DAY31
正哲がスズナを見る最後の日となった。
人斬りのクロム。
串刺しのスズナ。
誰がつけたか二つ名が既に定着して久しい。
結局のところ、百万Gを手にした者は現れず、ただプレイヤーはこのふたりに出会わないことを最優先にプレイしていたと言っても過言ではない異常事態。
この異常事態に対して、運営は賞金を懸ける以外は座視を決め込んでいた。
正哲はいつも通りログインし、スズナもいつも通りに合流した。
「今日が最後ですね」
「嬉しそうだな。そんなに俺とのゲームは嫌だったか」
「嫌かそうでないか、と言われたら嫌だとしか。楽しいです、とか言ってほしかったですか?」
「チ。すっかり舐められたもんだ」
これを打ち解けた、と第三者が指摘しようものなら、ふたりは揃って否定するだろう。
結局、ふたりは殺し殺される関係でしかなかった。
もしくは共に他者を殺す者――プレイヤーキラーでしかなかった。
「じゃあ今日も殺すか」
「はい!」
少女に戸惑いはない。
少女に躊躇いもない。
すっかりスズナはプレイヤーキラーとして、また武人として人を斬ることに抵抗感をなくしていた。
それを倫理感の退化という人もいれば、武人としての進化であるという人もいるだろう。
どちらにせよ、少女は殺す。
あまねくプレイヤーを殺す。
これからも、ずっと。
◆
「そういえば、俺とスズナの戦績はいくつだか、覚えているか?」
「もちろんです。30戦15勝15敗――今日で決着が着きますね」
「ふん。結構いい勝負になっちまったなあ」
「最後ですからね。……出し切りますよ、私の全てを」
「いいねえ。俺も本気だぜ」
「今まで本気じゃなかったとでも? 言い訳は見苦しいですよ」
「チ。本当に……最初の頃の可愛げはどこへ行ったんだか」
この短編で結局なにがしたかったのか。
それが分からなくなったので完結とします。