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作戦2.5

「くっ・・・はーはっはー・・・・・・」


鎖に手足を繋がれトリシュの悶え声が独房のような小部屋に響く。


「あれから3日だなぁ!人形ちゃんよ。いい加減楽になれよ。俺に貴方に従いますと一言言えば苦しむこともないんだぜ?」


「拒否・・・します・・・・・・!」


「お前が傷つけたゼロワンが生きているとでも思っているのか?どうせ生きていても死に体だ。待っていても来るわけがないんだよ」


そうかもしれない。


「それに普通に動けたとしても裏切ったお前を助けるわけがない。そんな奴のためになぜ苦しむ?苦しむ必要がある?見ているこちらが苦しくなっちまうぜ」


そうかもしれない。


「ゼロフォーみたいに無理やりしてやっても良いが、それをやったところでお前にゃ効かねえだろ。やろうとしたら先にお前が壊れちまう。それは困るからな。手に入れるのに苦労したんだぜ?女」


身体を舐め回すように触っていくオリジナル。嫌悪なんてものじゃない。触れたくない。触れるなと動かせる所全てを使ってそれに抵抗する。


「お前は嫌がっているようだが、ゼロワンがお前のこと知ったらどうなるかねえ?お前が昔———」


「だまれ!貴方には関係のないことだ。貴様はやはり外道だ。いまに見ていろ。マスターが、ツカサが貴様のその狂った考えを否定してみせる。私はそれを待つ」


「僅かな希望に託すのはあまり良くないぜ?どうせ裏切られるんだ。だってそうだろ?あいつは———なんだからな。今は別の姿になっているが、昔はどうだったか知ってるか?上位互換であるこの俺が、酷えと思えるほどクズだったんだぜ?」


トリシュの首が上がりオリジナルの方を向く。そのような話聞いたことがない。あれがツカサではないのかと。


「人道なんてあったもんじゃねえ。当たり前のように人を殺し回ってなあ・・・そりゃあ惨いもんだったぜ」


「何故そんなことを知っているのだ。それにそれが事実だとしてもツカサはそんなことしないと私は知っている」


「本当にあいつが、家や会社にいる時のあいつがあいつの全てだと思っているのか?」


部下になにかのタブレットを持って来させるとそれをトリシュに見せる。


「ここ最近は落ち着いてきているが、元はあいつ女性差別主義者だぜ?ゼロフォーの兄貴が作っていた組織に属していてな。まあ、穏健派だったみたいで自分からってのはなかったようだが、そんななんたら派とかなんぞどうでもいい。重要なのはそんな組織に入ってたって言う事実だけだ」


しかし、それならばとトリシュは思う。何故いきなり現れた自分を信じてくれたのだろう。何故あんなに妹たちを大事にするんだろうか。


「お前への信頼もただ売り払うためなだけだぜ?そんな奴のためにお前は命を捨てるのか?あんな無能のために。お前のことを本当に考えているのは俺なんだぜ?」


「洗脳のために手足を鎖で繋ぐような人間なんて信用出来ると?それこそ貴様の思い上がりだ。私を堕としたいのなら——————」


口が動かない。鎖で繋がれた手足も震わせる事さえ出来ない。これは・・・・・・?


「もういいお前のデータは全てぐちゃぐちゃに壊すわ」


壊れたファイルのように黒い点が増えていく。それに比例して大事な思い出が消えてゆく。嫌だと叫ぶ。あの人との思い出を消さないでと。オリジナルも行ないたくはなかったらしく、表情はなかった。まるで心を殺して機械的な処理を行ったように見えた。


「これが心が消えていく感覚・・・あの人も罪を背負うと決めた時こんな感じだった・・・・・・?」


「そんなものは知らん。俺の管轄外だ。虚無へと堕ちろ外人(アウターワールド)


「そういえば、あの人って誰だっけ?あの人の・・・・・・顔も・・・・・・名前も・・・・・・思い———出せ———」


電池の切れた人形のように動きを止めた。何かのデータを入れない限り彼女は動き出すことはないだろう。


「ちっ、道具として使いはするが俺にだって善悪ぐらい分かるんだがな・・・あんまこういうのはしたくなかったぜ」


「なら言えばよかったじゃん」


後ろから少女が声をかける。バツの悪い顔で振り返り部屋を後にする。


「こういう奴は頑固だからな。伝えたところでそうですかと同情はするが共感はしないさ」


「ふーんそういうものかねー」


2人は横並びに廊下を歩いてゆく。本人たちは司が来ていることを知っている。だが、問題にしていなかった。


「ぼくちんの話に移らせてもらうけど、レッドフィールドはぼくちんがやってもいい?」


「そういやお前とは因縁があったんだったな。構わないぞ。記憶を入れ直す時間も欲しい。好きにしろ」


「やった!ウキャウキャウキャウキャキャキャ・・・・・・ぼくちんにやったことそのまま返してやる・・・レッドフィールド・・・・・・!」


少女は狂気じみた笑いを残すとエレベーターに乗り下に降りていった。それを見送るとオリジナルはこの階にいる全ての人間に聞こえるほどの声で叫ぶ。


「てめえら、実戦だ。もう下に奴らは来ている。奴らを殺すか俺の前に連れてきたらてめえらの一生は安泰だと思って行動しろ!いいな」


振動と喚声が響くのを感じる。オリジナルも少女ほどではないが笑みを浮かべると廊下コツコツと足音を立てて消えていった。



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