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第三話 とりあえず魔王様に、ご飯を作ってあげた件

「お腹……減った……」


 どうやら女の子は、お腹が減って座り込んだみたいだ。

 アニメみたいな、爆音鳴らしてましたもんね。

 しかし座り込むって、どんだけだよ……。

 俺は立ち上がり、頭を掻きながら女の子に声をかける。


「……どれぐらい、食べてないの?」


「食事ができる状況じゃなかったし……昨日の夜から何も……」


「日本とルネサンクの時間が一緒なら、半日ちょっとか」


 色んな意味でホッとした俺は、ため息をついた。

 もちろん日本とルネサンクの時間が、一緒かどうかってのは分からない。

 しかし言語の問題と同じく、こういう場合は大体一緒だしねっ!

 すると女の子が、震えた声で俺に問いかける。


「私は……死ぬの……?」


「えっ?」


 ……あれか、この子は魔王だから、きっと超裕福なはず。

 半日ご飯を食べれなかったことなど、今まで一度もないんだろう。






 名案、閃きました。






 異世界人、それに魔王と言えど、見た目は人間の女の子。

 半日食べれなかったくらいで、死ぬ訳がない。

 この子がそれを知らないってことは……チャンスだっ!

 俺は部屋と玄関の間にある、キッチンへと向かった。

 もちろん、閃いた名案の過程で――。


「何か作るから、少し待ってて」


「うう……」


「その代わり俺を殺そうとせず、話を聞いてね」


 そのまま俺は、帰りに買った袋麺のみそラーメンを作り始めた。

 はぁ……ついさっきまで殺されかけていたのに、こうやってみそラーメンを作れるとか。

 ほんとオタクで、よかったぜ……。

 なんかどっと白けたから、同時に夕食のお米も炊き始める。


 途中部屋に目を向けると、女の子は壁を凝視していた。

 部屋の壁には、美少女キャラのポスターが貼ってある。

 女の子は、それに目を留めていたのだ。

 それもどこか、悲しげな雰囲気で。


「私は死んだら、絵にされちゃうのね……」


「しないからっ!」


 俺がツッコミを入れると、女の子はヨロヨロと立ち上がった。

 なぜか少しだけ、セクシーなポーズをとりながら。






「……ポーズは、こうがいいかな」


「死にかけてるんじゃないのっ!?」


「そうだった……」






 女の子が再び座り込む中、俺はどんぶりを用意する。

 そして完成したみそラーメンをどんぶりに移し、女の子の元へと持っていった。

 俺の勝手な想像だけど、箸は使えないだろうから、フォークと一緒に。


「ほら、食べて」


「人間の……作った物なんて……」


 女の子は、見事なまでにベタベタな発言をした。

 はいはい、言うと思ったよ……。

 俺はみそラーメンをテーブルの上に置き、その場に座り込んだ。


「毒でも入ってると思っているのか? 食べないと、死ぬよ?」


「うっ……しかし、いい匂い……」


 観念したのか、女の子はフォークを手に取り、ゆっくりと麺をすくった。

 ふっふっふっ……ここまでは、一応計画通りっ!

 ……んっ? ちょっと待て。

 この子、熱々の麺料理を食べたことがないのか……?


 女の子がすくった麺は、かなり大量であった。

 完全に、ラーメンをすするっていう量ではない。

 そしてよっぽどお腹が減っているのか、女の子は大口を開け一気に食べようとしているのだ。

 俺はこれまたベタベタな展開を想像し、そっと呟く。


「熱いから、気をつけてね」


 くるぞ……絶対にくるぞ。


「あっづああぁぁぁああっ!」


 ほれ、見たことか。

 案の定、女の子の叫び声が部屋中に響き渡った。

 女の子はそのままバタンと後ろに倒れるも、すぐさまヨロヨロと起き上がる。

 まったく……戦闘シーンじゃないんだから。


「熱すぎるだろ、これ……」


「熱いって言ったじゃんっ!? こうやってフーフーして、冷ましながら食べるのっ!」


 俺は身振り手振りで、ラーメンの食べ方を説明した。

 女の子がフムフムと頷き、俺を見つめる。

 しかしその直後、女の子は手に持ったフォークを俺に差し出したのだ。






「めんどくさい、フーフーして」


「お前は子供かっ!」






 俺は思わず、再び魔王様にツッコミを入れてしまった。

 すると女の子が、ムッとした表情になり俺を睨む。

 女の子は出会った時から、ほとんど無表情だ。

 なのでムッとした時は、あからさまに分かることができた。

 だが俺は、強気に出ることを決める。

 先ほど閃いた、名案の為に――。


「何だよ、その目つき。俺は命の恩人だぞっ!?」


「ううっ……」


 効いてる効いてる。

 そう、俺が閃いた名案とは、命の恩人になること。

 それを利用して、俺を殺さないように、そしておとなしくするように説得をすることだ。

 たぶん力が強いだけじゃなく、魔法なんかも使えるだろう。

 日本を滅ぼすとか言い出したら、たまったもんじゃない。


 頼みの綱は、みそラーメンだっ!




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