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Zな彼女とネクロマンサーの僕  作者: キノコ二等兵
レッドフィールド編
93/194

プロローグ

目を覚ますのは意外と早かった。


3日目には司は目を覚まし、松長や妹たちと電話で会話出来るレベルにまで回復していた。


「今日は妹たちとの面会だ!やったぜ」


怪我人だというのに喜びが隠せずベッドの上で左腕を上げたり下げたりを繰り返していた。


右手は包帯が巻かれていた。司自身も右手は駄目になっていたのは覚えているので、義手かなにかを取り付けたのだろうと予想した。包帯は接続が上手くいくまで保護するのが目的だろう。


横開きの扉が開くとモモとクルミが飛び込むように入ってきて司に抱きつく。


——————殺セ


悪寒が司を走り抜けてそれに合わせて2人の抱きしめを拒絶するかのように左腕ではじく。


「つ、司兄・・・?」「司兄さん・・・」


「あっ。え、ち、す、すまない。急に触れられてびっくりしたのかな?ははは・・・・・・」


指に絆創膏貼ったままの松長はそれを見て部屋を静かに出る。


家族の時間を作ってあげようという気持ちと、現実を見ないためだ。


「ゼロワンは女性に対して憎しみを持っていた・・・・・・それが別人格であるとはいえ発現したことで司自身もそう感じてしまったのか?」


「にゃんと・・・それにゃらニアたちは会わにゃい方が良さそう」


外で待っていたニアはそう呟く。


「司がそんなに弱い人間に見えるか?会うだけなら耐えるだろ。流石に触れるとなると無理だけどな」


よく分かっていないようで首を傾げるニアにカオルは言葉を変えて伝える。


「面会謝絶じゃないから会えるよってことだよニア。それにまだ治ってないだろうから触って悪化させないようにしてって意味で松長は言ったんだ。そうだよね」


「分かりやすい説明ありがとな」


「にゃるほど。んにゃ入っていい?」


走って部屋に入ろうとするニアの服を松長は掴み自分の前に連れてくる。


「にゃにゃにゃ!にゃにをするんにゃ」


「タイミングを考えろ」


「入れるって言ったにゃり!」


「今じゃなくて2人が話し終わってからだ。お前だって友達も大事だけど家族と話す時間欲しいだろ?」


しゅんとした顔をしたニアは涙を浮かべる。


「家族・・・みんな蒸発しちゃった・・・」


「そうだったすまない」


それを見たカオルはニアの手を握り、松長とカオルは1度目を合わせると、互いに頷いてその場を離れた。


病室に視点を戻そう。


3人は意味のない。けど話すことには意味がある話をしていた。


「やっぱつもりじゃダメなんだなって・・・どれだけ頑張っても結果がこれじゃ意味がない」


「後悔は今はしないほうがいいよ。こういう時ぐらい考えないで・・・」


「助けるって言ったのに、結局状況を悪化させただけだった。もし助けに行ってなければ戻ってくることはなかったかもしれないけど、それでも死ぬっていうケースはなかった・・・俺に力があれば。能力じゃなくて身体能力があれば、そうすればあいつらを殺さずに救う事だってできたんだ」


「司兄・・・」


「俺には何もないんだよ。精々あるのは友人関係。それがあるだけいいとか言う奴もいるけど、そんなの何の慰めにもならない。だから俺は」


涙を零し視界が歪む。


———諦めないで。私はそこにいます。ツカサ———


「トリシュ・・・」


「司兄?」


妹の声は聞こえていないようで、トリシュに似た声が司に声をかける。


「トリシュ!いるならもう一度」


「司兄!」「司兄さん」———殺セ


もう一度司に触れて、現実へと意識を戻させる。


「ぐっ!」


「何が見えてたかは分かんないけど、幻想に惑わされちゃダメ」


「分かった・・・から離してくれ・・・・・・」


2人が手を離すと司は肩を上下に動かしながら呼吸を整える。


「2人とも悪いけど、今日は帰ってくれるか?松長たちにも伝えて欲しい。これに慣れないといけないからな」


「うん・・・分かった。早まっちゃダメだからね司兄。行こクルミ」


「司兄さん明日も来るから」


2人はその部屋を後にし外の足音が消えるまで待つと、司は口を抑える。指の隙間から見えるのは笑みだった。まるで奴らを殺せるとでも言うかのようだ。


「何なんだよ・・・・・・本当さ」


殺意を何とか押さえ込み休んでいると、ふと右腕の中がどうなっているのか気になってしまった。


「少しぐらい見てもバレへんか」


適当な場所に指を入れて肌を見ようとする前に、異様な殺意が右腕以外に走った。まるで血管が流れているのを感覚で感じているかのようだった。


「はぁはぁはぁはぁ・・・・・・ダメだ。これは触れちゃいけない奴だ。自分で自分を殺すことになる」


包帯を元に戻してベッドに横たわる。もう触れるのはやめにしようと、右腕はピンッと伸ばして接触しないようにした。



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