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1週間目(13)

何とか会社が見えるところまで行くと、部下が言っていたことを理解した。


建物の下は変化はない。だが上は・・・・・・。燃えていた。


放水は行われていたものの、高層ビルな為あまり機能していない。


「んだよ!これ!」


理解出来ずにビルに入っていく。警官を押し飛ばして近づくと、トリシュが顔を伏せて立っていた。


「トリシュ・・・・・・何があったんだ?これ・・・みんなの力がありゃこんな事———」


ドスッ・・・・・・。


「・・・・・・・・・・・・?」


司の腹部に衝撃が走る。何かが当たったんだろう。しかしなにが当たったのかまでは分からない。


腹部を見ると、トリシュが持っていた槍が深々とめり込んでいた。背中にもなにかを感じる。殺気とは違う・・・。


「うっ・・・うっ・・・」


「・・・・・・ト、トリシュ・・・?なんでないてるんだよ———」


槍を抜き取りそのまま司を地面に落とす。前にバスでも司は刺されたが、あの時以上の出血量だ。今すぐ助けても助かるか怪しいところだ。


「・・・申し訳ございません。マスター———逃げて」


血に濡れた槍をもう一度司に向ける。次刺せばもう終わりだ。


「・・・悪かったな・・・お前を泣かせるようなクズで・・・」


司には見えないが首を横に振っているんだろう。熱い水が司に降りかかる。


「貴方のせいじゃ・・・」


「いんや。お前のせいだゼロワン。お前さえさっさとゼロツーに殴り殺されときゃ、女は哀しむ必要なんてなかったんだぜ?」


トリシュの声をかき消して現れたのは別の男。口調から判断するならハチか。


「今まで見せてもらったけどさ。お前なんで使い魔を友だちみたいにしてんの?俺たちが生み出したものなんだ道具として使わないで、自分が傷ついたらそりゃもう本末転倒だろう?なんの試作品(プロト)かも忘れたのかぁ?」


「それ以上ツカサをバカにするな・・・・・・!」


腕を震わせながら何かに抗う仕草を見せるトリシュへ殺意が飛ぶ。


「黙って道具は言われた通りすりゃあいいんだよ。魔女が」


操作が強くなっているのだろう。少しずつ槍が降りてくる。


服に槍先が触れる。メスのようにツゥ・・・と皮膚に触れる。


トリシュが抵抗しているが、その震えが逆に皮膚の傷を増やしてゆく。


それ以上進めば・・・という所で鉄塊が横回転で飛んできた。


「10体目だからなあ!誰かに似ていてもおかしくねえよなあ!存在自体がパクリ野郎!」


トリシュは鉄塊を回避すると、そのまま操っていると思われる男の元に飛んでいく。


「女ぁ!避けてんじゃねえ!てめえは道具だ!言われた通りにしてりゃいいんだよ!」


避けたトリシュを糸で引っ張るように鉄塊の前に立たせその槍で弾かせた。


「パクリだと言ったな。試作品(プロトタイプ)風情が!俺からすればてめえらこそがパクリ野郎だよ!なんでか教えてやる!てめえらは正規品(オリジナル)である俺のデータをベースに量産目的で作られたんだからなあ!」


伏せたままの司は驚愕する。それが事実ならモモとクルミとは家族ではない可能性がある。そんなの信じられるわけがない。


ただ戦意を奪うために虚言しているだけだ。止めどなく流れ出る血を尻目に立ち上がる。


その側にハチが降り立つ。司を見ることはなく、今度は取っ手のついた鉄塊を両手で構えている。


「そうだとするなら何故ゼロワンを狙う?お前が正規品(オリジナル)ならこれは一切関係ないだろうが。お前の上司か分からんが、これは俺たち試作品(プロトタイプ)だけの話だった筈だ」


「てめえらがさっさと殺らなかったからだよ。そうすりゃわざわざ戦う場所の制限なんてなかったんだからよお」


ハチと正規品(オリジナル)を名乗る男が話している中、司は何とか意識を持たせる。正規品(オリジナル)への怒りによって。


部下を勝手に使われてその上司の知り合いを巻き込んで、それを黙って見ていることなど出来るわけがなかった。


右手でトリシュに刺された腹部を抑えながら、刃物を正規品(オリジナル)へと投げつける。


離れた位置から即座に反応し鉄塊を弾いたトリシュがいる以上当たるはずもなく、悲しい金属音がコンクリートに響いた。


「このまま感情が表に出たままの女たちに殺させるのも一興だが、こいつらを使わないでただ捨てるのも勿体ねえよなぁ!そう思うだろ?」


「・・・・・・」


「答える力もないってか?キャハハハハ!!!!!ンなら寝ときゃ良いんだよ!永遠にな!」


背中から何かを取り出す。サイズとしては拳銃サイズだが、銃口の先に球体状のものが取り付けられていた。


「!ゼロワン!逃げるぜ!流石に拳銃型小型核弾頭(デイビーマグナム)はまずい!痛えとは思うが担ぐぞ!」


答える余裕など司にはない事を見るまでもなかったので、即座に司を担ぎそのままその場から飛び去った。

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