ダンジョン戦3
「がふっ・・・・・・」
身体にある空気が衝撃で無理やり吐かされる。
身体が何処になるのかを痛みが走る身体を無理して動かし確認に入る。
「ど、どうなってる・・・・・・? 」
砂風呂に入ったときのように手足を押さえ込まれているような感覚だ。
悲鳴をあげる首を動かしながら左右を見てみると、まるで十字架に貼り付けられたかのように身体が壁に埋まっていた。
「(結構な深さだ。破片が手足の先まで埋まってるせいでまともに動かせない。どうする? どうやって脱出する? )」
耳鳴りが治っていくとキャンキャンという金属音が司の耳に届いた。
「(トリシュか・・・・・・? どうなってる。押されてるのか? 押してるのか? )」
ぼやける視界の中、音のする方向を見ていると、画質の非常に悪い動画のような形ではあるが、見ることができた。
トリシュが槍で突こうとするも、近づくことで勢いを殺して思うような攻撃が出来ないでいた。
司は武に対して決して博識というわけではないが、それが押されている状況だということはなんとなく理解出来ていた。
「(ロックを・・・・・・視線を一瞬でも別の方向に・・・・・・だがどうする? 埋まってるのはいいけど、痰や唾そんなので反応するとは思えない。やっぱりこの埋まってる状態から脱出しないと話にならないか? )」
埋まって動かせる範囲が狭い状況だが、少しでも打開しようとまずは指先の瓦礫を指を回して取り除き始める。
右腕はそれが出来ないほど密着していたため、とりあえずは左腕から始めた。
その頃トリシュのはどうか。
司が先ほど見たときと変わらず、槍を思うように振れていないようだ。
「くっ・・・・・・! (前の時より強い)」
トリシュの表情にも焦りが見え始めていた。防御に専念しているから攻撃が届くことはないものの、このままでは戦いは終わらない。
敵は至って冷静にトリシュのしたいことを抑え込む。
跳ねるように飛び下がっても、関係ないと言わんばかりにトリシュが足を付ける前に正拳突きを繰り出した。
まともにそれを喰らったトリシュは球のように飛んでいった。
砂埃を上げながらその場で伏せて動かなくなってしまった。
向こうも司がもう目が覚めている事は分かっているのだろう。
数秒間トリシュの方を見て動く気配を感じなかったのを確認した後、人間は司に走り込んできた。
わざとなのだろうか? 壁に埋める程の機動性がある筈なのにそれをしてはおらず、ゆっくり———とはいっても司が万全な状態でも対処出来ない程の速さであることには変わらないが———と近づいてくる。
「こんっのおおおお!!!!! 」
時間はかかったが、なんとか左腕だけは埋まった状態を解消し、蛮刀を前に突き立てる。
飛び上がっていた人間だったが、身体を捻りそれを避けると司の腹部へ蹴りを入れる。
「ががががっ——————」
長時間付けっ放しにした機械で音声を聞いた時のような声を上げながら更に埋まっていく。
蹴りは司から意識を奪ったが、それでも止まる事はなく、司をドリルの先の部分のように使うことで壁を削りその部屋から追い出すように蹴り飛ばした。
穴が完全に開き、司はその穴先に身体を持っていったが、右腕が深く埋まっていたせいか変な曲がり方をしたまま壁に埋まりかつ、それが司を部屋と穴先を繋ぐものになっていた。