第4話 再会?
前置きが長いような気がします。
本日2話連続投稿につき、前話の閲覧もお忘れなきよう
次回更新は7月12日の17時です
目を覚ますとそこは異世界だった。
目を開けずに周囲の気配を確認するとクラスメイト達の気配の他に知らない気配がいくつかあった。そして、違和感を覚える気配も1つだけ確認することができた。
(・・・どうするかな)
俺の腕の中には気絶した愛華が居ることを確認済みだ。このままだと面倒ごとに巻き込まれるのは明らかだ。もし、想像している通りのことが起きているのだとしたら愛華が危険にさらされるのだけは避けたい。
(とりあえず周囲の奴らが起き始めたら気配を消して様子を見る方がいいだろう)
とは言ったものの愛華の気配も同時に消せないのが問題点だろう。巻き込まれることが確定している事実に頭を抱えたくなる。どうにかして巻き込まれないように策を考えるがいい案が思い浮かばない。
「・・・ん?」
「ここは・・・」
そうこう悩んでいると段々クラスメイトが目覚め始める。目覚めたばかりだからか召喚される前のパニック状態ではなくなっている。もしかしたら精神に作用する術式が組み込まれている可能性もありそうだ。
「んん・・・」
段々と起き上がり、囲まれていることに困惑しているクラスメイト達。そんな中愛華が目覚める。混乱を避けるため俺も目を開けて愛華に声をかける。
「・・・おはよう」
目覚めた愛華はまだ寝ぼけている様子だった。声をかけると顔を上げ、声がしたであろう方向である俺の顔へと目を向ける。そして、段々と状況を把握して顔が赤くなっていく。
「・・・~~~っ」
ガバッと俺の腕の中から逃げるように飛び起きて背を向ける。そのまま少し離れるとしゃがみこんで両手で顔を隠してしまった。
(余計に混乱させたか?)
ちょっとやりすぎたかと思ったものの今はそれくらいが丁度いいのかもしれない。愛華が離れたのでゆっくりと体と起こすと俺たちは鎧を着た人たちに囲まれていた。男女ペアが10組程で誰も手に武器を持っていない。このスタイルはまさしく・・・。
「・・・」
まだ確定したわけではない。けれども、もしもそうだったのだとしたら俺は・・・。
「―――兄さん」
「ん?」
考え込んでいるといつの間にか復帰した愛華が怯えた表情を浮かべながら俺を揺さぶって呼んでいた。返事をすると安堵した表情を浮かべていた。
「何が起こっているんですか?」
「俺にもわからないな」
一応素直に答えた。心当たりがないわけじゃないが、今言っても余計に混乱するだけだと判断し、特にいう必要はないと判断した。
「・・・そうなんですか?てっきり知っているから慌てて居たのかと」
「いや、開かなかったことに焦っていただけだ。とりあえず様子を見よう」
「・・・はい」
立花家の姉妹は俺の嘘や誤魔化しに対してはほぼ気付く。今回も気付いては居るのだろうが状況が状況だけに俺の判断を尊重して様子を見ることにしてくれたようだ。体が震えているので抱き寄せて落ち着かせることに専念していた。
幸い、この状況はすぐに打開されることとなった。意識を失っていたクラスメイトが全員起きたのだ。
「兵士団第1部隊体長のサブリナと申します。・・・すみませんがここでは状況の説明ができませんので場所を移動したいのですが・・・」
それを確認した兵士団の体長を名乗る女性が前に出て声をかける。その言葉は流暢な日本語だった。
「日本語・・・?」
「はい。ここにいる全員が話せるわけではありませんが、皆さまの世界の言語は話せるように女性だけは教育を受けていますから・・・」
そういってにっこり笑うと「こちらへ着いてきてください」と俺たちを案内する。
強面の男たちに囲まれていた事から怯えて声も出せなくなっていたクラスメイト達はこの人のおかげで少しは恐怖心が和らいだようだ。
一応何が起こっても対処できるようにと兵士に囲まれている状況は変わらないものの、先ほどの恐怖で支配された雰囲気ではなくなっている。
(・・・それにしてもやはり似ているな)
先ほどの薄暗い魔法陣の描かれた部屋と言い、案内してくれている間にちらほらと見えた風景。多少変化はみられるものの、どこか見たことのあるものだった。
(やはり、可能性は捨てきれないな)
冷静にこれからどういうことが起きても良いように行動を考えながら移動する。あまり目立たないようにしなければならない為、愛華とも打ち合わせしておく必要がありそうだ。
「・・・?」
先ほどから周囲の兵士を警戒して俺に体をぴったりと着けている愛華が俺のちょっとした仕草に反応して俺の顔を見る。流石、姉妹だなと苦笑しながら愛華しか聞き取れないように声を出す。
「何があっても目立つようなことはしないように」
その言葉に軽く頷くことで同意を確認すると丁度目的地に着いたようだ。
「勇者方をお連れしいたしました」
サブリナさんがそう言うと目の前に広がる巨大な扉が開く。その扉には黄金を基色とした長剣が描かれていた。持ち手はすらっとしていて、鍔に当たる部分は刺々しい。そして刀身には蒼炎が纏わりつき、今にも動きそうな雰囲気を醸し出している。
「・・・・・・」
これは、確定だろう。最早否定のしようがない事実に空いている方の手に力を入れ握りしめる。俺の様子を見て何かを察したのか、愛華は徐々に開いていく扉の絵を見えなくなるまでじっと見つめていた。
「失礼します」
そう言って再び歩き出す。その先には見たことのある玉座に座る王様と、見たことのある黒い髪の少女が居た。
「・・・え?」
険しい表情をした王様とは裏腹に、その脇に佇み微笑む少女に目を奪われる。それは誰もが同じようで見惚れていた。そんな中、俺と愛華だけは信じられないものを見ている気持ちになった。
白いドレスを着こなしている目の前の女性は他人とは言えない程に愛華に似ている姿で―――
「・・・・・・愛理?」
「はい?」
―――俺の声に反応する少女は愛華の姉、愛理と瓜二つであった。