ダンジョン戦
階段をさらに降りると、横開きの石製の扉が閉じた状態で砂を被っていた。
「あーあ。これはとおれないなあ戻って迂回しようかっ!?
先程まであった筈の階段が無くなっていた。砂煙が上がっているので、上がったか床に埋まったかのどちらかだろう。
変えることは出来なくなった。前に進むしかない。つまりは危険な何かと相対さなければいけないということだ。
「これで下がれませんねえ? ツカサ」
「知っててやったなこのやろー! 」
飛びかかるが簡単に避けられて後ろの壁に顔をぶつける。
このままここで誰かが来るのを待つよりはマシだと思い目の前の扉に手をかける。
「・・・・・・行くしかないんだよな・・・・・・トリシュ、これに関しては嘘じゃないよな? 」
「ええ、これ以上のことに嘘はありませんよ」
司は大きく深呼吸をすると顔を真っ赤にして扉を引き開ける。ギリギリと音を立ててゆっくりと開いていく。
一定量開けると、その隙間に身体を入れて身体全身を使った方法で扉を開く。
人1人通れるぐらいに拡がった所で、一度司は腰を下ろして息を整える。
「お疲れ様ですツカサ」
「にゅ、乳酸が溜まる・・・・・・お前だって少しは手伝ってくれたってよかったじゃん。ちょっと冷たくない? 」
「出来ると思っていましたから。ここ最近はそんなことばかりだと思いますよ」
「いやまあそうだけどさ・・・・・・」
渡された水筒の水を勢いよく飲み干すと、口元を袖で拭き取り大きく深呼吸をする。
顔をパンッ! と響くぐらいの力で叩き力を入れる。
「んじゃ行くぞ! 」
司が前でトリシュが後ろ。移動するたびにトリシュが司に声をかけて道を進んでいく。こう指示するのなら後ろにいないで前にいればいいのにと思うが声に出すことはなく、暗いダンジョンを進む。
「のわっ! なんだ? 蜘蛛の巣だ! ふぎゃー剥がせねえ・・・! トリシュ取ってくれえぇ! 」
「自分で取って・・・・・・ふふふ・・・・・・下さい」
「見えないから取れないんじゃい! くそお! さっきの階段の時に気付けばよかった! いや分かってたのにぃ! 」
腕をバタバタと振り蜘蛛の巣を払うとまた足を進める。
ゲームなどのようなモンスターが出るわけでもなくせいぜい出てもネズミが出るぐらいだ。
「さっきのとこまでこんなに汚れてなかったのに、なんでなんだ? 何処かに汚れる原因があるのかな? トリシュ、ここって誰かに管理されてるとかないよな? 」
「少なくとも私がいた時にはいませんでしたし、元からこのような感じでしたね」
「トリシュもこの蜘蛛の巣が顔に付くのあったのね・・・・・・ちい覚えた。もう二度と来るつもりはないけどな! 」
しかし深い・・・・・・ここまで深いものを作ることは出来るのだろうか? 少なくとも司の住んでいる町では不可能だ。少し掘るだけで周りが熱くなり呼吸もその場に留まるのも難しい。
だがここは体感地下25階から30階といったところか。寒くもなくかといって暑くもないただの地下の温度だ。
膝の負担か本人の体力の無さが原因か、休憩を取りたいとトリシュに声を掛けて腰を降ろす。
「水をどうぞ。ツカサ」
水を受け取るとその水を少し口に含み、乾燥した口を濡らしてから喉に通す。
「・・・・・・疑ってるわけじゃないんだが本当に出口はあるんだよな? あんまりにも長いと不安になる」
「来たことがあると言ったでしょう? 心配しないで下さい」
「今はこうやって家にいた時みたいに話してるけど、昨日までお前からは遊びレベルかもしれないけど、こっちは殺されかけてんだ。過労死させるつもりなんじゃって思っちゃうんだよ」
座った状態で伸ばした足に手の指先を付けるように身体を伸ばす。
「本当にもうすぐですから、それまで」
そうかよというと、立ち上がり今度は縦に身体を伸ばすとまたすぐに座り小声で呟く。
「急がば回れか・・・・・・」
「ツカサ? 」
「いや、ただな。左右に行ったほうがよかったかなって後悔してるだけ。もう戻れないんだから気にすることでもなかったなぁ・・・・・・」
この先に何があるかトリシュは分かっているだろう。だが聞いたところで司が出来るのは注意するだけだ。行動を変えれる訳でもないので、コンディションを整えるために、意識を残したまま眠り始めた。
殺す気なら司が蜘蛛の巣で顔を塞がれている時にでもやればよかった。それもあったか、それとも何も考えずただ信頼して寝たのかもしれない。