さて、お仕事しますか
もらったビールはあと二口分くらい。
「そろそろお風呂の準備しますねー」
ソファに座ってビールを飲んでた松っちゃんは、ポカンと口を開けた。
「いや、今日は話を聞いて欲しくて呼んだだけだから…」
「えー?お金勿体無いですよ?」
お風呂の準備を済ませ、部屋に戻る。単に湯船にお湯を入れるだけなんだけど。
ホテル取って、風俗呼んで、ビール与えて、話をするだけなんて、アホに違いない。
それか、別の目的があるとか?
そー言えば、どっかのサイトに《風俗嬢を落とす方法》とかあった気がする。
風俗嬢のサービスを受けず、穏やかに話をするだけで、高確率で外で会えるとかなんとか…。
いや、他の子は知らんが、私はその手じゃ《落ちない》から、読んだ時は爆笑したっけ。
外で会いたいなら、最低3回は顔見せてくれないとなー。もちろん、サービスは受けてもらうし。
「いや、なんか今日は人恋しくて…」
「ん?じゃあ尚更ヤルことヤラないと!」
人恋しいのに、話だけ…とか、キモい。
そもそも日常生活で『人恋しくて…』なんて、そんなセリフ、言わないし、言われない。
なんか、ドラマの脚本とか小説とかのセリフみたいで、白々しいってゆーか、嘘くさいってゆーか。
ホント、何が目的だよ、こいつ。
あ、私が好みのタイプじゃないからか?
食指が動かないのだろうか?
「スレンダーな若い子じゃないと、出来ないってことですか?物理的に」
「え!?」
「ん?だから、細身の若い子以外には勃たないってことですか?」
松っちゃんは口も目も開いて私を見ている。
なんだ?何故そんな顔で見る?
気がついたら私も首が傾げてた。
「いや、別にそんなことは…」
「なんだ、良かった!後で『やっぱりサービス受けてないからお金返して』とか言われてもイヤなんで、サービスは受けて下さいね?」
とっておきの営業スマイルをかましてやった。会心の一撃だ。
「ええ!?」
松っちゃんの目と口が更に開いた。
「たまにいるんですよ〜、そーゆー人」
私が出会った『そーゆー人』はたった一人だけだが。
勿論、ホントにヤル目的じゃなく、話だけの人はいる。
紳士的な感じで、明らかに雰囲気で分かる。
松っちゃんは紳士的なセリフ回しをしているけど、なんか違うんだよねー。
「ぶふっ…ははははは」
唐突に笑い出した。大丈夫?
「ホントに居るの?金返せとか言うやつ」
なんか興味津々の様子。
「居ますよー。バッグの中を漁ってた人もいました」
お湯が溜まるまで、ほんのちょっとだけ漁られた時の話をする。
よほど面白かったのか、風呂に行ってもこの手の話を聞きたがる。
「いやー、マリアちゃんのサービス、スゴイね」
「何が?」
「俺、風呂でまでこんなサービスされた事ない」
え?ボディ洗いは基本でしょ?
「またまた〜」
「いや、ホント」
「え?じゃあみんな何してんの?」
「俺、地元で呼んだことないんだけど、いつも行く隣町の店の子は、普通に手で洗ってくれるだけだよ」
え〜、手抜きもいいとこじゃん。




