に入りながら、今日の出来事を改めて振り返る。
・昼休みにクラスメイトの女子に囲まれてお昼を食べ損ねそうになる
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・教室から逃げ出し購買に向かう
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・購買でメロンパンをゲット、変な後輩男子に出会う
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・午後の授業は体育で、教室には誰もいないことに気付く
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・体育はあきらめて、弁当を食べて寝てしまう
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・体育後の教室の制汗剤で具合が悪くなって保健室に行きたいと訴える
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・保健室に行かなくてよいことになり、6時間目の教科担任と一緒に職員室に向かう
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・保健室の先生に廊下で出会う
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・やばそうな雰囲気を感じ取り、大声を出してその場から逃げ出し帰宅
思い返してみると、結構大変な一日であったことがわかる。変な奴らがそろう学校に明日もいかなければならないことに気分が憂鬱になる。せっかく風呂に入ってリラックスしているのに、台無しだ。
「もう、今は考えるのをやめよう」
風呂につかりながら、私は目をつむって何か楽しいことはないかと考える。
「思いつかない……」
最近の出来事が強烈すぎて、何も楽しいことが思い浮かばない。仕方なく、身体が十分に温まったところで風呂から上がることにした。風呂に出て、私はあることに気付いた。
毛を剃っていない
「もう、あきらめよう」
見て見ぬことにして、私はリビングに向かった。
「ただいま。あれ、どうしてかず姉がいるの?午後の授業があったはずだよね?」
リビングで、ドライヤーを使って髪を乾かしているうちに、弟が帰宅してきた。そういえば、私は早退したのだった。
「ああ、ちょっと体調が悪くなって、6時間目を休んで早退した」
「ふうん」
昨日の今日で、弟は私の体調不良の原因に気付いたのだろう。何も言わずにそのまま二階に上がっていく。何も詮索されないことにほっとしたが、自分で聞いておいてその反応はなんだかイラついた。とはいえ、すでに精魂尽き果てていた私は、弟を怒鳴る気にもなれなかった。
「早退したのね。どうりで早く帰ってきたと思った。調子が悪いのなら、家に電話してくれればよかったのに。迎えに行ったわよ」
「ええと、あの、まあ……」
母親が私と弟の会話を聞いてしまったらしい。私は今日の出来事をなんと説明したらいいのか迷っていると、はあとため息をつかれてしまう。
「転校したいのなら、そう言ってくれていいのよ。どうせ、学校がストレスで身体の調子を壊したのでしょう?今日、お父さんに相談してみたら?」
「別に転校するほどでは」
ないとは言い切れない自分に腹が立つ。別に母親を心配させたいわけではない。母親の様子をうかがうと、私のことを心配そうに見つめる視線があった。
「とはいえ、学校に通っているのは和子だから、和子のしたいようにすればいいわ。転校したいのなら、お父さんに相談すればいいし。もう少し頑張れそうなら、頑張ってみるのもいいと思うわ。なんにせよ」
私はあなたの味方だから
「ありがとう。とりあえず、もう少しだけ今の学校で頑張ってみることにするよ」
ちょっと泣けてきた。母親の心強い言葉が身に染みる。私は、母親に心配かけないように笑顔で頑張ることを伝えた。それを不審げに見ていた母親だが、夕食準備の途中だったのか、急いでキッチンに向かっていった。




