ダンジョン戦8
「破壊の聖槍———今ここに新たな道を創り出さん。インドラよ刮目し我らに新たな道を導き給え! 空前絶後!!!!!」
二つの熱量は拮抗し、耐えられなかった熱線が床を。壁を焼いて崩してゆく。
「良いねえ! 綱引みたいで面白いなあ! でも互いに押してるわけだし、綱押しか? 」
「この状況でも余裕ぶるなんて・・・・・・」
「久々に全力が見れたんだ。そりゃテンションも上がるってもんよ。そう思わないか? 」
「思いませんし、思いたくないです」
トリシュの出した光線が僅かに黒い光線を押し始める。
「そうかい」
反応がつまらないものだったからか、一気に勝負をつけに来たかの様に、黒い光線がトリシュの光線を一気に飲み込んだ。
もう少し押し込まれたら、トリシュは飲み込まれて身体を焼かれるだろう。それだけは避けたい。
腕が震える。歯をくいしばり口がら血が溢れる。
———大丈夫だ———
どこからともなく声が聞こえた。聞いたことのあるはずなのにだれか分からない。
———トリシュなら出来る。分野を思い出せ。得意分野を———
「(得意・・・・・・分野・・・・・・?)」
———そうだ。純粋な力じゃ勝てない。それはあの時に知っているはず。なら頭を使え。どんなものも点には弱い———
司かと思ったが、それにしてはトリシュ過去を知っている様な口ぶりだ。そこまで知れるほど彼女との付き合いは長くないはずだが・・・。
「ほーら! 出せる手は全部打たないと勝てないぞ!」
トリシュを煽る様に声を出すシュウヤ。トリシュは気にせず、点を作る方法を考える。
「(普通に点を作ろうと思えば、それを作っている間に焼かれる。それではせっかくマスターが用意してくれたチャンスを捨てることになる。それは回避しないといけない」
二つの光線によって地面が崩れて、互いの足場が歪みそれによって光線の方向がズレる。
「(また狙ってる余裕はない。別の方法でトリシューラを・・・・・・)」
光線の熱線で手についた汗を拭き取り構え直しつつ周囲を見渡す。
瓦礫によってシュウヤの位置が分からなくなったのもあり、攻めるのは危険だ。実力差は明白。不意を取るしか勝つ手段はない。
しかし怠慢で不意を取るには向こうが無差別攻撃でもしなければ、無理と言っても過言ではない。
「(神経を尖らせる・・・・・・。僅かな音も見逃さないように・・・・・・)」
ガラガラッ! と後ろの瓦礫が崩れる。位置から考えて司だろうが、それを利用して背後攻撃に移る可能性もある。
槍のトリシューラを起動して背後の警戒に当たらせる。
「(特に何もなし・・・・・・)」
考えられるとしたらやはり前方か・・・・・・。
近くの瓦礫を手に取り前方に投げる。すると落ちる前に迎撃された。破片の飛び方でシュウヤは同じ土台にいることは分かった。
あとはどう攻めるかだが・・・・・・。
瓦礫を投げ続けて場所の特定というのも良いのだが、動かないで投げ続ければいずれはバレる。瓦礫の数の限られる。
しかし動けばあの熱線が飛ぶ。避けられればトリシュの勝ちだが、それを許す相手ではない。
地面が揺れる。これだけ瓦礫ばかりなのだから、乗っていればゆっくりと崩れて行くことはおかしくない。
途端、股下からシュウヤがフレイムソードを展開したままトビウオの様に飛び出した。
回避が間に合わず、胸が焼かれる。
「ぐっ・・・・・・!」
反応が遅れた。後ろに意識を割きすぎた・・・・・・。自分の判断を恨む。
「瓦礫を投げたのは失敗だったな! トリシューラ! 見えないから俺が迎撃したと思ったんだろうが、タレットだよ! 」
「これ・・・・・・ぐらいでっ! 」
横薙ぎをするが当然の様に避けられる。
「ははは! 無駄無駄ァ! 昔に戻っただけで勝てるんなら前もお前との怠慢で負けてないとなぁ!ジェーン・ドゥがいて初めて勝てたお前が勝てるわきゃねえだろ! 」
フレイムソードによる突きが飛んできたのを何とかギリギリで避けると、後ろに飛び跳ねながら後退する。
「ほらほら! 攻めなきゃ出れねえぞぉ!」
「言われずとも! 」
トリシュは槍先から光弾を銃弾のように撃ち出す。当然のように回避すると思ったが、そのフレイムソードで切り裂いて行く。
「撃つ相手が決まってるなら、最低限訓練積んでる人ならこれぐらいわけねえ! 」
後退する距離を上げつつ、光弾の数も増えていく。
———このまま退がれ。一度だけあいつにチャンスを作らせる———
「(あんな身体で・・・・・・!?)」
「意識を別に割いて勝てると思うのかっ!」
燃える剣を弾くものの、熱は武器を伝わり指へと走る。
ジューと焼ける音が鳴る。歯を食いしばり耐えはするもののこのままでは勝てない。
トリシュも声に従うしかないと判断して司の場所へシュウヤの攻撃を弾きながら後退する形で進んでいく。
「おしまいだ! トリシューラ!」
———いやまだだ!———
シュウヤの足に鎖が巻き付けられて鎖が流れてきた方向に引っ張られる。
「鎖で・・・・・・」
「(見えた!)」
トリシュはその隙を見逃さず、線の様に細い光線を放った。
「くっ・・・! 」
右手を前に突き出し壁にすることで急所を外す。
「ブーメランしちまったな・・・・・・だろ!トリシューラ」
左手を燃やしつつ、穴の空いた右手から血を飛ばしそれで視界を奪う。
「はっ!」
空いた左手で目を擦りながら光線を曲げるが、曲げた方向とシュウヤの移動した方向は違い、抜けられてしまった。
「さあ!終わりだな!トリシューラ!」
燃える剣が振り降ろされてトリシュの身体は引き裂かれ——————ることはなく、なんのダメージも受けることはなかった。




