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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

蛇と桜

桜の元で

作者: 伊勢


あらすじにあった通り、「僕の蛇と桜」の原案になります。こちらの方がグロ少なめ、カニバリズムなしと読みやすいと思います。





小学生の時、迷い込んだ森の中で僕は不思議な出会いを果たす。



※※※



森の中に1本の大きな桜の木があった。


それは季節を問わず、満開に咲き誇るなんとも不思議な木だった。たまたま森の中に遊びに来ていた僕はそれを唖然と見上げた。



「わぁ…綺麗」



今は初秋、桜が咲くはずがなかった。しかしその場所だけは常春のように暖かく不思議と安心する場所だった。


生来、マイペースでのんびりした性格の僕は特に深く考えることも無くただ美しい景色に魅入った。


桜の根元まで近づき美しいその花を見つめながら僕はいつの間にか眠りについた。


そんな僕を木の上からじっと見つめる何かがいるとも知らずに。





チロチロと何かに頬を擽られる感覚に目を覚ました


「ん…なに…?」


目を覚ますとそこには見たこともないくらい大きな白蛇がいた。


「…わぉ」


蛇は木の上からスルスルと降りてくると僕を見下ろした。

その蛇は桜同様とても美しく、そしてなんだかとっても神秘的な存在だった。不思議と恐怖は感じない。


何か言いたそうな蛇に僕は首を傾げた。


「…えっと、こんにちは?蛇さん」


蛇も首をコテンと傾げるとペコッとお辞儀した。


…なんとも賢い蛇のようだ。

人の言葉がわかるらしい。


「蛇さんはここに住んでるの…?」


蛇はまたコクンと頷いた。

そして尾の先で僕の胸をツンツンと啄いたあと、桜をチラと見上げてコテンっと首を傾げた。


「えーっと、なんでここにいるかってこと、かな?」


蛇は頷いた。


「今日はね、父さんが休みだからって森にキャンプに連れてきてくれたんだ。でもなんか暇でさ、森の中を探検してみよーかなって入ったらここを見つけたんだ。

…不思議だよね、今は秋なのにこんな綺麗に桜が咲いてるなんて…蛇そんはどうしてかわかる?」


蛇は何かを考えてるようだったが暫くしてフルフルと頭をふった。


「そっか、まぁいいや」


もうひと寝むりしようと横になった僕を蛇はじっと覗き込みツンツンと続いたあと今度は森をちらと見つめた。


「ん?帰らないのかってこと?」


コクン


「んー、まだいっかなぁ。どうせ僕なんかを心配する人なんていないし。いないことに気づいてすらないかもね。それに、なんだかここって凄く落ち着くんだよね…」


蛇はやがてやれやれと言ったふうに頭を振ると僕の横でうずくまった。


「…蛇さんは1人でここにいるの?」


コクン


「寂しくはないの?」


コクン


「そっか…あのさ、またここに来てもいいかな…?」


蛇はじっと僕を見つめて、やがて頷いてくれた。

嬉しくなって僕はつい蛇に抱きついてしまった。


「やった!ありがとう!」


蛇は驚いたようで目をまん丸に見開いたが、ヤレヤレと僕の背中を尾で優しく撫でてくれた。


「あ、そうだ。僕の名前は朔。蛇さんは?」


蛇は暫く逡巡した後、口を開けたり閉じたりした。

当たり前だがそこから言葉が紡がれることは無かった。


しゅんと落ち込んだ蛇が何だか可愛そうで僕はヨシヨシと撫でてあげだ。


「ごめん、僕には蛇語はわかんなかったや…

じゃあ、なんて呼ぼうかな…何時までも蛇さんはなぁ…うーん」


ふと上を見上げるとそこには変わらず美しく桜が咲いていた。


「…桜と白蛇、ね…白桜なんてどう?安直かな?」


蛇は嬉しそうにチロチロと舌を出して頷いた。


「これでいいってこと?…じゃあ今度から白桜って呼ぶね。よろしく、白桜」


蛇…白桜はこの時から僕の親友になった。




それからというもの僕は休みの度に家を抜け出して白桜に会いに来た。


「はくー!来たよー」


白桜は桜の木からスルスルと降りてくると僕に巻きついてぎゅっと抱きしめてくれる。


蛇特有のひんやりした感触がとても気持ちよかった

正直、傍から見たら大蛇に襲われてるようにしか見えなかったことだろう。

だが、彼は出会った時からずっと僕の事をとても優しい瞳で見つめてくれていた。

そんな彼のことを信頼していた僕は襲われるとか1度も考えたことはなかった。


「白あのねー…」


僕は日頃あったことを白桜に話す。

それが楽しいことでも、悲しいことでも、とてもくだらなくてつまらない話でもなんでも話した。

彼はたまに頷きながら静かに僕の話を聞いてくれる


彼と言葉を交わすことは出来ないけれど、ただそばに居てくれる彼のことが大好きだった。





高校生になり部活やバイトで忙しくなかなか彼に会いに行けなくなった。

それでも時間の許す限り彼に逢いに行く。

そんな些細な日常が僕にとってとても幸せな事だった。



その日も、白桜に会うため森に入った。

いつも通りの道をゆく、その時僕は偶然にも殺人現場を見てしまった。


咄嗟に隠れようとしたがガサッと音を立ててしまい、そこにたっていた人物に気付かれてしまった。


振り向いたそいつは…僕の父だった。


「なに、してるの…?」


「朔、か?なんでこんな所に…」


父の傍らで血まみれで倒れてるその人は胴体をズタズタに引き裂かれていた。

もう、死んでいるのだろう。

虚ろなその瞳に生気は無かった。


「…死んでる、の?」


「朔、大丈夫か?顔が真っ青だぞ?」


父はなんてことのないように僕に近づいてきた。

いつも通りの不自然なほどの自然体。


「…とう、さん?」


「どうした?何を脅えてるんだ?」


「だ、だってあれ…」


「ん?あぁ。大丈夫だよ朔。大丈夫だ。大丈夫」


父さんはそっと僕を抱きしめた。

その瞬間、背中に激痛が走った。


「あ…」


「大丈夫。大丈夫」


僕の頭をそっと優しく撫でながら何度も、何度も何度も僕を突き刺す。


父は穏やかな顔で何度も「大丈夫」といった。


「大丈夫、時期に何もわからなくなるよ」


崩れ落ちた僕を押し倒して今度はお腹を引き裂く父は、今までにないほど穏やかで慈愛に満ちた表情で僕を見つめていた。


「愛してるよ。朔」


ゴボゴボと血が吹き出し、だんだんと感覚が無くなっていく。

その中で浮かぶのはあの美しい桜の中に佇む、白桜のことだけ。


「…白、はくぉ…」


ごめん、もう君に会いに行けそうにないや。

最近ろくに会いに行けてないのに…ごめんね。


「うわ!なんだこいつ…へ、蛇?!」


その時父の叫び声が聞こえた。


シャー!!!


「や、やめろ!ぐっ…うわぁ!!!」


暫くして静寂が訪れた。

僕の視界には鬱蒼とした木々が見えるだけで、父の姿は見え無くなった。体を動かそうにも、ピクリとも動いてくれない。


何が起こったのか…父はどうなったのか?

そういえば先程蛇と言っていた気がする…。

もしかして…


「は、くぉ…?」


指1本動かせないはずの僕の体は誰かにそっと抱きしめられるとスルスルとどこかへ移動する。


この感触は…


そっと目を開けるとそこはいつもの美しい桜の元、美しい白蛇がいた。


「はく…」


彼は心配そうに僕の頬をチロチロと擽る。

これがたとえ夢だとしても最後に彼に会えてよかった。


「は、く…はくぉう、あの、ね…」


僕は重い腕を動かしてそっと彼の頭を引き寄せた。


「いま、ま…で、あり…がと、う…」


そっと彼の額に口付け、今まで言えなかった気持ちを吐き出す。


「すき、だよ…」


僕は最後に笑えてたかな…

もう、大好きなあの花も大好きな彼のことも何も見えない。

それでも、最後に言えてよかった…


僕の意識はそこでプツンと途切れた。





涙を沢山流し血塗れの中微笑みながら幸せそうに死んでいった朔を見つめて、その蛇はそっと涙を流した。







お読みいただきありがとうございます。


これがどうしてカニバリズムありのグロ多めなお話になったのか自分自身とても不思議でたまらないです…


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