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第二話 パンツを見ようとしたら、殺されかけた件


 きたよきたよっ! きましたよーーーーーーーっ!!

 待ちに待ってた、夢のような展開っ!

 たぶん見た感じ、異世界から来た魔法少女かなっ!?

 今から俺と世界の危機を救う為に、二人でがんばっちゃう的な展開でしょ!

 ほんとおっさんじゃなくて、よかったぜーーーーーーーっ!!


 俺は興奮を抑えつつ、とりあえず女の子を起こすことにした。


「あのー……」


「……ん」


 女の子が、反応をする。

 よく見ると、かなりの美少女だ。

 やばい……緊張するぜ……。

 なにせ女の子とまともに話すとか、小学生以来だからなっ!

 っていうか、言葉は通じるんだろうか……?


 ……いや、きっと大丈夫だ。

 こういう場合は、大体通じるはず。

 だってそうじゃないと、話が進めにくいしねっ!

 俺は唾をゴクリと飲み込み、一度深呼吸をした。

 よし、フレンドリーな感じで話してみるぞ。

 もう根暗な俺とはおさらばだっ! やってやるっ!


「きっ、気がついた?」


「はっ……!」


 女の子が、目を覚ます。

 うわっ、瞳の色が紫色だ。

 間違いないっ! 絶対異世界人だろっ!


「俺の言葉、分かる?」


「……ここは?」


 日本語だ……いけるっ!

 もしこれがネット小説だとしたら、この子はきっとヒロインだ。

 主人公である俺が話しかけても、嫌われるはずはないっ!


「ここは、日本という場所なんだけど……」


「ニホン……? ルネサンクの、どこ……?」


 ルネサンク……聞いたことのない地名……。

 確定しましたっ! やはり、異世界人っ!

 このまま、核心もついちゃうぞっ!


「えっと……君は、魔法使い?」


 女の子が体を起こし、俺を見上げる。






「私は魔王」


「えっ?」


「魔王メロディ・セレナーデ」






 は……? 魔王?

 今、魔王って言ったよな? この子。

 しかもメロディ・セレナーデって……名前かわいすぎでしょ!

 俺は思わず、吹き出してしまった。


 だってどう見ても、中学生くらいの女の子なんだもん。

 あれか、あれなのか。

 話し方が凄く落ち着いた感じだし、不思議ちゃん要素満点。

 魔王くらいの魔力に憧れちゃってる、天然系魔法少女なのかっ!


 俺は一呼吸置き、こう考えた。

 笑って、場を盛り上げようと。

 そのノリで、完璧なフレンドリー感をだそうと。


「アハハハハッ! 君が、魔王っ!?」


「……人間?」


「そうだよーっ! それにしても、魔王ってっ! あれでしょ? 憧れ的な――」


 すると女の子は立ち上がり、話してる途中の俺に護身術のような技をかけた。

 視界が天井に変わる、一瞬の出来事。 

 俺は床に倒され、そのまま女の子に頭を踏みつけられた。


「むげっ!」


「人間……」


 ちょっと痛かったけど、生粋のオタクな俺に対して、この行為は御褒美ですよっ!

 しかもこのポジション、君のパンツ見えちゃうからっ!

 俺はゆっくりと、目線を上に向けた。

 女の子の、透き通るような太ももの先。

 そう、破壊力抜群である、絶対領域の先へ――。

 見える……見えるぞっ!


 あれっ……? ちょっと待って。

 痛い。

 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!


「ちょっ……まっ……!」


「死んで」


「ギッ、ギブギブッ! 痛い痛いっ!」


「このまま、頭を踏み潰すから」


 マジかよ……パンツを見ようとして殺されたりしたら、末代までの恥だぞっ!?

 せめてパンツが見えてからじゃないと、読者サービスにならねーからっ!

 って、何を考えてるんだ俺はっ!?

 パニくった俺をよそに、頭とマイルームの床がミシミシと音を立て始める。


「待った待ったっ! 俺を殺したら、この世界のこと何も分からないよっ!」


 俺は死の恐怖を感じ、必死に叫んだ。

 この力の強さ、確実に普通の女の子じゃない。

 もしかして……本当に魔王なのかっ!?

 涙目になった俺は、瞬時に考えを一変させた。


 そんな俺の叫び声を聞き、女の子が足の力を弱める。

 危ねぇ……嫌われるどころじゃなく、殺されかけたじゃねーかっ!


「この世界……? ここは、ルネサンクじゃないの?」


「そうだよっ! ここは日本っ! ルネサンクじゃないのっ!」


「……ふーん。よく分かんないけど、とりあえず人間は敵なんでしょ?」


 駄目だ……そういうキャラ設定ですか……。

 何でいつも異世界の魔王と人間は、敵同士なんですかーーーーーーーっ!?

 たまには、仲良くしましょうよーーーーーーーっ!!


 すると女の子は、再び足の力を強めた。

 やばい……マジで殺されるっ!


「人間は……て……き……ううっ……」


「……えっ?」


 殺されると思った束の間、なぜか女の子が急に座り込んだのだ。

 次の瞬間、部屋中にお腹の音が鳴り響いた。






 そう、魔王様の。



 

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