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第四話 みそラーメンが、世界を救ったかもしれない件


 そんなこんなで、女の子はみそラーメンを食べ始めた。

 もちろん、ちゃんとフーフーをして。


「……おいしい」


「だろ?」


「これは、何ていう料理?」


「みそラーメンだよ」


「みそラーメン……」


 さすがはみそラーメン、異世界の魔王をも唸らせるとは。

 そのまま女の子は、どんぶりに口を近づける。


「フー、フー……ズズッ……あっつっ!」


「ハハッ。スープも、おいしいだろ?」


「うん……おいし……」


 女の子はスープをすすり、頬を赤らめ、満足気な表情を見せた。

 ……くそっ、かわいいじゃねーか。

 ついさっきまで、俺を殺そうとしていたくせになっ!

 俺は女の子が食事をしている間に、事の顛末を聞き出した。


 やはり女の子は、ルネサンクという国がある異世界から転移してきたらしい。

 住んでいた城に人間が攻めて来るとの情報が入り、自身では使えない部下の転移魔法で脱出をしたという。

 しかし急であった為、転移魔法をかけた部下の魔力が足りてなく、違う目的地に飛んでしまったのではないか?

 そんな経緯であった。


「なるほどね……」


「フー、フー……ズズッ……うまっ!」


 ……これまたありきたりな展開だが、みそラーメン食べながら語る内容じゃなくねっ!?

 ここはこう、フォークをテーブルにバンッと置いて、ぐぬぬってなるシーンでしょ!?

 っていうか、やっぱりルネサンクには魔法があるのね……。

 俺は話の最後に、肝心なことも聞きだす。


「で、お迎えはすぐに来るの?」


「いや、当分は来ない」


「えっ……?」


「転移魔法は、相当な魔力が必要だから」


「じゃあ、どうするの……?」


「……どうしよう?」


 女の子は、行く所がないと言わんばかりに俺を見つめた。

 みそラーメンを、すすりながら……。

 おぉいっ! 事の重大さ、分かってますっ!?


「転移する前に、何か言われなかったっ!?」


「特に何も。だって物語のプロローグみたいな、急展開だったし」


「なんでちょっと、楽しげな表情してんだよっ!」


「てへっ」


「頭コツンして、舌出してる場合じゃねーだろっ!?」


 ちくしょうっ! 転移魔法かけたやつ、いつか絶対ぶん殴ってやるっ!


 ……しかしどうする? 警察に届けるか?

 いや、常識に考えてだめだろ。

 まず異世界人なんて信じてくれないだろうし、その影響で女の子が暴れだしても困る。

 ってことは、俺の部屋に居させるしかねーじゃねーかっ!

 ……とりあえず、名案を話そう。

 俺はため息をつき、一大決心をした。


「俺の名前は、高橋良太」


「リョータ」


「そう、良太。で、お迎えが来るまで、俺の部屋に居させてあげる」


「ほんとに?」


「うん、なので殺しちゃだめだよ。そして今から、君は俺の親戚っ!」


「えっ?」


「他の誰かに会っても、親戚のふりをするんだ。だから、メロディって呼ぶからな?」


「……分かった」


「それとメロディが魔王ってことは、二人だけの秘密だ」


「なんで?」


「こっちの世界には、色々と事情があってね……」


「分かった」


「よし。あっ……とりあえずブーツを脱いでほしいかな」


 はぁ……我ながら、ほんと苦肉の策だぜ。

 でも、そうこう言ってる場合じゃないっ!

 しかし、意外と素直に受け入れてくれたな。

 ブーツも、すぐに脱いでくれてるし。

 後はお迎えが来るまで、おとなしくしてもらうだけだ。


「で、ここは日本。ルネサンクじゃない」


「うん」


「人間が住んでいる国だけど、メロディの敵じゃない」


「ルネサンクじゃ人間は悪い人、敵だと教えられた」


「まぁルネサンクにいる人間がどんな人達か知らないし、この国も悪い人がいるっちゃいるけど、ほとんどの人はいい人だ」


「そうなの?」


「うん。ちなみにそのみそラーメンも、日本の人間が発明したんだぜ」


「……凄いな。よし、最初リョータを殺して、この国を滅ぼそうとしたけどやめる」


 やっぱり滅ぼそうとしてたんかーーーーーーーいっ!!

 危なかった……俺、世界を救ったんじゃねっ!?

 するとメロディが、再び満足気な表情を見せる。






「だって、みそラーメンおいしいから」


「そこは俺のおかげだろっ!?」






 また思わずツッコミを入れてしまったが、やけに素直だったのはみそラーメンのおかげだったのか……。

 頼みの綱にはしてたけど、まさかここまで効果があるとはなっ!

 皆さーーーーーーーんっ!! 聞きましたかーーーーーーーっ!?

 みそラーメンが、世界を救いましたよーーーーーーーっ!!


 こうして俺は、魔王様とルームシェアをすることになった。

 夢のような展開のはずが、まさかの魔王襲来。

 とりあえずは、セーフ……なのかこれっ!?


 やがてメロディがみそラーメンを食べ終え、ご馳走様も言わずに俺を見つめる。


「リョータ、メロディって言った」


「なんだ? 名前で呼ばれるのが、気に入らないのか?」


「いや、普段そんな気楽に呼ばれないから」


 俺はこの時、初めて魔王様の笑顔を見た。




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