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ゲームと現実


「なんで転ばせたのさ」


目の前で無表情に立っている主ーー猿飛佐助が淡々と話す。


「・・・・・」


私は冷や汗ダラダラで、佐助の何の感情も見えない瞳から目を逸らすことしかできなかった。


・・・だって、その理由は死亡フラグを叩き折るためです!ってそんなの言えるわけないじゃん!!絶対頭がおかしいって思われて終わりだよ!!


「・・・・・」


「・・・・・」


とは言え、ずっと沈黙なのは辛い、辛すぎる。

でも、適当なことを言っても佐助には嘘をついているってバレそうで恐いし・・・


「まだ」


私がどんな理由を話そうか悩んでいると、突然佐助が声をかけてきた。


「えーと・・・」


私は急いで頭をフル回転させ、どう話そうか考える。これほど頭を回転させるのは生まれて初めてだ。いや、()()して初めてか。


「・・・・・」


佐助は無言で私を見下ろしている。冷ややかな視線がチクチクと体に突き刺さり、居心地が悪い。


うぅ、何て言おう。確か、死亡フラグは佐助に助けられて惚れるのが原因だから・・・・・って、それだ!!


「貴方に借りを作りたくなかっただけです!」


これは半分本当で半分嘘だ。だって助けられる事は借りを作る事と同じでしょ!


私はついどや顔で言ってしまったけど、襟巻きで口もとを覆って隠しているから見られていなかったと思う。


「ふーん」


佐助は真偽を確認するようにしばらくの間私の顔を見ていたが、興味を失ったのかすぐに視線を逸らした。


助かった・・・のかな。


安心していいのかよく分からない。


「とっ、とりあえずこの人達を縄で縛りましょう!」


話をそらそうと、敵の忍の後処理の事を話題に出す。


「さっ・・・(あるじ)は縄をお持ちですか」


佐助と言いそうになり、慌てて主と言い換えた。だって、私はもう佐助の部下だから主を佐助って呼べるわけないじゃん。心の中では佐助って呼ぶけど。


「ん」


そう言うと、佐助は懐から縄を取り出し、鮮やかな手際で気絶している男達を縛り上げた。


「あっ、すいません」


私がやるべき事なのに主にやらせてしまった・・・でも正直、さっきの二人との戦いで力を使い果たして体がだるかったから助かった。


「とりあえず、この事を高坂先生に報告しにいきましょう」


どこの忍か分からない奴らが佐助を倒すために私達の里の領域に忍び込んでいて、里の案内中に突然襲ってきたって事を早く報告しに行かないと!


「お前さんはじっとしてな」


私が膝に手を置いて立ち上がろうとすると佐助に止められた。


「どうしてですか」


尋ねると佐助が私のふくらはぎに視線を向けたので視線を落としてみれば、私のふくらはぎから一筋の血が流れていた。


そっと血をなぞると、ピリッとした痛みが走る。どうやらクナイがかすった程度の浅い傷のようだ。一応毒の心配もしたが、まだ何も症状が現れていない。多分大丈夫だろう。


戦いに必死で全然気付かなかった。だってクナイだよ。刃物だよ。無我夢中で戦わないと下手したら死んで・・・


今更ながら体に震えが走る。武者震いからじゃない。今度こそ恐怖からの震えだ。


「・・・っ!!」


思わず両腕で自分の体を強く抱き締める。まるでここに自分が存在しているのを確かめるように・・・


「じゃ、お前さんはここでじっとしてな」


佐助はそう言うのと同時に姿を消した。




「・・・・・」


佐助が居なくなってしばらくすると、木々が柔らかくざわめき、日差しが降り注ぐ。


ここに残っているのは私と佐助によって縛られている敵の忍達だけだ。


チラッと敵の忍の様子を確認すると、さっきまでの戦いを思い出す。


私に向かって投げられたクナイ。


目の前までクナイが迫っていたこと。


相手の瞳に殺意が籠っていたこと。


「・・・くっ!!」


殺意は本物だった。敵は本気で私を殺そうとしていたんだ。


今思い出すと、体の震えが止まらない。


ここはゲームじゃない、現実の世界なんだ。一度死んだらもう二度と生き返れない。


ふくらはぎからゆっくりと流れ落ちる血が、それを示している。



ここが現実の世界なのだと・・・


























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