8 冒険者ギルド
「それでは、これからのことについて話し合うか。」
町を堪能した翌日、私たちは泊まった宿屋の1階にある食堂で食事を取っていた。
「ほへはらおほほへふは?」
「すまん、飲み込んでからにしてもらえるか?」
私は急いで飲み込むと、話が始まった。
「通行証と身分証について覚えているよな?」
そのことに関してはここに来るまでに説明を受けていた。
「覚えてます。」
「町に入るためには通行証が必要だ。そして、首都ルーブに行くまでにはいくつかの町や村を寄っていかなくてはたどり着けない。
しかし、いちいち仮の通行証を発行してもらっていたら、お金が大量に必要だ・・・そこでだ。」
そういうと、ウルフ君は一枚のカードを机の上に置いた。
「身分証を発行する。」
「身分証を・・・。」
「しかし、身分証を発行されるためにはどこかのギルドに所属しなくてはならない。だから、お前には所属するギルドを選んで欲しい。」
なるほど、身分証があれば仮の通行証を必要としないから便利です。でも・・・。
「でも、ある程度成果を出さなくてはいけないのでは?」
「まあ、それに関しては仕方ない。俺も必ず助力するし、依頼をこなせばお金も稼げる。だから、すまないがギルドに所属してくれないか?」
正直不安な面もある。だけど、いつまでもウルフ君の力に頼ってばかりもいられない。私は承諾することにしました。・・・ただし。
「私も、ウルフ君と同じ『冒険者ギルド』に所属したいです!」
・・・それだけは譲れません!
ーーーーーーーーーー
私は冒険者ギルドへ向かいました。
尚、ウルフ君は別の用事があるとの事で別行動です。
ちょっと心細いですが、いつまでも頼るわけにもいきません。
そして、町の中央通りに位置する4階建ての建物である冒険者ギルドにたどり着きました。
・・・た・・・高い。
そして、何だか変な威圧感といいますか・・・入りにくいです・・・。
ですがこのままここに佇むわけにもいかないので中へ入りました。
ギルド1階の中はとても広い空間があり、入口付近の壁には紙が多く張ってあり、空間の奥にはカウンターが3つほどあり、それぞれ3人の方が冒険者と思われる人に対応していました。3つの列があったので、とりあえず一番右側の列に並びます。そして半刻後、私の番が回ってきました。
「どういったご用件でしょうか?」
ウルフ君とたくさん話しましたが、未だに人との交流になれません。
私はぎこちなくではありながらでしたが用件を言いました。
「えっと・・・私、冒険者ギルドでの登録をしに来たのですが・・・。」
「はい。では、こちらの紙に必要事項を記入してください。」
そういわれ渡された紙を見ると、自分の名前と種族を書く欄がありました。
「・・・『ヒカリ』・・・『人』・・・と。書きました。」
「では、次にこちらに自身の無属性魔力を注ぎ込んでください。」
今度は白いカードを渡され、指示の通りに魔力を注ぎ込みます。
「はい、では今からあなたは『冒険者』です。おめでとうございます。」
「・・・へ?」
あっさり言われたので理解するまで時間がかかりました。
「あの・・・これだけで『冒険者』になれるんですか?」
不安になったので、カードを返却しながら念のために聞き直すことにしました。
「はい。冒険者になる、および冒険者ギルドに登録するだけでしたらこの紙に記入しカードに魔力を注ぐだけで済みます。しかし、通行証としての効力でしたり、依頼を受けられる範囲であったりなどはランクによって大きく異なっているのです。」
なるほど、それがウルフ君が言っていた成果の事ですね。
詳しい説明を受けることが出来るみたいなので、お願いしてもらいました。
「まず先ほど魔力を注ぎ込んでいただいた白いカード、これが冒険者ギルドのカードで身分証になります。このカードがなければ依頼を受注等を行う事ができなくなりますので紛失のなされないようお願いいたします。」
「もし失くしてしまった場合はどうなるんですか?」
「仮に紛失した際は、必ず最寄りの冒険者ギルドに申し出てください。銀貨5枚で再発行することが出来ます。」
銀貨5枚・・・アプル500個ですか。失くさないようにしないと。
「それから、冒険者ギルドの具体的な活動は、採集、討伐、護衛と様々存在します。自分に合った依頼を無理せず受けましょう。
また、冒険者としてのランクが設けられており、依頼をこなしていくことで、ギルドカードが初めの『白』から順番に、『黄』『青緑』『緑』『赤』『紫』と続き、最後は『藍』となります。そして、ランクの『白』から『青緑』を下位として、『緑』から『赤』を中位、『紫』を上位、『藍』を最上位と位置付けています。位によって受けられる効力が変わるのです。」
なるほど・・・ウルフ君は『緑』か『赤』のどっちかなんですね。今度聞いてみましょう。・・・といいますか、あれ?
「通行証としての効力が発生するのは、どのランクからですか?」
「首都といった大都市以外の一般的な町等での通行証としての効力は、中位・・・すなわち『緑』からとなります。」
えっと・・・今が『白』で、『黄』となって、『青緑』になって、『緑』になる・・・。かなり道のりが長い・・・。なれるのでしょうか?
「ちなみに・・・、中位になるためには、どれくらい掛かるものなんですか?」
「中位ですか?・・・そうですね、かなり大変だと言えます。具体的な期間は中位になる前に諦めてしまうといいますか、辞めてしまう方もいらっしゃいますので一概には言えませんが。」
なっ?辞めてしまう人もいるほど厳しいのですか?ウルフ君・・・本当に大丈夫なんですか?
「この点が登録のしやすさの要因ともいえると思います。他の、商業ギルドや魔術ギルドなどと比べて、討伐などといった大変な依頼もある上、中位になるまでにかなりの時間を要すために辞めてしまい、冒険者の数がそれほど多くならないのです。そのために、入りやすくし数を多くするという意図があるのです。」
なるほど、それならあの簡略さには納得です。・・・ただ不安が多く残りましたが。
「また、冒険者ギルドの役割ですが、依頼を発注したり、素材の買い取りを行なったり、お金の預け入れを行なったりしています。是非とも有効活用していただきたいと思います。」
「預けたお金は、他の町の冒険者ギルドでも引き出すことはできますか?」
「はい。ギルドカードを持っていれば、冒険者ギルドでありましたら、どの町からでも引き出しは可能です。」
なるほど、ここでもギルドカードは必要なんですね?本当に失くすことは出来ませんね。
「受けられる依頼ですが、現在のランク『白』から1段階上のランク『黄』の依頼までは受けることができます。
募集している依頼は入口付近の掲示板にて張られています。今日は何か依頼を受けますか?」
そう聞かれて私は悩みました。実はここに来る前にウルフ君に一人で依頼を受けることはするなと言われていたのです。
なぜそのように言われたのかは分かりませんでしたが、焦っても仕方ないと思い、明日改めて来ることに決めました。
受付のお姉さんからギルドカードを受け取り、私は昨日から泊まっている宿屋に向かうことにしました。