それから2
『工程終了。お疲れ様でした』
機械のアナウンスが流れたのを聞いてから司がその場に倒れ込んだ。
「カードリッジ式にしたことで当然1度に使える量は減ったけど、入れ替えることでコンディションを安定させられるのはやっぱり強いな」
脚部の機具を取り外して元あった場所に戻して自分の席に戻ろうとしているところで、誰かが部署に入ってくる音が聞こえた。
「精が出てるって言うのかな?こういう時」
「ゼロスリーか。いつもよりちょっと早いな」
「早めに着いて悪いことはないからね」
「そうだけど、ゼロツーはどうしたんだ?いつも一緒なのに」
「別の仕事中で先に僕が来た感じ」
「そうなのか。じゃあゼロツーが来たら教えてくれ」
司は自分の席に座ると、先ほどの資料に追加で記述を始める。
ゼロスリーはコーヒーメーカーからカフェオレを選び淹れながらそれを遠目に見る。
部署にはコーヒーを淹れるときの音とキーボードのカタカタという音のみが響き、それが止まってしまうと本当に人がいるのかと思ってしまう状況になってしまいそうだった。
「ねえ、ゼロワン」
「キリが良くなったら聞く。適当に答えるのは相手に悪いからな」
「ごめん」
「謝らんでいい」
また部屋が静かになってしまう。
ゼロスリーはその場でそわそわし始めると、シミュレータに入る。
『レベル3で起動します』
その言葉を開始にゼロスリーの周りに的が流れるように現れる。
「よっと」
その的を小太刀で斬り落としていく。的の方も斬られまいと逃げるように移動していくが、それを簡単に斬っていく。
「AIでも機能するんだこの力。これなら銃弾とかもいけそうだ」
あるだけの的を斬り落とすと、アナウンスが鳴った。
「ふぅー・・・久しぶりにこういう動きをしたから簡単に息切れしちゃったな」
振り返り司の方を見るが相変わらずパソコンと戦っているようなので、別のシチュレーションを試していく。
その部屋にあるシチュレーションを全てこなしたが司はまだパソコンと戦っていた。
「来てから2時間・・・少し休んだら?」
「みんながいる時間に働けない以上、みんなの集めた資料分が終わるまでは休めない」
「休まなきゃミスだって起きちゃうよ」
「来る前までは休んでる」
「今休めって話だよ」
「だからみんなの———」
タオルを首に巻いたまま司の元へと近づき首元を掴む。
「言い訳でしょうかそんなの」
司は苦悶の表情を浮かべていたがそんなことは関係ないというように、ぐわんぐわんと司を揺らす。
「辞めろって・・・」
「いつまで逃げんのさゼロワン。殺意を覚えるのはわかる。けどいい加減しなさいよ」
「俺だって頑張ってんだよ!妹たちと会いたいのに会えないんだよ!分かるか?家族と会えない気持ちが!」
「そう思うならその殺意を飲み込んでみなさいよ!」
「やったんだよ!必死に!その結果がこれだ!これ以上どうしろって言うんだよ!」
「じゃあなんで今耐えれてるのさ?不意打ちだったらその殺意に耐えられなかったんじゃないの?でも今は耐えてる。そういうことじゃないの?」
「それは・・・・・・」
確かにゼロスリーの言う通りいくらいるのが分かっていたとはいえ摑みかかるとまでは分からなかった。しかし今こうやって耐えることは出来ている。
「苦しいのは分かる。けど怖いからとかいう理由でそれから逃げてたらそりゃ耐えられないに決まってる。慣れていけばいけるんだよ」
「そうかもしれないが・・・」
「どうしてそんなに怖がるの?ゼロナインを殺したのが原因なら、状況的にしょうがなかった。敵なんだよ?だったら倒すしかないじゃないか」
「俺は武器は作ったりは出来たけど、それを使っての殺し合いなんて覚悟さえ出来てなかった。あの時さえ殆ど人を殺したのはゼロツーで俺はただ走ってただけ」
胸ぐらを外し椅子に突き飛ばす。
「じゃあ今からは?」
即座に返答を返す。
「あんなことに・・・助ける人を自分の手で殺さないように俺は今の状況をどうにかしたい」
「そうなんだ」
くるりと踵を返すとその部屋を後にする。そして扉が閉まる前に呟くように言葉を飛ばす。
「荒療治でいかせてもらうよ。ゼロワン」
部屋を出たゼロスリーと今から部屋に向かうゼロツーが顔を合わせた。
「今から僕は彼に嫌われることをする。君は少なくとも荒療治が終わるまでは」
「・・・・・・無論だ。俺たちの目的の為にな」
2人はすれ違ったその僅かな時間で会話をすると、互いの目的場所へと向かった。




