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第20話 その手を離すものか

 サメ吉の背びれに捕まり海を進む、スキル【魚人】のおかげで海の中でも視界は変わらない。

 しかし夜の海はさらに視野が狭く、まだ成瀬を確認できていない。



 くそ!! どこだ成瀬!!



 沈んでいるはずの地点を探すが視界が暗すぎて確認しきれない。

 しかし俺の視界の端、そのギリギリのところに何か赤い物が一瞬見える。


 俺はすぐにサメ吉から離れ、力の限り泳いでその場所まで向かう。

 それは成瀬の制服、胸の辺りについていたリボン。



 それを手に掴みその真下、海の底を睨む。



 いた!!



 力なく沈んでいく成瀬。

 体を細く水の抵抗を無くすように俺は一気に深度を潜っていく。


 すぐに成瀬に追いつき抱えてゆっくり浮かび上がった。

 海面から出るとサメ吉がスタンバイしていたので成瀬を背に乗せ急ぎイカダのある方向へ泳ぐように指示した。


 サメ吉が通ろうとするとイカダの群れは自然と道を開け俺のイカダまで一本の道のようにそこが開けた。

 イカダに成瀬を乗せ状態を確かめる。



「くそ!! 息してない!!」



 成瀬の顔色は悪く、事態は最悪だ。

 俺は迷うことなく成瀬と唇を重ねて息を送り込んだ。

 学校で学んだ事のあるうろ覚えの蘇生措置。もっとまじめに聞いときゃよかった。

 今さら悔やんでも仕方ない。


 必死に息を送り込み、心臓マッサージを続ける。



「戻ってこい!! 戻ってきてくれ成瀬!!」



 俺の言葉に反応するように突然、口から水を吐き出しせき込む成瀬。

 弱弱しく息をし始めた成瀬。

 意識は戻ってはいないがなんとか一命はとりとめたようだ。



「よかった......よかった.......。」



 激しい不安が一気に安堵に変わったことによってたちまち力が抜けてしまった。

 目の前で幼馴染が死にかけた。その状況の中よくパニックを起こさなかったものだ。

 ここにきてサバイバルの経験が生きてきているのかもしれない。


 俺は一息ついてから成瀬をイカダのベットまで運び、寝かせてあげた。

 学校の制服のままここに飛ばされた成瀬、短いスカート、濡れたブラウスが体い張り付いてうっすらと下着を透かしている。


 って俺何見てんだバカヤロウ! 成瀬が気を失ってる時に......

 でも本当にきれいになったよな。

 女の子ってこんな短期間で変わるもんなんだな。

 確かに昔から綺麗で品があったけど、もう大人の女性って感じだ。

 それに比べて俺は......


 ダメだダメだ。やっぱり変に意識してしまう。

 今はとりあえずゆっくり休ませてあげよう。


 俺は成瀬を抱きかかえ小屋の中のベットに優しく寝かせてあげる。

 そして部屋から出て海を眺めた。



「まさかこれで終わりってわけじゃないよな。バトルフィールドってんだからさ。」



 まだ何も起こっていない。

 だけど何があっても俺は成瀬を守る。

 そう胸に固く誓った。


 そう思った矢先、水平線の向こうでいくつもの花火が打ちあがった。

 物凄い量の花火。360度すべてに花火の光が舞い上がり辺りを明るく照らす。



 周りのイカダたちがざわつき始める。

 何事だとうろたえる人たちの声。


 そんな中、サメ吉が俺の横まで泳いできて――



「いよいよ始まるぜダンナ。死に物狂いで生き残ろうぜ。」



 その言葉に静かにうなずき、すぐに両手に水中銃を構え辺りを警戒する。


 じきに花火が打ち終わり、また静寂な海が戻ってくる。

 いつの間にか周りのざわつきも収まっていた。


 波の音だけが広がる。

 静かに薄暗い水平線を睨んでいた。


 そんな時――



「おい!! なんだあれ? なんかこっちに向かってくるぞ!!」

「こっちもだ!! すごいスピードだ!!」



 あちこちで海面から水しぶきを上げ何かが一直線に俺らの場所に向かってくる。

 まるで映画で見た海中を走る魚雷のような水しぶき。

 俺は水中銃を構え、そのしぶきに狙いを定めた。



「さぁ何がお出ましだコノヤロウ!!」



 高鳴る心臓を抑えながら神経を研ぎすます。

 突然、俺から離れたイカダの誰かが声を上げた。



「なんだこいつは!!!!」



 悲鳴にも似た叫び声。

 すぐさま声の方に振り替えると、中年の男が何か得体のしれないものに抱き着かれていた。


 人間の子供くらいの大きさで緑色の体、手足があり人間に近い姿はしているが皮膚にはウロコのようなものが見える。まさにマンガとかゲームで見たあの姿。



「まさか、半魚人ってオチですか?」



 俺の言葉が合図になったかのようにそこから一斉に辺りから悲鳴が鳴り始めた。

 次々と海から飛び上がりイカダの主に襲い掛かる半魚人。

 恐怖でパニック状態に陥っている人たち、とても応戦できる状態じゃない。



「うぎゃぁぁぁああああ!!!!!!」



 海の中に引きずり込まれていく人達。

 とはいえみんなを助けているほど俺にも余裕はない。

 自分のイカダ廻りを警戒する。


 そんな時、俺の背後の海面から半魚人がイカダに乗り込んできた。

「ぎょぎょぎょ!!」とお決まりの鳴き声から俺のことを取って食おうとするその目。



「うえぇー気持ちわりぃー。なんだよこいつ。」



 体はネバネバの粘液で覆いつくされており顔は魚というかカエルだった。

 手足は水かきが付いていて背中にも背びれがある。

 首元のエラがパクパクと膨らんではしぼみ、グロテスクな風貌に拍車をかけていた。


 俺はすぐに水中銃を半魚人に向ける。

 水中銃が何かわかっていないのだろう半魚人は俺に何かを向けられて警戒したのか大きく足を広げ低く構えた。


 今なら敵は止まってる。

 撃てば必ず当たるはずだ。

 そうは思うのだが姿形は人間に近いものがある。

 俺は指を引くのを躊躇してしまった。


 迷いに付け込んだのか、すかさず半魚人は俺の方へ一直線に飛び掛かり鋭い歯を大きく見せ襲い掛かってきた。



「しまった!!」



 半魚人の圧力に後ずさり体勢を崩してしまっている状態で飛び掛かる敵を打ち落とすことは不可能。

 完全に油断した。


 スローモーションで迫る鋭利な歯が俺に届く、そのほんの手前で横から激しい水しぶきを上げながらバカでかい魚が飛び上がり、半魚人をまるかじりにしてイカダを空中でまたぎ、そのまま海に引きずり込んでしまった。


 一瞬の光景、俺は荒く呼吸をしながら沈んでいった海面を見ていた。

 するとそこからひょっこり顔だけだしたサメ吉がペッと半魚人の骨らしきものを吐き出し――



「ダンナ、ここはバトルフィールドですぜ。そんな事じゃあのお嬢ちゃんもすぐにこいつらのエサになっちまいますよ。」



 サメ吉はニヤッと笑ってまた海面下に潜っていってしまった。


 サメ吉の言うとおりだ。なにやってるんだ俺は。

 今の成瀬は抵抗すらできない状態だ。俺が死んだらそれこそ奴らのエサになっちまう。

 こっから先はどっちかが死ぬかの世界。

 俺の命は俺一人のものじゃない。


 必ず守る。成瀬。

 必ずだ。


 俺は心を引き締め再び水中銃を構える。

 そして海面に見える水しぶきに向かって容赦なくその引き金を引いた。




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