1週間目(10)
ゼロツーを見捨て6個目のビルを飛び越えていた時、下からロープのようなものが司のそばにコンクリートの床を割って食いつく。
「結構な高さだぞ!これ!?」
ゼロツー以上の強さがそれだけで感じ取ることが出来た。このロープの先にゼロツーを撃ち抜いた人間がいるのだろうか?
そんなものを見れば直感でわかる。会えばそれで終わりだと。
アンカーから人が上がりきる前に別のビルに可能であればビル内に入ってやり過ごすしかない。向こうがそれを許してくれるか甚だしくはあるが。
ギリギリとアンカーの先が音を上がる。巻き取っていく音も近づいてくる。もう近い。行動を起こさないと間に合わない。
急いでビルを飛び越えたが、一瞬でも止まったのが行けなかった。司の足に光が通過する。
「がああああああ!!!!!!!!!!?」
痛みでまともに受け身も取れず、ゼロツーのように転がり込んだ。
「うっが・・・!!!!!ぐうううぅう」
弾があった時のような熱さではない。ゆっくり溶岩に入って行くような感覚だ。熱量で血さえ流れない。
「・・・・・・うっ・・・・・・」
司に銃口が向けられる。死にたくない!その思い一心で腕をバタつかせ階段へと向かうが、手を置こうとした場所を尽く光が穴を開ける。
無我夢中で逃げることしか考えていない司は、溶けている床を素手で触りジュウ・・・という焼ける音も気にせずに階段へ進む。
「あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“・・・」
「無知は可哀想だな・・・」
男は今度こそ司に銃口を向ける。動いているがこの距離なら外す訳がない。
光が右肩を通過する。肉が焼ける。
「—————————!!!!!」
声にならないような音が口から漏れるが、今度は左腕だけで階段へ進む。
男は止まるのを期待していたのかもしれない。わざわざ痛みは出るが死ぬような所は狙っていない。
だが、もういいと銃口が司の頭に向けられる。当の本人はもうそのこと自体に気づいていない。階段しか見えていない。
そこで男の懐からバイブ音がした。
「何だ?」
『少しやり過ぎデース。レッドフィールドはいずれ我々側に付く者。損傷はあまり与えない方がよろしいかト』
「分かった。回収はするか?」
『一時的狂気に陥っているようですので、記憶には残らないでしょウ。そのまま放置で構いません』
「ジャップの言うこと信用出来ないが、このまま放置しても見つけてもらわなければ死ぬだろうさ。この先どうなるか見るのも楽しいか・・・」
銃を腰に収めて振り返ると瞬間移動とまではいかないがギリギリ高速移動ですむような速さで消えていった。
「あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“あ”あ“」
高速の風圧で吹き飛ばされるが、返って司には階段に近づくことが出来た。
目は見える筈だが見えていないようでドアをガリガリと削るようにドアノブを探して行き、見つけると体勢のことを気にせず転がるように階段の前へと進んだ。