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備え有れば憂いなし


いつもは鳥のさえずりが聞こえ、木々が風によって柔らかくざわめくとても居心地の良い森・・・・・・だけど、今は違う。


森に不相応な甲高い金属音や人々の怒号が森全体に響き渡る。強く枝を蹴り、木伝って移動することで木々が激しくざわめく。




「「はあっ!」」


二人の忍が私に向かってクナイを投げてきたが、今度は弾かずにジッとそのクナイを見つめる。


右肩、左胸、右腕、左足か・・・


クナイの飛んでくる方向を観察し、出来るだけ小さな動きですべてのクナイを避ける。そして、留まっていた木の枝を力強く蹴って一人の忍の懐へと潜り込む。


「・・・っ!!」


まさかクナイを避けて懐に潜り込まれるとは思ってもいなかったのか、その忍は目を大きく見開き、私を凝視していた。


まずは一人・・・


相手の鳩尾(みぞおち)に向かって拳を突き上げようとした瞬間、殺気を感じて後ろへ飛び去る。すると、さっきまでいた場所にクナイが突き刺さった。


「油断するな!」


「ああ、わかってる」


さすが実践を積んでいるだけあるな。お互いに協力し合っているからなかなか隙ができない。それに隙ができたとしてもさっきみたいにもう片方の忍に邪魔される。




さて、どうしようかな・・・・・


とりあえず、私は二人とは逆の方向に向かって木伝い、距離をとる。別に逃げているわけじゃないよ!たださっきも言ったようにこの二人には隙が無い。我武者羅(がむしゃら)に攻撃をするよりは距離を取ってゆっくり対策を考えた方がいい。


そう考えている間にも後ろから追いかけてくる足音がどんどん近づいてくる。


うわぁ、全然思いつかない。ゲームの結衣はどうやってこの二人を相手にしていたんだろう。


私が木伝いながら考え悩んでいると、ふと・・・懐かしい記憶が脳裏をよぎる。



◇◇◇◇◇



『結衣、こっちだよー!』


『待てー!』


『誰が待つか』


『結衣ちゃんこっちこっちー』


『このー!』


数人の子ども達が元気よく森の中を駆け回る。中には木に登ろうとしてズルズルと滑り落ちている子どももいる。


『うわっ!!』


突然一人の男の子が木の根に躓いて転んだ。


『はい、今度は龍くんの鬼!』


皆を追いかけていた女の子はその隙を逃さず、素早くその男の子にタッチする。


『だあー、何でこんなところで草が結んであんだよ!!』


男の子は転んだままの体勢で足をバタつかせ、喚き出す。よく見ると、男の子の足もとでは草が結ばれてあり、転ぶように仕掛けられていた。


『私がやったんだよ!』


『はあ!』


『だーかーらー、私がやったの!これならすぐタッチできるからね♪』


そして、女の子が胸をそらして得意げに微笑む。その様子はまるで褒めて褒めてと尻尾を振っている犬のように見える。


『ずりぃー、今の無し!!』


『だめ!次は龍が鬼だよー!!皆逃げろーーー!!』


男の子が不貞腐れた表情を浮かべて文句を言うが、女の子はそれを気にせず、叫びながら駆け出す。


『『わーーー!!』』


『おいっ!今の無しだろうが!!待てっ!!』


『やだよーー!』


そして、子ども達がまた笑いながら森の中を駆け回り始めた。



◇◇◇◇◇



そうだ、ここは私が子どもの頃によく皆で遊んでいた森だ・・・


あの頃の私はあまり走るのが速くなくて、いつも鬼ごっこでは最初に鬼になっていた。


でも、ある日良い事を思いついてさっそく実行してみると、私は鬼から逃げきれるようになった。



それは今思い出したように()を作ることだ。


最初は草を結んで転ばせるだけの簡単な罠だった。でも皆がだんだん罠に引っ掛かからなくなってきたので、落とし穴や上から網が降ってくる罠やら色々と作っていた。


・・・多分、今でもその罠は残っていると思う。


もし彼らをあそこに連れていったら・・・

どうなるかなんて連れていかないと分からない。でもこのままあいつらにやられるくらいなら試すだけでも試した方が良い!!


私がそう意気込んでいると、いつの間にか近くに来ていた忍が忍刀で私を斬りつけようとしていた。


「・・・っ!」


しかし、ここはすでに私が子どもの頃によく遊んでいた場所。いわば、私のテリトリーだ!


私は上から垂れている紐を見つけ、引っ張っる。すると、私を斬りつけようとしていた忍の上から()()()が落ちてきた。


「ぐぅっ!!」


「宇城!!」




まさか・・・たらいが落ちてくるなんて誰が想像できただろうか。しかも雨水の入ったたらいを・・・


私も想像できなかった。てっきり網が降ってきて相手の動きを封じるぐらいかなあって思っていたのに・・・


たらいは忍の頭に直撃したようで、少しふらついている。


少し可哀想だなと思いつつも、その隙を逃さずにすぐさまその忍の首裏に手刀を落として意識を刈り取る。


「・・・っ」


すると、その忍は糸の切れた人形のようにゆっくりと地面に向かって落ちていく。


いやぁ、まさかたらいが落ちてくるとは思わなかったけど、結果良ければすべてよし!みたいな。


・・・でも、あんなに苦戦していた敵がただのたらいでやられるなんて・・・・・


「よくも宇城を!!」


木から落ちた忍に哀れみのまなざしを向けていると、もう一人の忍が私に飛び掛かってきた。手に持っているのはクナイ。おそらくクナイで斬りかかってくるのだろう。


私は懐から取り出したクナイを構えて攻撃を弾く・・・ように見せ掛け、忍がすぐ目の前に来た瞬間にしゃがみこみ、足払いをかける。


「・・・っぅ!!」


しかし、先に忍が勘付かれて後ろへ飛び去られた。


気づかなければ早く終わったのに!と内心悪態をつきつつ、もう一つの罠を見つけた。


たしかこの罠は・・・と紐を見つめて思い出そうとしていると、後ろから忍が接近してくるのを感じた。


もう何でもいい!網でもたらいでも槍でも落ちてこい!!と、思いっきり紐を引っ張る。


すると、今度は目の前から矢が飛び出してきた。って、矢ー!!


「・・・っと!」


私が避けると、後ろにいた忍に向かって飛んでいく。忍は咄嗟にクナイでその矢を弾いたが、その瞬間に脇腹が無防備になったのでそこに拳を思いっきり突き上げる。


「っ!!がっ・・・」


忍はお腹を抑えて前のめりになり、苦しそうに顔を歪めるだけで意識はまだ残っているようだ。


まだ意識が残っていたのか。結構丈夫だな。


私は攻撃の手が緩んでいるその隙に忍の背後をとり、首裏に手刀を落として意識を刈り取る。


「・・・っ」


相手がどさりと地面に倒れたところをしっかりと確認して、私は大きく息を吐く。


やっと終わった・・・これで私はもう・・・・・


緊張の糸が切れて地面に座り込む。地面に座ると忍装束が汚れるが気にしない。だって忍装束は元から黒いから、汚れはあまり目立たないんだ。


「・・・あっ!」


ちょうど手元に、罠に仕掛けてあった矢が転がってきたので手にしてみる。一見普通の矢だが、妙な違和感を感じてよく観察してみる。


「・・・あれ」


すると、その矢の先端は矢じりではなく、ただの()である事に気付いた。


たらいが落ちてくる罠や先端が石の矢が飛び出す罠を作ったり・・・・・子どもの頃の私はいったい何から逃げていたというの・・・と思わず遠い目をしてしまった。


まぁ、今はそんなことよりもとりあえず戦いが終わって良かったと胸を撫で下ろすが、ふと佐助のことが頭に引っかかる。


いやいやいや、佐助は私を殺すかもしれない方なんだよ!!別にどうなったっていいじゃん!!それにゲームでも生きていたんだから、どうせ大丈夫だろう。って、別に佐助の心配なんかしてないんだから!!


私は頭をブンブン振って否定するが、やっぱり気になる。


少しだけ様子を見てみようかな・・・と、思って腰を上げようとした瞬間、後ろから鋭い殺気を感じた。


「・・・っ!!」


慌てて後ろを振り返ると、最初に倒したはずの忍がいた。


何で、どうして・・・さっき気絶させたはずなのに・・・・・


私が困惑している間にも、忍は私に向かって手に持っている忍刀を降り下ろす。


駄目だ!!避けられない!!


「・・・っ!!」


私が諦めて目を閉じようとした瞬間、佐助がこっちに向かってクナイを投げる姿が見えたような気がした。


ああ、結局ゲーム通りになるんだ・・・私はゲーム通りに佐助に助けられて、恋して、殺される・・・ただの当て馬キャラなんだ・・・・・



そう考えると、諦めていたはずなのにだんだん怒りが膨れ上がってくる。



何で、何もかもゲーム通りにならないといけないの!私の人生は私だけのものなの!!!勝手に私の人生を決めつけるなーー!!


私は目を開けると地面に手をつき、忍に足払いをかける。忍は私がもう諦めたと思って油断していたのか、簡単に足払いに引っ掛かって転んだ。すると、ちょうど後ろから佐助が投げたと思われるクナイが飛んできて地面に突き刺さる。


私が忍に足払いをかけると佐助が少し驚いたような表情をしていた気がするが今はどうでも良い。


これで佐助に助けられたことにならなくて済んだ。でも、油断はできない。まだ忍には意識がある、ただ転ばせただけで何もしていないんだ。


私が忍に目を向けると、忍が佐助に気づいたようで、不利だと気づき、逃げようと足に力を入れていた。


逃がすか!!!と私は忍にクナイを投げると同時に足払いをかける。忍はクナイに気をとられていたから足払いを避けきれず、転んだ。


私はその隙を逃さず、転んだ瞬間に首裏に手刀を落とす。


確実に忍が気絶したのを確認してから、今度こそ大きく息を吐く。


・・・疲れた。佐助に会ってからずっと神経張り詰めていたから精神も身体もボロボロだよ。もう動きたくない。


私がぐでーっと木の幹に体を預けていると、足音が近づいてきた。


誰だ。と思って顔を上げると、そこには私の主である猿飛佐助が無表情で立っていた。



あっ!忘れてた・・・





戦いの部分を小説で書くのって難しい(ー_ー;)


頑張って書いてみましたが皆様はどうでしたか?




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