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ダンジョン戦9

「さあ!終わりだな!トリシューラ!」


燃える剣が振り降ろされてトリシュの身体は引き裂かれ——————ることはなく、なんのダメージも受けることはなかった。


何故ならばだ。


「————————————っっっっっっっっっっっ」


右腕が斬り落とされ、全身が黒い炎で焼かれている司が、前に立っていたからである。


シュウヤも鎖を放ったのは司と見ていた様で、驚きを隠せていなかった。


トリシュも同じだったが、あの声のおかげで何かがあることが分かっていたことがその後の行動に差を与えた。


なにか目立った構えをするわけでもなく、槍を突き立て鉛筆の先のように細く尖った光線をシュウヤへと放つ。


遅れたとはいえ反応したシュウヤは右手を使い胸に当たるのだけは回避しようとする。


しかしそれは叶わぬ夢となった。なぜならそれに対しても、司が邪魔をしたのである。


全身が焼けただれ息もできず水分を欲しがってるはずなのにそれを歯をくいしばるように耐えて、シュウヤの足を身体全体を使って押さえ込んでいたのだ。


最初から飛んでいたら司の行動など無駄に終わり、逆に自分がトリシュの攻撃を受けていたかもしれない。


しかしシュウヤはそれをしなかった。それが敗北の原因となったのである。


「——————ハイバースト!!!!!」


トリシュの叫びとともに光線は大木のように太くなり、シュウヤを飲み込んでいった。司は力を出し切っていたので光線に少し飲まれたが、勢いに負けて弾かれていた。


シュウヤを吹き飛ばしたトリシュは、地面に落ちるところだった司を滑り込むように抱え込む。


「マスター! マスター! ツカサ! 」


身体を揺らして司の意識を保たせようとする。


「あ“あ”あ“・・・・・・」


もう見えていないのかもしれない。焦点が合っていない。身体に残っている空気を吐き出すだけの状態であった。


「お願いですマスター! 」


瓦礫が浮き上がるとその下からシュウヤが現れてトリシュに近づく。


槍を構えて近づくなと伝える。しかしそんなことは御構い無しに2人に近づく。


「煮るも焼くも後にしろ。お前さんの、お前さんらの勝ちだ。生き返らせることは俺には出来ないが、身体の火傷位はどうにか出来る。どうせこのまま外に出たって持ちゃしない。トリシューラもよく分かってるだろ?」


「・・・・・・出来るんですよね?」


「お前さんの言う出来るの基準がどれほどのものによるが、少なくとも話せる程度ならやってやるさ」


槍を下ろしてシュウヤに司を触れさせる。


「ふーむ。なるほどなるほど。そういう原理で・・・やっぱ巨大人工浮島(ギガフロート)の技術力は凄えな。こんなものまで———」


「シュウヤ・・・・・・」


「おっとすまねえ。俺にも若い頃があったなあって思っただけさ。——————あらよっと」


シュウヤが黒い炎を纏った手で司の身体に触れるとみるみるうちに焼けただれた肌は元に戻っていった。


「う・・・あぁ」


それほど変わらない様にも見えたが、トリシュには火傷から回復したのは分かった。


「マスター!」


「ト、トリシュ・・・・・・か・・・・・・?」


「はいマスター!トリシュです!」


司の手を取って涙を流すトリシュ。僅かな時間しか2人は会っていない。ここまで心配をするのかまでは司には分からなかった。


「お前・・・ここで死ぬつもり・・・・・・だったろ?」


いきなり本題へと入る司である。身がボロボロだというのにそういう反応はトリシュを度肝を抜かせた。


「そんなことするぐらいなら、あの草原でマスターに殺されてますよ。自分から突っ込んで」


「勝たなきゃ出られない。そういうやつは大体1人しか出られない。だからいつものようにトリシュが前衛のフォーメーションで戦い、最終的にはそこの人と刺し違えて終わる・・・・・・そんなところか?」


歯をくいしばりながら身体を起こしてトリシュの眼を睨み付ける。


「ここは夢だ。トリシュは自分の能力だといったが、それなら何で俺はブックスなしで召喚が出来た? 一本だけじゃない何本もな。それに、トリシュと打ち合ったことは練習でしかないけど、その時よりよっぽど弱かった」


そして司は一度口を紡ぐ。言いたくないのだろう。だがそれでも言わないといけない。


「トリシュ。俺が負けても勝っても現実世界には何の影響もないんじゃないか?」

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