2 箱の外の世界
『この世界は』1人の少女から生まれた。
その少女は何もない真っ白な空間を見て、その空虚さから充実した世界を創りだそうと考えた。
少女が手をかざすと7種の精霊が生まれ、その力で真っ白な空間から大地、水、空気、光、生命・・・世界として築き上げるための土台が出来上がる。
そして自らの魂--個性--を切り離すことで5つの分身を生み出し、それぞれにその後の世界の創生を託した。
『寛大な』個性は、多くの種族が共存する『ジェネル大陸』。
『陽気な』個性は、温暖で過ごしやすい土地が広がる『チアル大陸』。
『保守的な』個性は、人族が統制し支配する『コンサル大陸』。
『消極的な』個性は、一部の種族が隠れ住む土地『ネガト大陸』。
『自分勝手な』個性は、生物が住みつくことができない荒地『エゴト大陸』。
それぞれの個性にはまたそれぞれの考えがあり、5つの個性が皆思い思いの環境を作り上げていた。
しかし、ある出来事を境にその穏やかな日々が消えた。
それは、『自分勝手な』個性が世界に害をなすバケモノ--魔物--を創りだしてしまったことだ。
魔物はエゴト大陸に蔓延り、そして別の大陸へ・・・世界中へと移っていった。
そのため、世界中で多くの者が命を落とした。いつしか『自分勝手な』個性は、諸悪の根源『魔王』として人々が恐れ慄く存在となった。
多くの犠牲を受け4つの個性は、1つの個性--魔王--を滅ぼすことを決めた。
4つの個性は、それぞれの大陸でもっとも強い[魂と肉体]を持った生物を呼び寄せた。
ジェネル大陸からは、獣人の王『ザレンズ』
チアル大陸からは、竜の土地神『フィリ』
コンサル大陸からは、双剣の剣士『シン』
ネガト大陸からは、大賢者のエルフ『チェルル』
4人の勇者は4つの個性からの加護を受け、多くの魔物を倒していき・・・ついには魔王を滅ぼす。
こうして、魔王による脅威は無くなったが、一度生み出された魔物が消えることはなかった。
長き年月が経った今でも魔物による被害はなくなってはいないが、人々が大陸間を自由に行き来できるほど平和になった。
交流が盛んに行なわれている現在・・・コンサル大陸の最北端の森には大きな真っ白い箱があり、その中には1人の少女がいる。
彼女の名前は『ヒカリ』。
彼女は魔法の才能が開花し、そして近い未来・・・この世界にその名が広く伝わっていくことになるのだが、今はまだ誰も知る由もない。