7 賑やかな町
「うわーー町だーーー。」
私は、『エトリーズ』の町にたどり着き、その中の喧騒さに驚きながらもその楽しげな雰囲気に気分が高揚した。
・・・そう初めての町!私が箱の中から出て初めてです!
物語の中に出てきたような風景が今目の前に・・・。
クスクス・・・
ふと気が付いて周りを見ると、私を見て微笑む人たち・・・。
(は・・・恥ずかしい・・・。)
もしかして、さっき考えたことが声に出てたのかな・・・。
私は、人々の視線に耐えかねてウルフ君の後ろに隠れた。
「おいおい・・・。」
「ご・・・ごめんなさい。」
ウルフ君の表情を伺うと、呆れた表情を浮かべていた。
「迷子になったりだとか、面倒事を引き起こさないでくれよ?」
「わ・・・分かりました。」
完全に信用されてない私。そうだよね、私これまでいろいろと常識外れのことをしてきたもんね・・・。
私が項垂れているとウルフ君が私の頭の上にポンと手を置いて撫でてくれた。
「まあ、機嫌を直せ?今日は町を堪能するってことにしたんだから。」
町を堪能・・・?そんな話は一度も聞いていなかった。
「だって、お前にとって初めての町だろ?だから、今はこれからの事は置いておいて、思いっきり楽しまなくっちゃな!」
そういうと私の手を握りしめ引っ張って行った。
私はそのことに戸惑いながらも、彼の優しさを感じ嬉しく思った。
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「あっ!あれはなんですか!?」
「あれは『アプル』に甘い汁を染み込ませてから焼き上げた『焼きアプル』。・・・食べてみるか?」
「是非ともお願いします!!」
「あちらの集まりはなんでしょうか!?」
「あれは大道芸を見ようと集まっている人たちだ、行ってみるか?」
「はい!はい!お願いします!!」
私は町に着いた直後の出来事があったのに、また暴走していた。だって、見る物全てが物珍しく、どれも興味を引くものであったからです。
「ふふふ・・・。」
ふと見ると、私の方を見ていたウルフ君が珍しく遠慮なく笑っているのに気付いた。
「どうしたんですか?」
そういうと、ウルフ君は取り乱したかのように手をあたふたさせた。
「あっ・・・いや、その。目をキラキラ輝かせて喜んでいる所をみてると、とても可愛らしいというか、なんというか・・・。」
そういうと彼は顔を真っ赤にして・・・私も顔を真っ赤にした。
私は人との交流が無くこうして褒められることには慣れないのです。
「えーと・・・その・・・。」
しばらくの間2人で見つめあっていると、ウルフ君から話題を切り出してくれた。
「そろそろ暗くなるから、どこかの宿屋に泊ろうか。」
「宿屋・・・?」
そっか、もう町の中だから野宿しなくてもいいんですね。
そう考えているとまたウルフ君が慌てだした。
「いや、決して深い理由ではなくてだな・・・。」
「?」
言っている意味がよく分からなかったですが、私たちは近くの宿屋に泊ることにしました。そして、宿代の節約という意味と、一緒にいたいという理由で同室を強く望みましたが、それは断られ二室を借りることになりました。
・・・寂しいです。