1週間目(12)
気絶したのもあるだろう。痛みを感じない。それだけの時間が経ったのかもしれない。
「——————あ“あ”あ“・・・あ?」
恐怖以外の感情が戻ってきた。どうして追いかけられたのか。その他諸々もだ。
身体を壁に擦り付けるようにして震える足で立ち上がり、階段を降りる。
なんとか外に出るときには引きずりは時々ある程度で普通に歩けるようになった。
そんな身体のまま会社に向かうと、道を阻まれる。
「・・・・・・すいません。思うように動けないので避けて——————」
阻んだ人の袖下からキラリと光る何かは近づいてきた。避けることなんて今の身体に出来るわけなく、胸に非常に長い線が描かれる。
「・・・・・・!??????」
困惑を隠せないまま仰向け倒れこむ司を止めるを刺しに来た。
「(なんでこうやってみんな俺を狙ってくるんだよ。俺が何かしたか?)」
———ふざけるな。俺はまだ妹たちの晴れ姿さえ見ちゃいないんだ。死ねるわけがない。———
「・・・武器だ。あんな大きなのじゃなくていい。取り回しが良くて俺でも出せるサイズを・・・!」
阻んだ人の袖下が司に近づく。反対に司の左手は光りだす。
その光と袖下が触れた瞬間、ギィインという金属音が響いた。
「弾いた?」
司は理解出来ず左手を見る。そこには、夢で見たものを片手で使えるサイズになっていた。これが袖下の得物を防いだらしい。
それに気づいたのと同時に身体が軽くなったのを感じる。
怪我があるので動かし辛さはあるものの先程までとは違い充分戦闘が出来る程に動かせるようになっていた。
「なら・・・!」
即座に立ち上がりながら距離を取り武器を構え直す。
「や、やるか!?」
「・・・・・・主任。早く会社へ・・・」
「え?まさかお前・・・」
声からして声変わり前の子供だ。その上司を主任と呼ぶということは松長の会社の者だ。
司は構えを解いてそれのもとに近づくと、それは司の身体に倒れ込んだ。
被っていたフードが剥がれる。司はそれを見て身体を震わせる。
「・・・・・・こんなのないだろ・・・・・・」
子供の顔は焼けただれ、今息をしていることが不思議な程の傷が見えた。
肌も冷たかった。それで分かった・・・。
「俺と・・・同じ力だ・・・」
司が試作品と呼ばれている以上、同じような能力者はいるとは理解していた。だがしかし。無理やり蘇生しておいての対応があまりにも酷いものだった。
「あなたに振るったのは痛み止めとあなたの力を引き出す薬を混ぜたものを打ちました。早く行ってください。またあんなことになる前に・・・」
何とか言い切ると、砂へと消えていく。
拳を握り締めると空を見上げる。塩水を目から流すとすぐに拭き。もう一度立ち上がる。
武器を右手に持って会社へ走る。歯をギリギリと鳴らしながら走っていく。




