第十四話 EOのボスよりも、魔王様の方が怖かった件
――三十分後。
俺達はダンジョン内にある、いわゆるボス部屋の前にいた。
いつのまにやら、全員がレベル5に。
部屋の中で待ち受けるボスも、連携さえミスらなければ余裕で倒せるだろう。
ただし、油断は禁物だ。
俺達は入念に話し込み、ボス部屋へ突入しようとしていた。
リョー:じゃあ猫姫ちゃん、補助魔法もよろしくね
xX猫姫Xx:任せてにゃん!
†漆黒の刹那†:……駆逐する
リョー:よしっ! じゃあ行きますかっ!
みそラーメン:ちょっと待って
「おぉいっ!?」
「トイレ」
メロディがスッと立ち上がり、トイレへと向かう。
……まったく、ボス戦前くらい少しは盛り上がれよなっ!
俺はため息をつき、拓男と姫子ちゃんに報告をする。
リョー:はは……トイレだってさ
すると、その時だった。
なぜか三十秒ほど、沈黙が続いたのだ。
……あぁ、そうか。
メロディとルームシェアしてること、二人は知らないんだった。
xX猫姫Xx:ちょっと待って、何でトイレって分かるんだにゃ?
†漆黒の刹那†:……だな
xX猫姫Xx:もしかしてリョーくんとみそラーメンちゃんって、一緒に暮らしてるのかにゃ?
リョー:あ、はい
xX猫姫Xx:えーーーーーーーっ!?
†漆黒の刹那†:……おいリョー、何ネット小説みたいなことしているんだ
みそラーメン:ただいま
メロディがトイレから帰り、チャットに参加する。
しかし隠していたわけじゃないけど、そりゃ驚かれるよな。
同級生の男女が、一つ屋根の下で一緒に暮らしているんだから。
さすがにメロディが、魔王様とは言えないけどさ……。
xX猫姫Xx:でもあれか、二人は親戚同士だもんにゃ
†漆黒の刹那†:……そうだったな
リョー:そうそうっ! 俺達の実家、高校から遠いからさっ!
俺はともかく、メロディの実家は相当遠いところだけどね……。
それに拓男は少し羨ましがってるみたいだけど、俺は完全に魔王様の世話係なんだからなっ!
俺の気分とは裏腹に、拓男と姫子ちゃんが質問を続ける。
xX猫姫Xx:やっぱみそラーメンちゃんが、料理作ってるのかにゃ?
†漆黒の刹那†:……掃除とかも、してくれるのか?
リョー:ないないっ! 料理、掃除、家事全般、全部俺がやってるよっ!
xX猫姫Xx:えっ? そうにゃの?
†漆黒の刹那†:……大変だな
リョー:大変大変っ! ほんと嫌になっちゃうぜっ!
「……あっ」
チャットを打ち終わった俺は、あることに気がついた。
それは隣から感じる、猛烈な視線。
俺は恐る恐る、メロディの方へと顔を向けた。
するとメロディが、ムッとした表情で俺を睨んでいたのだ。
「……あのー、メロディさん。怒らないで聞いてね?」
「それは無理だな」
次の瞬間、メロディは俺に腕ひしぎ逆十字固めをかけた。
「痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!」
「嫌なの?」
「ギブギブッ! 悪かったっ! 悪かったってっ!」
「嫌なの?」
「嫌じゃないっ! 嫌じゃないからっ!」
リョー:あjふぁおえgはじょぺdじゃ
xX猫姫Xx:リョーくん、どうしたんだにゃ?
†漆黒の刹那†:……部屋で、転んだんじゃないか?
xX猫姫Xx:もうっ! ボス戦前ぐらい、少しは盛り上がってにゃ!
†漆黒の刹那†:……油断してると、死ぬぞ?
いやいやっ! ボス戦前に、リアルで殺されかけてるんだよっ!
こうして俺は、一人痛みを抱えたままボス戦に参加をした。
†
――時刻は、十七時前。
この後姫子ちゃんが家のお手伝いをするとのことで、俺達の初お出かけは幕を閉じようとしていた。
リョー:結局、みんなレベル10まで上がったな
みそラーメン:お腹減った
†漆黒の刹那†:……じゃあ、解散するか
xX猫姫Xx:だねっ! また明日にゃん!
それぞれがEOからログアウトをして、俺とメロディは一息つく。
「いやー、楽しかったな」
「うん、楽しかった」
「だろだろっ!?」
「EO、はまりそうだ」
「これからもっと、楽しくなるぜっ! 例えば――」
メロディの言葉を聞き、俺はEOの魅力を存分に語り始めた。
自分の大好きなゲームを、楽しんでくれているのだからっ!
「――と、まぁこんな感じで、楽しくなってくのよっ!」
「……語りすぎだろ」
「聞けって! それにまだ実装されてないんだけど、いずれは魔王を倒すゲームなんだぜっ!」
「えっ?」
「だから、魔王を……あっ」
俺は夢中になりすぎて、話していた相手が魔王様だということを完全に忘れていた。
もちろんメロディが、ムッとした表情で俺を睨みつける。
「私を?」
次の瞬間、メロディは再び俺に腕ひしぎ逆十字固めをかけた。
「痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!」
「私を?」
「違う違うっ! メロディじゃなくてっ!」
この後メロディの機嫌は、夕食はみそラーメンだと伝えると、すぐに直りましたとさ。




