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作戦2

『主任たちはそのまま階段を上がり続けて下さい。25階に一般社員と特殊社員を分けるフロアがあるようなので、今までの主任たちが見たデータ(景色)が正しいければ、そのフロア以降に瞳さんやトリシュさんたちがいるはずです』


3人は休むことなく階段を登り、防衛に入った人たちを蹴り飛ばし殴り飛ばし撃ち飛ばしてスタミナに限界はないのかと思いたくなるほどのペースで登り続けていた。


向こうも行かせまいと銃を構えて迎撃を行うが、雷電の電気で途中で燃え尽き、それをすり抜けた弾はゼロスリーがどこを飛んでいるか見えているかのように弾を流していく。司は何も出来ないのでただ走———2人は動いているのに司はそれだけしかしていないが追うので精一杯だ———る。


零距離になればゼロスリーはその刀で、雷電は敵の左胸を触って無力化していく。


3人の後ろには黒焦げの死体とビクンビクンッと身体を揺らし血を流している。


「(見るな・・・怖くなって動けなくなったら終わりだ。絶対に足が止まる自信がある。だから見るな・・・)」


そう心の中で叫ぶが、ちらりと死体を見てしまう。そこで見たものを司は別のものに変換する。それが死体ではないと思い込ませる。


その行為がどれだけ愚かな行動かは理解しているが、優先順位が違う。怖くなって足を止めるのは全てが終わってからでいい。反省も後悔もだ。


走り過ぎで肩が外れたのか、右側のバランスが崩れる。まだ14階だと言うのに司は足を止めて———正しくは足を引っ掛けてこけただけだが———しまう。


「ゼロワン!もしかして流れ弾が・・・」


「た、た、だ、疲れた、だけだ。すまない。体力なくて」


「しょうがないよ。槍に刺されてまだ3日、外れかかっていたのをパワードスーツでどうにかしてるだけなんだ。そっちに意識を向けながら走るのはキツイもんね。一度休もう。雷電、上の階の扉封じておいて。1つでも塞いでおけば数分休憩は出来ると思うから」


「わかった。先行でこの先がどうなってるのか見つつ、敵の侵入ルートを減らすな」


階段に座り込むと、司の肩が上下に素早く動いた。かなりの無理をしていたのだろう。木下や松長の前では隠していたが、ここに来て限界が来たということだ。上層部に行けば休む暇など取れるわけがない。これがゼロスリーたちにとっても最初で最後の休憩ということになる。


手持ち式の酸素ボンベを顔に付けて息を整える。柔軟性を重視したパワードスーツの脇下から血が垂れる。


「痛みは?あるならまっちゃんに渡されたあの薬を飲んで———」


ゼロスリーの口を手で遮る。必要ないという意思表示だ。


「もう・・・・・・うごっごっほ!ぐっふっ・・・」


肩だけでなく口からも血が流れる。それを見てゼロスリーは無理やり腰のホルスターから注射器を取り出しそれを脇に挿す。


「ゼロスリー・・・・・・!」


「目的地に行くまでに動けなくなったら意味ないでしょうが!」


「分かっているが・・・」


薬が身体に回り軽くなったのか、腰を上げて立ち上がる。


「行けるかい?」


司を見ながら下から追撃に来た敵兵を撃ち抜いてゆく。距離はあったが血が頬を伝う。


「・・・・・・ああ」


「いつもはタイマンだったしねえ。怖いのも無理ないか。ゆっくりでもいいから確実に進んでいこう。さっきみたいに敵が来ても困るしね」


殺した敵兵の銃の弾倉だけを奪い、その後司の腕を取りそれを肩にかける。


「すまないな。俺がこんなに弱くて・・・・・・」


「適材適所だよ。今の君は戦闘なんてまるで出来ない。けど僕は出来る。逆に言えば僕は殺す事しかできないけど、君は人と対話ができる」


「誰も話なんて聞いちゃくれなかったがな」


死の匂いがする階段を登りながら2人の口が緩む。


第一目標である25階に着くと雷電が扉越しに中を覗いていた。


車一台が通れるほどの廊下には誰もおらずまるで通って下さいと言っているように感じられる。


「多分廊下先の曲がり角にいるんだろ。ゼロワンの方にはデータの更新はされてるか?」


パワードスーツの出力を上げて階全体に索敵範囲を向ける。


「うーむ・・・・・・分からない。部屋が無数にあって特定出来ないな・・・」


「しゃあねえ。どのみち進まなくちゃいけないわけだしな。行くぞ」


廊下という一本道を抜けて上層部と下層部を分ける扉の前まで一気に走り抜けたが、特に何かあったわけでもなかった。


『着きましたね。主任、ポーチの中に入っている機械をスクリーンに当てて下さい。ハッキングを行います』


木下に言われた通りに機械を当てていると、ゲームのアップデートの時に出る線のようなものが表示される。それが右端まで行ったら完成というやつだろう。


線が2割ほど進んだところで廊下側から機械兵器が3人の前に現れた。


「キノ!」


『主任の目から見ました。何とかしてペースを上げます』


当て続けていなければ機械のハッキングが行えないのか司は動かない。ゼロスリーもそれを察知し壁になる。


雷電は2人に兵器が向かわないよう前に出て走り出る。


「俺は上に行けねえからハッキング終了後中に入ったら閉じてくれ!いいな?」


「分かった!死ぬなよ?死んだら瞳さんが悲しむからな」


「それはお前も一緒だ。んじゃな!」


電気を身体中に流して殴りかかる。絶縁材が当然のように使われているのであまり意味がない。


「チッ・・・」


舌を鳴らしつつ効き目がありそうなところを探しつつ電気を飛ばす。


流石に邪魔に感じたようで、兵器も雷電の方にようやく武器を構え弾を撃ち込む。


ばばばばばばばっっっっっっっっっっっ!!!!!耳が痛くなるほどの音と弾が雷電を襲う。


兵器が現れた場所に逃げるように潜り込みながらも攻撃を続ける。


わざと自分なら殺しやすいよと雷電は弾に当たりそうで当たらないのを繰り返し、面倒だと司たちに向けると近接攻撃を仕掛ける、を繰り返す。


そんな行動を繰り返していると司のジャミングが終わる。


言われた通り司たちは即座に扉の向こうに行くと、扉を閉める。


司は振り返り生きろよと言葉をこぼすと、2人で上に足を進めた。

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