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1週間目(9)

ガスボンベから出る匂いと、肉野菜という素材の匂いが交わって部屋を充満していた。


何かに包まっているはずだが、周りが非常に暑く感じる。料理を作っているからそれで熱が出ているからだろう。


司は暑さに呻き声を挙げる。それで気づいたのかガスコンロを切ると部屋の奥から試作品2号(プロト02)が出てきた。


「起きたか、ゼロワン」


「ゼロツー・・・?何で?何があったんだ?」


「覚えてないのか?お前道路で血を流しながら倒れてたんだぞ。もう少し遅れてたら危険だった」


「出血・・・・・・?」


出る理由が司には思いつかなかった。誰かに撃たれたり刺されたりしたわけでもない。特に後者なら首などの急所に刺さないと気づかれずに攻撃なんて出来るとは思えない。しかしそうなら何故司は生きているのだろうか?


考えられるとしたら、あの殺意で怪我をしたのか?あり得ないとは思うが、矢があれほど誘導するのを見た後だと、そうかもしれないと疑ってしまう。


「相応の力以上を使えばそうなる。ゼロワンも本なしで使い魔を呼ぼうとすると身体が痛くなるだろう?多分それが更に酷くなったものだろう」


「召喚した覚えなんて・・・・・・!いや、あったわ。トリシュを呼ぶときか!」


「例え生存者だとは言っても別の場所にいたんだ。召喚扱いになってもおかしくない。それにトリシュは死者じゃあないんだろ?今まで曲がりなりにも死者しか出して来なかったお前には負荷がかかり過ぎたと考えられるな」


「それならこれは使わない方が良いんだよな?」


「可能な限りだろ。もしこちらが今襲ってきたらどうする?武器もない本もない戦う手段なんてありゃしない。ただ殺されるのを待つだけのカエルだ。そういう時は使っても良いと思うぞ」


「つまりは諸刃の剣として考えろと?」


「そうそれだ」


話が終わると、ゼロツーの側にあった冷蔵庫からコップとお茶取り出してそれを司の寝ていたベッドの横のテーブルに置く。


「出血で喉も渇いてるだろ?飲んどけ。もう少しで出来るからな」


やはり先程のガスの臭いは料理をしていたからか。だがこちらの方に臭いは来るということは換気をしていないからなのだろうか?


再びコンロの切れる音が聞こえるとゼロツーが皿に盛られた料理を持ってきた。量からしてゼロツーも食べるのだろう。にしては多い気のではと司は感じたがそこでゼロツーが来た方向とは逆からゼロスリーが来た。


冷風とともに来たので外から帰って来たのだろう。


「おかえ———ガッ!」


プシュという音とほぼ同時にゼロツーが倒れる。料理はテーブルの上なので溢れていない。


「ゼロツー!」


「・・・動くな!会長グループの下に付いたか!殺戮者(ホロコースト)


「付いたも何も。()は彼らのクライアントだ」


「なっ・・・!?」


司にはゼロツーとスネークと思われる人物が何の話をしているのか分からなかった。思われるというのは、僅かにスネークに見えるのだが、確証が持てない。認識が難しいと言えば良いのだろうか?


「司くん。君は知らなくて良いから。そのままでいれば良い」


「・・・・・・2人とも逃げて!」


ボロボロな身体で立ち上がりながら剣を抜き、スネークと思われる人物に振るうが弾かれる。


だがその一瞬と呼べるか分からない程の僅かな時間にゼロツーは司を抱えて外にガラスを割って出た。


窓を割り外に出ると30は超えるだろう武器を持った人たちがいた。スネークと思われる人物の部下だろうか?


「チッ、・・・・・・こっちか!」


最後には会敵することになるだろうが可能な限り戦闘人数は減らしたいので迂回しつつの逃亡を続ける。


「何であの人たちが襲いかかって来てるんだよ!」


「向こうからすれば俺たちの行動は誘拐にしか思われないだろさ!」


路地から出れそうだと思ったがそこにも敵が配置されており、迂回せざるを得なかった。


一度空きビル内に入ると当然のようにビル内に入ってくる。このままでは袋小路だ。


「どうするんだよ!何で自分から逃げ道をなくすような事を!?」


「人は飛べるようには出来てない。ならビルを使えば捕まえるのは容易じゃない。会敵数を減らす為にもこうするしかない!」


「あの人は多分俺の知ってる人だ。理由を言えば見逃して———」


「くれるわけないだろ!お前も感じた筈だ。知っている人のはずなのに本当にそうか?っていう感覚がな!」


司だけでなくゼロツーも感じていたようだ。本当にスネークなら何度か垣間見ている筈だ。だが今の今までそのような発言が一切ない。なかったのはそういうことだったのか。


空きビルの屋上の扉を蹴破るとその端までその勢いのまま走る。


「このまま飛ぶぞ!タイミングミスるな!」


手を掴んだままゼロツーは先に飛ぶ。少し引っ張られるような感覚があるが、タイミングが崩れる様なものじゃない。


ビルとビルの間を飛び越えているところでゼロツーは血飛沫を散らせながら回転した。


角度や方向は幸い変わらなかったようで、着地予定のビルの屋上に転がり落ちる。


司はゼロツーの血を浴びて視界を遮られた。


「がっ・・・・・・ゼロツー!大丈夫か」


僅かに見える視界からゼロツーを見つけて肩を取る。


「・・・・・・お・・・ゼロワン。俺を置いていけ。背負ったままじゃビルは飛べない。特にお前じゃな」


「見捨てろっていうのか?」


「お前を助けるのが俺の仕事だ」


「ゼロツー・・・」


自分の願いよりも仕事を、取るというのかこの男は。そんな男を司は見捨てるしかなかった。


「ゼロツー。生きろよ。そうしなきゃお前の願いは叶わないんだからな!」


呼吸ができる体勢にゼロツーをした後、司はビル越えを1人で続けた。

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