第5話 心装兵器
この辺の設定は今だ詰め込めてないという・・・。
大枠は決まってるのに……。
次回更新は7月15日17時です
結果から言えばあの少女は別人だった。
「・・・どこかでお会いしたことがありますか?」
「・・・」
どこぞのナンパみたいな台詞を言われ、俺は口ごもった。それはそうだ。この世界でもうあいつは死んでいて、葬儀も俺が執り行って遺骨もこの身に着けているのだから。
「いえ、人違いでした」
「そうですよね・・・地球の方々とお会いしたのはこれが初めてですし・・・びっくりしました」
俺の言葉を聞いて忘れていたわけじゃないことを安堵したのかほっと胸をなでおろす。そして俺以外の人たちを視界に入れて少し赤くなった後、こほんとわざとらしい咳ばらいをしてから自己紹介を始めた。
「失礼しました。私は王都リヴァリスの第1王女であるアイリ・リヴァリスと申します」
そう言って慣れた動作でお辞儀をする王女様にクラスメイト達はポカンと口を開けたまま情けない表情をしていた。愛華に至ってはまだ別人だと信じられないのか王女様の顔をじっと見つめている。俺も名前まで一緒だとは偶然すぎるなとは思うが。
王女様の美貌の魅了からクラスメイト達が復帰したのはそれからしばらく経ってのことで、王様の自己紹介は恐らく入っていないだろう。事情が説明され始めたあたりでようやく我に戻ったようだった。ちなみに王様の名前はアグライン・リヴァリスというらしい。
「私達は今、危機に瀕しています」
出だしまるごと聞いたことのある話であったが、内容は大きく異なっていた。
「今から60年程前に地球から召喚された勇者様達によって平和が訪れました。そこから10年程は復旧で大忙しでしたが、今まででは有り得ない程の平穏な日常を送っていたそうです」
驚くべきことにもうすでに60年の時が流れていたらしい。
あの争いは魔人や魔王が人族を襲っていたために起きたものだった。魔王や魔人は人よりも圧倒的な力を持ち、魔法という人が持ちえない強力な力を有していたこともあり、強い相手に飢えていた。互いに戦い合ってその欲を紛らわしていたのだがそれも長くは持たなかった。
ついに彼らは同じ相手と戦い飽きてしまい、自分たちよりも強い者との死闘を求めていたのだ。強い者を見つけるためには戦ってみることが早いと・・・そう考えて魔物を操ることで強い者を探していたのだ。そんな強い存在である彼らとは裏腹に人は今を生きるだけで精いっぱいだったために、徐々に数を減らしていくこととなった。
その危機に瀕した時に人に秘められた力が目覚め、魔物を退けることが可能となった。
「それが"心装兵器"です」
文字に起こしてみればわかることだが、言葉ではわかりづらい力だろう。
「それはどういうものなんですか・・・?」
先ほどまで兵士たちに囲まれて怯えていた姿はどこへ行ったのやら。最早楽しんでいるような表情すらしたクラスメイトの一人が心装兵器についての説明を求める。
「私達の心や魂を具現化した武器とされています」
「心や魂を武器に?」
「はい。巫女によって神様から直接こういう能力があるよと軽く教えていただいたらしく、詳しいことはわかりません。今言えるのは男性が女性から心装兵器を引き抜いて使用することができると伝えられているという事くらいです」
人の心を映し出す兵器。神から与えられた唯一無二の兵器であり、それには特殊な能力がついている。
「その力は魔法をも圧倒する能力を秘めています。だからこそ、男性と女性のペアで戦うことが主流となっています」
「男性から心装兵器を取り出すことはできないのですか?」
「不可能だと神様が直接おっしゃられたそうです。肉体は魂の入る為の器で、男性と女性でその器の役割がはっきりと分かれているそうです。言うなれば女性は鞘で男性は剣の役割を持っているということですね」
「よくわからないです・・・」
「もう少しわかりやすく説明しますと女性は力を貯めることはできますがその力を扱う能力は持っていないということです。逆に男性は力を扱う能力を持っていますが、力を貯める能力を持っていないのです」
つまり、男女のペアでなければ効果を発揮することができないという事だ。だからこそ、この世界の兵士は男女のペアなのが普通なのだ。
「大体わかりました」
質問していたクラスメイトは納得したようだ。その表情はニヤけていて正直気持ち悪いのだが気持ちはわからなくはないので口には出さない。というのもこれからうまくいけば気になるあの子と二人きりになれる機会が増えるということに他ならない。
そんな状況を嬉しく思わない男なんて居ないだろう。最も、愛華は俺と組むだろうから無理だろうが。
「そういうわけでその兵器を使って戦うことが主流となっています。そしてここからが本題です」
そう、俺が聞きたかったのかここから先だ。何故魔王を倒したことで平和になったにも関わらず、またも召喚された理由がわからなかった。考えつくことはいくつかあるが、一番最悪なパターンが一つだけある。
それは―――
「争いを好む国が戦争を仕掛けてきたのです」
―――人間同士の争いだった。