ダンジョン戦5
「・・・・・・んだよ・・・・・・いきなり埋められたと思ったらこれか? 瓦礫にさあ・・・・・・」
至る所が瓦礫で埋まっていた。
痛い。いや。もうその感覚さえ乏しい。
頭も瓦礫が載っていたが、それほどのものではなく、特に視界が歪む等の影響はなかった。
「グフゥ——————」
人の声ではないなにかが聞こえた。なんだろう?
唯一瓦礫が載らなかった左腕を動かして頭の瓦礫を退けていく。
僅かではあるが視界を確保出来る状態になると、司は頭を可能な限りに動かして声の主を探す。
視界は確保出来たが灯りが足りず見つけることができなかったが、荒げた鼻息で見つけることができた。
「・・・・・・お前さんも、さっきのにやられたんだな・・・お前さんで負けるなら俺が負けるのも当然かなぁ」
なにに話しかけているかまでは理解していなかったが、声をかける。
「このまま死ぬのかねえ・・・・・・なんかいきなり連れてこられて、トリシュと殺しあい(笑)(みたいなもんだが)、そしてここにいる。訳も分からず死ぬのってこんなに嫌なもんだなぁって自分が味わって理解出来るものなんやなぁって」
鼻息だけが聞こえ声としてのものは聞こえない。
「妹たちに言い訳も出来やしねえ。辛えなあ」
まぶたが重くなる。これで閉じてしまったら本当に死にそうだ。俗に言う怪我人に声をかけ続けるのと同じようなものだ。口を開いて何も考えず声に出し続ける。
「なあ、お前さん。もし動けるのならもう少し近づいて貰えたり出来ないか? 俺さ、同調出来るんだ。それを使えば上手く行けば脱出出来るかもしれない。トリシュを助けることが出来るかもしれない。かもしれないは良くないって? そうだなぁ・・・・・・じゃあ言い切る」
数少ない力を使って肺に空気を取り込み声を出す。
「俺に力を貸せ。そうすりゃ結果を出してやる」
しん—————————————————————
時間がどれくらい経ったのか。それはわからない。だが納得してくれたのか、鼻息側から別の音が聞こえた。
頭にそれからの腕が当たる。契約対象は理解した。あとは実行するのみだ。
「同調契約・・・・・・っ!!!!!」
鼻息を出していたものが消えたことで前の瓦礫が流れ落ちる。
司にはなにも影響がなく、詠唱は終了し二体の生物は混じり合った。
「契約完了・・・・・・よし、トリシュ待ってろ。今行く。っとその前にこの右腕どうすっかなと・・・・・・」
他の部位が同調したことで簡単に抜け出せたが、右腕が感覚がなく力が入らないので脱出出来ない。
「・・・・・・モモ、クルミすまん・・・・・・」
左手でマチェーテを作るとそれを右肩に当てる。
「痛いのは嫌だが、脱出出来なかったら意味がない。カオちゃんたちみたいに何度もやったことにあるやつじゃない。時間制限だってあるんだ。こうするしかないっ! 」
歯を食いしばり腕を切り落とした。
「———————————————————————あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“!!!!!!!!!!!!!!!」
痛いというのとは違う。筆舌に尽くしがたい痛みだ。説明できない。
その場で転げ回り、別の痛みでそれを抑え込む。
何分かそれを繰り返すとそこでやっと自分の意思で動けるようになった。
そうなれば十分だ。鼻息———トリシューラと同調した司は身体から尋常ではないほどの汗を流しながら身体をふらつかせつつトリシュのいる部屋へと戻っていく。