守護者との会敵4
力では劣るが、やはりトリシュは槍を中心とした戦闘方法なようだ。僅かであるが司でも追えるぐらいなのだから。とはいえ・・・・・・
「はっぐっ!!!!!」
勝てる確率が上がった所で精々1%から1,01%位に上がった程度でしかない。
服に草がまとわりつき、遠目で見れば緑の服を着ているのではと思ってしまうほどだ。
「素手なら勝てると見たのは正しい判断ですね。私は素手は苦手だ。ですがそれを抜きにしてもあなたとの実力の差を埋めることが出来るものじゃない。どうしますか?諦めて殺されますか?」
口の中に溜まった血を吐き出して言葉を放つ。
「確かに無理だろうな。けどそんなこと分かりきってたことだ。勝てないからって諦められる訳がないでしょうが!」
意地がある。それ以外に意味はない。司は立ち上がり走り込みながら拳を前に突き出す。
簡単に避けられた腕を掴むと勢いをそのまま利用して遠くへ投げ飛ばす。
こんなことを繰り返しているうちに草まみれになった訳である。
太陽が沈んでいく。暗くなれば戦闘じゃなくなる。最後とばかりに司は力を込めて拳を振るう。
動きを変えたところで基本動作は同じ攻撃を回避するのは簡単だ。勿論司も理解している。
今までと変わらない動きで腕を掴むと投げ飛ばそうとするのだが、司もそれに抵抗し身体をねじり拘束を解くと空いている左肘を腹部へ挿し込んだ。
ねじる行為自体が出来ると思っていなかった。ゆっくり動いているのならともかく、本当に一瞬といってもおかしくない時間で、それを行ったのだ。決め手とはいかないものの、多少の効果はあっただろう。
流石にやったという表情が現れる。
「あなたに出来るということは,わたしにも出来る訳ですよツカサ」
その言葉と続くように身体全身に痺れが走る。
「これ・・・」
腹部を押さえながらうずくまっていく司。逆にトリシュは肘打ちを受けておきながら、特に目立ったダメージもなく、ただ平然と立っていた。
「・・・取り敢えず今日はここまでですね」
「ま、待てよ・・・・・・殺さないのかよ」
刺さった槍を抜き取りながら振り返ると、司の質問を返す。
「あなたが自分から諦めないと意味がない」
「意味がない・・・分からない・・・何を言っているんだ?」
「あなたの殺意は後悔から生み出したもの。あなたが完全に諦めてしまえば、あれが出ることもない。だから私はあなたが完全に諦めるまで続けますよ。不意打ち等でなく、正々堂々と確実にですね」
倒れ込んだ司を肩を持つと、腹部に手を包ませて昨日の街にバイクを走らせた。