作戦9
「俺・・・・・・あんな殺し方した。笑って・・・・・・心の底から笑ってた。人を・・・人を殺してるのに笑ってたんだ・・・屑だと思ったよ・・・」
ゼロツーの側に寄り血に染まった腕をゼロツーの胸にしがみ付く。
「俺、俺はぁ!!!!!」
「ゼロワン・・・?」
ゼロツーの胸で泣き崩れる司にフードで顔を隠したままの試作品5号が後ろから声をかける。
首を回し試作品5号を見る。その顔に流れているのは涙ではなく、ただ出血して着いた血のみだった。
「見てくれよ・・・・・・こんなに怖いことをしたのに俺泣けないんだぜ?誰か俺を怒ってくれ。こんな屑が生きてちゃダメだって怒ってくれ・・・」
胸で泣く司を見て昔のゼロワンを思い出すゼロツー。手を差し伸べようと腕を上げるが、これは俺の知ってるゼロワンじゃない。他のゼロワンだ。とその拳を強く握りしめ強い言葉を口から出す。
「お前自身の根底にある気持ちがそうさせたんだ。お前の問題なのだから他の人間がどうこう言う問題じゃない」
「けど・・・けどぉ!」
口調からして司だというのはその場にいるメンバーは分かっていたが、姿は先程の女性のままだ。本人は恐怖で気づいていないらしい。
「(そういえばゼロワンと会った時にSP解除なんて言葉を言っていた気がする。もしかしたらそれで俺の知ってるゼロワンと男のゼロワンを分けていたのか?)」
だがそれならば通常の生活の時点で気づいている筈だ。違和感はなかったのだろうか?
「マツナガ、SPの起動方法分かるか?」
『・・・首元の骨の隙間があるだろ?そこにあるはずだ。気づかれる前に押してくれ』
「友に対してやることじゃないな。まあいい。この後ゼロワンを落ち着かせ次第上に向かう。こんな精神状態で脱出は出来ないだろうしな」
『本人が気づけば咎は受けるさ。それまではこのまま隠し続ける』
ゼロツーは聞いた場所に手を近づけるとスイッチというには厳しいが付いていた。
そのスイッチを押すと司の姿は男性と戻った。だが泣き止むことはなくそのままゼロツーの胸にしがみついている。本人はなにも感じていないからだろう。
「おい、人を殺したぐらいで弱気になるな。今までも結果的に人を殺しただろうが」
「ただ銃で殺しただけで死体までは見てないし人の形状は保ってた。けど今回は違う。全然保ってない。お前も聴いただろ?ごりっていう音。あれきっと俺が相手の死体を食った時の音だよ。分からないけど」
「力が人並みしかないお前に砕ける訳がないだろうが」
自分の時は食べたんじゃないかと疑念を口にしたが、今は司を、ゼロワンを落ち着かせることが重要な為———冷静に考えればあの時のゼロワンは試作品5号たちに対してしか純粋な殺意は出していない。その殺意の時以外はゼロツーの知っているゼロワンに近いものだったのだろうか?———ゼロツーは自分の言葉を隠す。
「けど、やった感覚は覚えてる」
「別のものを口にしたんだ。もしそれが本当なら今のお前は話すことは出来ても相手が理解できる発音じゃないさ」
「酷かった。いくら空弾だからってものすごく痛かった」
身体をゆっくりと起こしていく試作品6号。
「苦しいの、分かる。けど、ゼロワンは、ここに、なにしに来た?トリシュさん助けに来た。違う?」
「そうだけど、怖いんだ。これより上に上がるなんて怖くて出来ない。けど行かないとトリシュや瞳さんは助けられないのも分かってる。けど・・・」
「反省会は物事をやっている時にやるものか?ゼロワン」
ゼロツーも銃を収めて胸にしがみついている司の手を外し視線を合わせる。
「反省会は全てが終わった後でするものだ。今ここでお前がくよくよタイムになっていたらお前の助けたい人たちは助けられないぞ?そんな状態でさらに2人の分の罪を背負ってみろ。今よりも酷い絶望感を味わうことになるぞ」
「最後まで。やって。そのあとみんなで反省会しよう」
2人が説得している間に、試作品5号が司の死体から残った上半身のパワードスーツを回収して司に渡す。
「がんばろ?ね?」
その声に一瞬別の誰かを思い描いた司だったが、彼らの言う通り細かいことは後で考えることにした。
足は恐怖で震えている。心はみんなとなら行けると自分に鞭を打ち前へ進む。実際は試作品5号と試作品6号に運んでもらうような形ににはなってしまったが。