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NPCに恋をして  作者: Nozi
3/6

第3話 リルハ~聖なる炎を求めて~

こんにちは、Noziです。三話なのでもうはじめましてはないかな?と思っていますけどどうなんでしょう…。


前回から二週間近く空いてしまいましたがなんとか続き書きました。


書きながらあーでもないこーでもない考えてるんですけどやっぱり書くって大変ですね。でも乗ってくると楽しかったり。


とまれ今回も一所懸命書いてみました。よろしく読んでやってください!

「なかなか、いい情報ないね…」


 結局僕たちはそれから一週間、適当にダンジョンを探索したり、情報収集したのだが、なかなか目当ての『聖なる炎』にはたどり着けなかった。


 まあ一般的なのRPGのようにプレイヤーの目的が一定してあるわけでないため、たとえば魔王はどこにいるだとか、倒すために何が必要だとかそれはどこにあるとか親切に教えてくれるNPCが要所に用意されているわけではないのだ。


「やっぱり闇雲にダンジョンに挑んでもダメか…」


 サチがつぶやく。一週間とはいってももちろん平日は学校があるため一、二時間程度しかゲームはできず、この広い火星の中、その限られた時間で目的のものを探し当てるのにはさすがに無理があったようだ。と、そのとき


「あのぉ…聖なる炎をお探しですね?」


 一人の“フォクサ”の女の子が話しかけてきた。“フォクサ”とは火星に住む種族で、狐のような耳と浅黒い肌を持つ。


「えっと、そうですけど…ご存知なんですか?」


 僕は改めて尋ねる。どうやら彼女はPC(プレイヤーキャラ)のようだ。このゲームでは、PCでも気に入った種族があれば外見をその種族のものにすることができる。基本的性能は変わらないし、顔の基データはリアルが反映されるのでまあコスプレのようなものだ。


「ボクは情報屋のリルハ。火星の情報なら任せてヨ」


 ボクっ娘か、悪くない。いやむしろいい…。って、いやいや僕の好みは置いといて。


「じゃあ聖なる炎の在処も知ってるですか?教えてほしいのです!」


 シホが勢い込んでに聞く。が、リルハは、


「タダってわけには行かないんだよね~。なんせボク、これで稼いでますから☆」


 リルハがウインクしながら言う。まあそういうプレイヤーも確かに存在する。そして案外役に立つのも確かだ。


「いくらくらいなのよ?ちゃんと払えるような値段なんでしょうね」


 サチは少々こういうプレイヤーに嫌悪感があるのか、喧嘩腰だ。まあ単にふっかけられないように警戒しているのかもしれない。まあ初対面だししょうがないか。


「いやいや今回はちょいとわけありで。お金はいいからちょっとボクも同行させてほしいんだよねぇ」


「ええ!?キミ、戦えるの?うわさでは聖なる炎はレアモンスターが持ってるって話だけど…」


 僕が尋ねるとリルハは短剣を構えて見せる。


挿絵(By みてみん)


「うん、そこそこはね。強敵のときは隠れてればいいし☆何とかなるでしょ」


「ちょっと考えさせてくれる?」


 サチが言い、僕たちは三人で少し話し合うことにした。


「どうする?私はなんとなくアヤシイ気がするんだけど…」


「うぅん、そうかなぁ。とりあえず一緒に来てくれるなら情報も信頼できるんじゃない?」


「罠かもしれないでしょ!わざと変なところに案内してアイテム盗ったりPKとか」


 ちなみにPKとはペナルティキックのことではない。当然か。プレイヤーキラーのことだ。すなわち敵モンスターではなくPCに攻撃等して死なせること。もちろんそんなことをしても得などないのだが、世の中にはそれを楽しむプレーヤーもいるようだ。そういう話を聞くたび僕は、ゲームなんだしみんなで仲良く楽しめばいいのに、と思う。


「シホはどう思う?」


「わたしは、リルハはいい人だと思うです。一緒しても大丈夫ですよ」


 多数決では二対一で同行可、かな。でもたしかに初対面をそこまで信用していいものかと思わなくもない。…思えばシホも初対面でいきなりパーティ組んだけどそれはそれ、これはこれだ。


「うぅん…ま、いいわ一緒に行くことにしましょう。ただし、油断しないこと、ね」


 サチの一声で方針が決まった。あ、そうだ、


「リルハ!一緒に行くことにするけど、同行する目的だけ先に教えてくれる?」


「話はまとまった?目的ねぇ。まあ強いて言えば…ボクはこの火星が気に入っててね、たとえ強いパーティに寄生してでも行きたいところ、ほしいものってのがあるんだ。聖なる炎もそのひとつってわけさ」


 リルハが言った。このAWOでは景色、環境等を理由にそれぞれの星に魅入られるプレイヤーが少なからずいる。リルハもその一人というわけか。まあ旅は道連れとも言うしそういうことなら同行するのもいいか。


「ではあらためて、ボクはリルハ。『リルハ』でも『リルちゃん』でも好きに呼んでくれていいです。よろしくお願いしますね」





 リルハの情報によると、聖なる炎はアイオリス山中腹にある軍神の迷宮にあるということだ。スターゲートのある街から少し離れたクレーターにあった。

 僕たちはそこへ向かう道中お互いのロールについて話した。


「なるほど。シホさんのは珍しいね。ボクも初めて見るよ」


「で、リルハのロールは?」


「ボクのロールは超速師(ラナウェイ)。ま、逃げ専門のロールだね」


 リルハのロールもなかなかに珍しい。といってもこの場合は条件云々よりもなろうという人がまずいないのだ。超速師とは簡単に言えばスピード特化のロール。いや、スピードのみのロールなのだ。スピードが高いことはMMOにおいてとても重要ではあるが、それ以外がまったくダメなこのロールでは強敵を倒せないうえ、防御力が最低ランクなので運悪く一撃でももらえば致命傷。パーティを組んだとしても特技で逃げるときくらいしか役に立てない。ソロプレイでのアイテム収集にはいいかもしれないが、やはり冒険者向きのロールではない。もちろんプレイスタイルは人それぞれだし、情報屋ということであれば案外良いロールなのかもしれないが。


「なかなかに便利だよ、これは。たとえば…」


 と、突然岩陰からモンスターが飛び出してくる!ハイエナのような外見、全身に炎をまとった火星特有のモンスター。僕たちはとっさに身構え戦闘態勢に…


脱兎(ヘアオフ)!」


 リルハがそう叫んだとたん、僕たちは勝手にモンスターと逆の方向へ走り出した!


「な、体が勝手に!」


 だだだっと、まさに脱兎のごとく走り、あっという間にモンスターは見えなくなった。


「どう?超速師特有のスキルは。これがあればモンスターと戦うことなくあらゆる場所を探索できるんだ!」


「いや、確かにすごいけど、行き先決められないんじゃないこれ」


 サチが言うと、リルハが答えて、


「まあそうなんだけどね。でもボクはここの地形にも明るいし道に迷うことはないよ?」


「逃げ先に別の敵がいたらどうするのよ」


「ふふふ、抜かりはないよ。ボクには感知スキルからね!逃げ先にモンスターがいようともいち早くそれに気づけばもう一度逃げれば良いだけってわけ」


 リルハは得意げだ。いや確かにそうかも知れないけどさ…。


「今は僕たちがいるんだし戦ってもいいんじゃないかな。アイテム収集にもなるし」


 僕が言うと、


「…ま、それもそうか。今のはこのロールのすばらしさを伝えたかっただけだし、次からはよろしく。そっかこの機に火星のアイテム集めさせてもらっちゃおうかな」


 リルハは素直にそう言った。






 それから何度かモンスターと戦い、僕たちはアイオリス山の麓まで来た。見上げるになかなか高い山だ。


「ここか…」


「そうだよ。あれを見て」


 リルハが示した辺りに目を凝らすと燭台が二つの見えた。青白い炎がともっている。


「あそこが迷宮の入り口だよ。さあ行こう」


 リルハはそういうと山道を歩き出す。


「ところで、いまさらだけど案外簡単にこの場所教えてくれたけど…僕たちが約束破って勝手に先にいっちゃうことは考えなかったの?」


「ふふん、ボクは情報屋やって長いからね。それくらいのことは目を見ればわかっちゃうんだなぁ。…なんてね。まあボクの速さからはそうそう逃げられないし、なんならお尋ね者になってもらうとか、そのほかにもならず者には相応の処置ってあるじゃん?それに…重要なのはその在処じゃなくてね…」


 ?どういうことだろう、と不思議そうに思ったのが伝わったのか、リルハが付け加えた。


「ま、行けばわかるよ、ふふ」




 さて、やっとダンジョンの入り口に来た。下から見えた二本の燭代の間に四角く穴が開いている。どうやらこれが迷宮の入り口だ。


「さて、見てよこの炎」


 リルハが燭台にともった炎を指して言う。


「きれいですねぇ」


 シホが目を輝かせる


「聖なる炎もこんな色をしているんだ」


「リルハはそれを見たことが?」


 サチがたずねる。


「うん、実は偶然、かの有名なトップギルドの人たちがここから出てくるところに遭遇して、そのときにちらと」


「でも、チラッと見ただけで初見のアイテムが何かなんてわからないんじゃ…」


 といいかけたが、そうか


「スキルね」


 サチが僕の代わりに言った。


「そゆこと。見ただけで鑑定するスキル『鑑定眼(ジャッジアイ)』のおかげでボクにはそれが聖なる炎だってわかったんだ」


 僕たちはダンジョンの中をすすみながら話を続ける。迷宮というだけあって多くの分かれ道が存在している。それなのにリルハは迷いなく中を進んでいく。


「ボクはそれからここに通いつめたんだ。モンスターから逃げながら少しずつ奥へ進める道を特定していって、今じゃ最奥までの道を暗記しちゃった」


「なるほどそれが重要な情報ってわけか。確かにこの迷宮を時間をかけてクリアすることを思うとかなり大変そうだ」


 僕はしみじみそういった。


「ま、そんなとこだね、っと魔物の気配だ。よろしく」


 リルハがそういうと道の奥からヌッとヒートゴーレムが姿を現す。赤熱した鉄のように赤い岩でできた人型のモンスター。その巨体から繰り出される攻撃は食らうとまずいレベルである。が、


「はっ!」


 僕とシホの剣がゴーレムのわき腹を薙ぐ。ぐぉぉとゴーレムがうめき声を上げる。


「氷の刃よ!氷晶刃(アイスエッジ)!」


 さらにサチの魔法による追撃で、ゴーレムはあっさりと砕け散る。


「さすがだね、三人とも。これなら探索もはかどるはかどる」


 後ろから見ていたリルハがゴーレムの報酬(ドロップ)アイテムを見ながら拍手していた。まあこの程度の相手から取れるアイテムはレアとは言いがたいが、火星特有のものがほとんどなのでリルハにはレア度以上にお宝なのかもしれない。


「超速師も便利ではあるんだけどドロップアイテムは集められなくてねぇ。戦闘タイプもいいなあ。やっぱ」


 そんなことを言っている。


「で、ここはどの変なの?聖なる炎がある場所まではまだ?」


 サチがリルハにたずねる。


「もう少しで開けたところにでるから、そしたらもう少しだよ」




 それから少し歩き、2、3回魔物と戦ったところで僕たちは広い円状のホールのような場所に来た。


「ここはモンスターも出ないしまあ休憩所にもなる場所だね」


「わたしまだまだいけるですよ?」


 ふんっとガッツポーズを作って見せるシホ。


「まあ途中の魔物はそれほどでもなかったね。それにリルハのおかげでぜんぜん迷わなかった」


 と、僕は辺りを見渡しあることに気づいた。


「行き先がないよ?この部屋」


 入ってきた道を除き、この部屋には出口がなかった。


「…まさか、ここまできて私たちを騙してた、なんてことはないでしょうね」


 サチが剣に手を添えながら言うと、


「いやいや、ここまできてそれはないよ。せっかくもう少しなんだ。まあ見ててよ」


 いいながらリルハはコンコンと壁をたたき始める。


「えっと、たしか…このあたりに…あった!」


 一箇所、壁の音が違うところを見つけるとそこを押し込む。

 ゴゴゴ…と壁の一部が開き奥への入り口が現れる。典型的な隠し通路だ。


「さて、ここからが本番だよ。用意はいい?」


 リルハの問いに一同は、


「ああ」


 同意を示した。




 どうやら後は一本道らしかった。

 今までの迷路よりひとまわり広い道。どうやらこのダンジョンの最奥、ボスモンスターが待ち受ける部屋に続くであろう道だ。両側の壁には入り口にあった燭台と同じような炎が転々と灯っている。


「ボクもさすがにここまでしか来たことがないんだ。ボスからは逃げられないだろうから、行っても仕方ないしね」


 少し行くと、大きな扉が現れた。この向こうにおそらくボスと、聖なる炎があるのだろう。


「とうとうこの部屋には入れるんだ…」


 リルハの表情は期待に満ちていた。まあ期待するのは当然だろう。ここまでの道のりは本当に複雑だった。いくら敵と戦わずにすむとはいえここまでの道のりを調べるのにはかなり骨が折れただろう。しかもそこまでしても自分ひとりではその奥にあるものには絶対にたどり着けないとわかっているのだ。僕だったら途中で挫折してしまうところだ。


「よし、いくか」


 僕は身構えながらリルハに促す。やはり扉を開くのはリルハが適任であろう。

 ぎぎぎ、と軋む音を立てながら、ゆっくりと扉を開いていく。…その奥にはぐるりを十数本の燭台に囲まれた円形の大ホールがあった。広さは先ほどの休憩所の倍以上は優にある。


「ここ…海神の神殿に似てるです…」


 中に入り、シホがそうつぶやいた。確かに、雰囲気というか荘厳な感じが、海神の神殿にあった祭壇の間に似ていた。


「えっと、この周りの炎が聖なる炎なのかな」


 僕が誰にともなく言う。その青白く輝く炎たちは、たしかに入り口の燭台に灯っていたものと同じ色をしている。


「…!何か、来る!」


 周りを見渡していたところに、リルハが叫ぶ。感知スキルで敵を察知したのだろう。


「…どこだ!?」


 辺りを見回すが敵の影は見えない。と、そのとき


「上だっ!」


 リルハが叫び、一同が上を見上げる。このとき気づいたのだが、この部屋の天井は恐ろしく高く、闇にまぎれてはっきりと見ることができないほどだった。

 その闇の中に、これまた青白い炎がボッと灯る。その光はあたりを照らし、そこにいる何かの姿をあらわにした。


 それは人の姿をしていた。それは、中世の騎士のような形をした、ただし色は真紅に染められた甲冑を身に纏っており、頭頂部と全身の関節部から青い炎を吹き出していた。


「…あれは…あれが、聖なる炎を守るモンスター?」


 サチがつぶやく。おそらくそうなのだろう。そして、普通のモンスターでないことも、これまでの経験による勘が告げていた。ゲームとは思えないほどの重圧感。ボスモンスターのBGMでも流れてきそうな緊張感が場を支配している。


「…我が名は…我が名は『軍神』…『マルス』なり…」


『軍神マルス』…!それは『炎神アグニ』と並ぶ火星に生息する最高クラスのレアモンスターであった。その存在はうわさでは皆が知っていたがおそらく対峙した事のあるプレイヤーはトップギルドメンバーを含めても数えるほどだろう。

 ダンジョンの名前からしてもしかしたらと思っていたが、まさかこれほどのレアモンスターと戦わなければいけないとは。僕は瞬時に自分の所持アイテムを確認。回りに目配せして戦闘に備えるように促す。

 サチもシホも目で合図してうなずきあう。リルハはちょっと心配だが何とか逃げ回ってくれれば…。さらにモンスターが言葉を紡ぐ。


「…人の子よ、汝らの目的は何だ…」


「せ、『聖なる炎』だっ」


 リルハが叫ぶと、


「では、それを手にするに相応しい『力』を示せ…」


 それが戦闘開始の合図となった。僕たちは、真上に出現したマルスを注視しながら、部屋の入り口側に飛びのき、陣形を整える。


「あれじゃあ剣は届かない!サチは魔法攻撃を、僕とシホで、サチをガードしつつ出方を見よう!リルハは攻撃が来たらかわせるように注意していて!」


 僕の指示では魔法の詠唱を始める。僕とシホはその前に立ち、剣を構える。リルハはサチよりさらに後ろに隠れた。


「…呪炎(カースドフレイム)


 敵が先に炎系魔法を放つ。が、それがこちらに届く前に、


水呪法(アクアスペル)!」


 サチが短い詠唱で放てる水流系呪文で反撃、水流で敵の呪文を打ち消した!


「ナイスだ、サチ!」


 が、魔法の相殺は成功したが、水が湯煙となり敵の姿が一瞬見えなく…


「がっ!?」


 とっさに剣でそれを受け止める。マルスが湯煙にまぎれて突進してきたのだ。危なく致命傷をもらうところだったが、ミスミさん謹製の武器のおかげで何とか受け止められた。武器を新調していなければ破壊されてしまっていたかもしれない。

 ぎりぎり、と鍔迫り合いをする僕とマルス。武器の水属性のおかげで不利ではない。そこに横から、


「はっ、てやぁ!光閃剣(ライトスラッシュ)!」


 シホの連撃が決まる!モンスターが一瞬ひるむ。その隙をサチは逃さなかった。


「我が魔力、清浄なる水の奔流となりすべてを打ち破れ!水龍波撃(アクア・クラッシュ・スプレッド)!!」


 サチは剣で中空に魔法陣を切るとそこから激流が放たれマルスを飲み込む。マルスは膨大な水流に押され壁に激突する!


「…やったか!?」


 もうもうとたちこめる砂煙。


「…すっごい!ほんとに強いんだねユキヤたちって!」


 リルハが感嘆の声を上げる。が、次の瞬間強大な炎の煌きと共にあたりの煙が消し飛ぶ。マルスはまだ倒れてはいなかった。


「さすがはレアモンスター…てとこね」


 サチが苦笑いする。


「やるではないか…人の子よ…では、これではどうだ…炎閃波(プロミネンスフレア)!」


 瞬間、パッッと辺りが光に包まれたかと思ったら、部屋全体に広がるほどの炎をマルスが放った!


「!やばい!みんな私の後ろに!水障壁(アクアライトウォール)!」


 ごぉぉぉぉっと放たれ続ける炎を、サチは魔力の限り対抗魔法で受け続ける。


「ぐ、ぅぅ」


 敵の攻撃がやんだとき、僕たちのパーティはそれぞれ体力を八割以上削られていた。


「…リルハは?」


 非戦闘員のリルハの状況を確認する。


「…何とか生きてますぅ」


 一番後ろに隠れていたからか死にはしなかったようだがもはやHPは風前の灯といったところだった。


「か、回復アイテムを…」


 と各自回復しようとしたところだったが、眼前までマルスは迫ってきていた。


「く、そ」


 もうだめかと思ったとき、


「…良くぞ耐えたな人の子よ」


 マルスがそういった。


「…聖なる炎に値する『力』は見せてもらった。…これを授けよう」


 そういうとマルスは僕たちに向かって青白い炎を内包する赤い結晶をほうってよこした。


「…これが、『聖なる炎』」


 満身創痍になりながらも僕たちは何とか目的を遂げられたようだ…。





「いやぁあぶなかったね」


 マルスとの戦いの後、休憩所の部屋で僕たちは一息ついていた。


「倒さなくてもいいモンスターだったてことなのかな」


 サチが先の戦いを振り返りながら言う。このAWOでは初めてのことだったが、まあそういうケースもゲームによっては無くもない。


「何とか倒したかったです…」


 シホは少し残念そうだったが、まあ目的は果たせたのでよしとしようということになった。それにしても


「この宝石が、聖なる炎、か」


 僕たちは改めてそのアイテムを手にとって見た。ちなみにこの世界ではアイテムはメニューウィンドウのアイテム欄に格納され、そこで使用したりアイテムの説明を見たりできるのだが、今のように取り出して手にとって眺めてみたりもできる。

 このアイテムは特にじっくり見てみたくなる外見をしていた。

 結晶自体は赤く透き通っているのだが、確かに内に青白い炎が宿っているのがわかる。なかなかに美しい外見のアイテムだった。説明には「武器を鍛える等さまざまな用途で使用可能」とある。もしかしたらこれ自体が優良な素材アイテムとしても使えるかもしれないな、となんとなく思った。





「…ありがとうございました」


 休憩所で回復を済ませ、ダンジョンを脱した後、唐突にリルハが言った。


「皆さんのおかげで念願だった『聖なる炎』が手に入った。これでまた、火星で知らないものが一つ減ったよ、へへ」


 リルハは心底うれしそうに言い、照れ隠しか、鼻の頭をかいた。


「いや、僕たちのほうこそ助かったよ」


 今回も、最後はどうなることかと思ったが、何とか目的は達せた。これはリルハの情報によるところが本当に大きかったと思う。


「へへへ、また火星に来ることがあったらボクを頼ってよ。言い情報仕入れとくからさ。あ、次は『炎神アグニ』討伐とかがいいなぁ、なんて」


「うん、また何かあったらお世話になるよ。それじゃ」


 そうお互いに言ってリルハと別れ、僕たちは改めて防具を作ってもらうために地球へ向かうのだった。

ここまで御覧頂きありがとうございました。


さて、今回のお話はいかがだったでしょうか。

御感想、御指摘等々いただけたらとても喜びます。


では、次回、ですがまたどっかの星に行って冒険をすることに…たぶんなります。

ま、そういうお話ですので。


また書きあがったら読んでいただけるとうれしいです。

それでは、あらためて、ありがとうございました。


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