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守護者との会敵

あの日見ていた。1人の少女がどこまでも続く草原に立っていたのを。


どれだけ声をかけてもその子に届くことはなく、いつの間にか前へ進み始めていた。


いつのことだろうか零れ落ちる少女の涙に濡れた手を掴んだ。血に汚れたこの手で。


少女の性質出生からして兵器として使うしかなかった。それしか与えられていないのだ。


それを伝える勇気はなかった。そう・・・恐怖を覚えていたのだ。


「誰だ・・・・・・今の・・・・・・」


司は知らない人間に一方的に、いやこの場合はどちらかというと、録音されたものを流したような感じだ。


だから押し付けた。昔のあれならば、少女にほんとうの笑顔を与えることが出来るだろう。


「そして・・・俺のところに来た。俺のことを知っていた風だったのは、この人間の為か。けどこんなものを見せて俺にどうしろと、俺はそれに手を掛けたんだ。助けることは俺にはできない」


この人間と同じことをしてしまった。トリシュを助ける(救う)ことが出来なかった。


こんなところに連れてこられたがどうすればいいのだろう?どの方向を見ても草原しかないここで、どうすれば先程の場所に戻れるのだろうか。


草が擦れる音が背後から聞こえた。振り返ると身体が皮一枚で繋がれているはずのトリシュが、槍を片手に立っていた。


見えるところには傷は見えない。ここが夢の中のような場所だからなのだろうか、司には分からなかった。しかし、そうだとしても言いたい言葉があった。


トリシュに走って近づきながら声をかける。


「トリシュ——————」


本題の言葉を言う前に、首元に槍を突きつけられる。


「ト、トリシュ・・・?」


「武器を取ってくださいツカサ。貴方の行動には許されない行為があった。それを私が断罪します」


「いや・・・あれは不可抗力———」


槍が司の腹部へ吸い込まれていく。


「ぐっ・・・」


「不可抗力なら殺していいと?それがツカサ、貴方の罪だ」


「ゔぁっぷ・・・分かってるさ。でも俺にはああするしかなかったんだ」


「そうやって逃げるんですか?」


身体を起こそうとした司を打ち上げるように吹き飛ばす。受け身など取れるはずもなく、腰から落ちる。


「ああ・・・」


「私がここで貴方を下します。そのあとは安心して下さい。貴方の身体で妹さんたちは守りますので」


「は?ど、どういう意味だ」


槍をくるりと回し構えを固める。近づこうと思った時には、司は槍に身体を貫かれるだろうと、今の司でも分かった。明確な殺意などは分からないが、狙っているのは確実だ。


「あの身体では、誰も守れません。ですから貴方の心をここで罪と共に殺して余った身体に私が入るんです。そうすれば、ツカサの身体(マスター)を守りつつ貴方の頼みも行えます。いいでしょう?」


刃とは逆側の部分を司の右肩に突き立てる。


「ぐっううう!!!!!」


「それにもしここを出たいのであれば、私を倒さなくては出ることは出来ません」


「・・・どういう」


「マツナガのいう所謂能力者という者ですよ。私も。この身体能力が能力だと思われていたようですが、実際は、現実世界との時間の概念がない場所へと飛ばす力ですから」


「何で今になって———いぎぃぃぃ!!!!!」


「質問時間は終わりです。殺されるか、それともあの時のように楽しみながら人を殺すか!貴方にあるのはその2つだ。ツカサ!」


うつ伏せだった身体を槍で仰向けに変えられると、一本釣りのように持ち上げられて遠くへ飛ばされる。



「(俺は・・・殺したかったわけじゃない・・・けど殺さなきゃ・・・)」


「他の人間はゼロツーたちに殺させているのに彼女だけは自分の手で殺しているんですよ」


心の声を読まれたのだろうか、言葉が続く。


「それに殺したくないというのは嘘だ。あの場所に行くということは少なからず人を殺す気はあったはずですよ?もしかして言葉だけで戦わなくても良いとでも思っていたんですか?」


「(違う・・・)」


「いいや違わない。あなたは私たちを助けるという大義名分を元に人殺しをしたかっただけなんです」


「ちがあああああああああう!!!!!!!!!!」


一気に立ち上がり、右手から小型の蛮刀でトリシュへと斬りかかる。


槍で簡単に弾かれる。身体能力の差がある人間にただただ突っ込んでも負けるのは当然だ。


「図星になれば武器を振るう。やはり貴方はただの人殺しですよ!ツカサ!」


顔面に逆に部分が司に当たり、吹き飛ばされる。


「そして子供だ。自分の欲しいものをねだる子供と何ら変わりがない!そんな貴方に私を守って欲しいとは思いませんし、妹を守る権利もない!」


「貴方はただ独り寂しくハミングでも口ずさんでいればいいんです!」


「くっ・・・・・・こんっのおおおおおおおおおおおお!!!!!」


司は腫れた顔を押さえながら、もう一度攻撃を仕掛けた。

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