脱出
少し時間は巻き戻る。
ハチと雷電は上層部と繋がる場所で機械兵器との戦闘を続けていた。
2人の武器ではその装甲を斬ることが出来ず、逆向こうからの攻撃も2人が早いことと、兵器の身体が巨大なため本来の機動性を生かすことが出来ない状態になってしまっていた。均衡状態というやつだ。
「はぁはぁはぁはぁ・・・」
柱を盾にした2人は息を荒げる。
「互いに決め手がないか・・・・・・コックピットが分かればそこが弱点だから潰せるんだが・・・」
「決め手がないからってこのまま弾切れするまで放置ってのも」
「分かってる!だがここまで奴はあれだけ撃ったのにまだ残ってるんだぞ」
緊張状態が続いたせいか、とうとう2人は口喧嘩を始めてしまった。身体が出ていない所から最低限の意識は敵に向いているようだ。
「・・・・・・装甲を貫けないなら暴発は怖いが、銃の先を潰すか?」
「それも試した。それ以前に雷電の剣じゃそんなの出来ないだろ」
「いつの間に」
「試せる手段は全て試した。その上でこの状況なんだよ」
流れる汗を拭き取り兵器を見続ける。ギリギリと音を立ててこちらに銃口を向けている。出た瞬間蜂の巣だろう。
指の爪を噛み飲み込む。苛立ちを抑える為だ。飲み込んだ爪が喉で引っ掛かり咳き込む。
「(しかし・・・銃身の耐久性が高すぎる。車でさえ少し勢いをつけて壁に当てれば歪むって言うのに、あれは壁はおろか中で爆破させても停止する程の損傷さえ与えられない)」
頬を汗が流れる。兵器とハチたちの視線が向き合う。
「破壊はやめよう」
「じゃあどうやって脱出するんだよ!」
「撃ち抜けないなら・・・落として撃てる範囲を減らす方向に行く。地面ぐらいなら壊せるよな?」
「崩せるが、奴の足元崩すなら1度奴の前に行かないと・・・」
ハチは親指を真下に突き立てここだと示す。
「ああーーーなるほどそれなら行ける。囮は頼めるか?」
雷電は刀を周りの地面に突き立てるとくるりと回って自分の足元を切り裂く。
余った部分を強く踏み下に落とすとそこから下階へと降りる。
「問題はどうあれだけの大きさのものに気づかせないだが・・・」
センサーが付いていると考えられる為、それに気づいてもそちらに行動出来ないようにしなければならない。
鉄塊を握り息を整える。鉄塊に力を込めて兵器に飛び込む。
センサーで気づいている為、兵器による弾の雨がハチを襲う。
鉄塊を盾に弾を耐えていく。反動が大きくハチの足が後ろにズレていく。
兵器の銃口が少しずつ持ち手部分に近づいていく。当たる前に鉄塊を床に差し込み柱兼盾にする。反動に耐える為反動に張り合うように鉄塊を押す。
その頃下に降りた雷電は敵兵と戦闘を始めていた。
敵兵の首元に刃を当て無力化していく。しかし数が多く焼け石に水という奴だろう。目的の位置に行くことさえ出来ない。
「くっ・・・!」
噴き出た血が雷電の身体にまとわりつき、視界を奪っていく。
だがそれは雷電の都合でしかない。敵からの銃撃は続き雷電の身体を貫いていく。
「(音で判断するしか・・・・・・だが銃撃戦距離ならまだしも、白兵戦並みの距離でそれが出来るか?)」
今度は右腹部に弾が当たる。その衝撃で出てきた汗が右目に付いた血を飛ばしわずかに見えるようになった。
これだけ見えれば十分だと言わんばかりに、刀を構え直し敵を斬っていく。
「(けっ!こんなの屁でもない!司の方がよっぽどキツい戦いを強いられている。自分より上の相手に挑んでんだからな。こっちは数が多いだけだ。ひとりひとりは弱い。負けるわけにはいかないんだよ)」
雷電は見えるだけの敵を無力化し終えると、上階にいる兵器を狙って壁に円を描くように線を入れていく。
あと数センチという所で右肘に銃弾が当たる。反動で刃の進む方向が変わり、雷電は床に落ちる。
「邪魔しやがって・・・・・・」
左手の刀を逆手に持ち発砲者を無力化するが、増援は止まらず、まるで蟻の巣を見ているようだ。
「死にたくない奴はここにはいないのかよ」
左膝が貫かれて変形する。
「ぐっ・・・」
右足と左腕のみで飛び上がり刺さったままの刀へ向かう。
しかし敵ももう被害のことは気にしていられないようで重火器を雷電へ向ける。向こうからすればこれだけ被害が出ているのだから、今更というやつかもしれないが。
「まっ・・・・・・!」
武器は上に刺さった1本しかなくかつ、回避の出来ない飛んだ瞬間だ。
弾頭が近づいてくる。身体を捻るが回避には至らない。
弾頭が雷電に当たり破片を部屋中に広げた。
「センスのある人もいるもんだねー。狙った対象が空中だとはいえ飛び立つ前にだというのに」
爆風が消えると、刀を掴みながらぶら下がるスネークがいた。
「そういうことでプレゼントだ。今まで貰ったことないだろうからあげるよ」
最後のひと押しをすると、壁は崩れて上から兵器が落下し何人かの敵を巻き込みながら下へと落ちていった。
「ナイスだ雷で・・・・・・」
「今はハチだったね。援護に来たよ。僕はこの子を守りつつ敵をあしらっておくから君は突入班の援護にでも行ってきなよ」
「あ、ああ・・・・・・」
上から顔を出していたハチはそう言うと司たちの元へと向かった。




