プロローグ05
規定破りの司は、ニアとカオルの所属している班に向かう。司本人もここが基本的に仕事を行う場所で、先ほどまでの仕事は多くない。機械がいつもやるし。あっ、これは前にも少し説明したね。
司達の班は何をしているかというと、能力者の能力向上を中心に、パワードスーツの開発などを行っている。けど、能力者の能力向上と、強化装甲の開発がどういう関係があるのだろう。いやね、多分なんだけどさ、能力者達が暴動起こしたら今のままだと、止められないからかな?
司が部屋に入ると、待ちわびたぞ少年!とか言っても問題ないように見えるぐらい、待ってました感がニアから出ている。
「にゃあ~!師匠がきたにゃりよ~!みんにゃあ!」
「ほらほら、落ち着いてニアちゃん。高ぶる気持ちも分かるけれど、ここ公共の場所だからね。こんばんは、主任。今日は来るの遅かったですね」
司を主任と呼ぶのは本当に主任だからなのだが、特別社員を主任にしていいのかよ。こういうのって正社員がやるもんじゃあないのか?情報漏れたらどうすんだよ!?あれか?全部の責任を司に押しつける気かよ。ちなみに、主任と呼んだのは、木下っていう司と同年齢の少女だ。こっちは正社員。せめて逆にしようか、松長さんや。
「今日はまっちゃんに呼ばれて別の仕事してたんだよ。それにしてもキノ、いつも言ってるだろ。ニアは元気いっぱいなのがニアなんだからさ」
「その元気が問題なんですよ!主任。それで器具が故障したらどうするんですか」
「その時はその時。なったら考えるって」
はあ、とため息をつく木下と、いまだに気持ちが高ぶっているニアの頭を撫でる司。こんなメンバーで大変だなここの班は。もちろん、まともな人は多い気がする。頭のねじが外れているのは司やニアぐらいだ。カオルにはそういうとこはない。
「強化装甲の機動性のデータ収集を行いたいので、主任着用頼みますね」
「ええぇ。俺が着るの?面倒くせえなあ。ニアが着りゃあいいじゃん」
「このにゃかでは、師匠が反応速度が1番にゃんだがら、当然にゃあ~。それに、にゃあには大きすぎて着れにゃいし」
「それ、理由になってないでしょうが。カオルはどうなのさ?」
「僕も試したけれど、さっぱりだね。全然駄目だったし、ごめんね。司」
「ですって、主任。それじゃあ頼みますね」
カオルやニアだけでなく、他の班員にいわれたりしたらそりゃあ、やらない訳にはいかないね。司はため息を漏らしながら、強化装甲にある右肩のボタンを押す。すると、ウイィィィンという、よくロボットアニメで人が搭乗するときに開く音を立てながら、背中が開いてゆく。それにしても、うるせえな。本当に新品かなこれ。機体自体は新品でも部品は旧世代の奴なんじゃあないのか?確かめる方法はないけど。
「温度調節機能は付いてんの?キノさんや。異様に暑いんだが」
装着した瞬間から、汗をかく子供のように流す司。本当に暑そうだ。熱中症とかで倒れないかなぁ。この中で気絶したらどうなるんだろう。緊急脱出装置みたいのが作動するのかな?
「大丈夫ですよ、主任。カオル君やニアちゃんの時も最初は、そんな感じでしたから」
「いやいや、そう言う問題じゃあ無いから。兵器に転用するにしても、最初に暑かったら砂漠地帯とかで使えないし、機能が元から働いてなきゃあ、寒い極寒の地じゃあ駄目じゃん。何の為にエンジン積んでんだよ。これじゃあ、ただの棺桶だよ」
「大丈夫だ。問題にゃい」
「それフラグだから、ニア」
「主任。もうしばらくすれば入りますからそれまでの辛抱です」
木下がそう言ってから三十秒後、やっと強化装甲内部が冷やされ始めたみたいだ。司の顔から汗は見えなくなった。うーむ、それだけ、涼しくなったってことだね。よかったよかった。ってあれ?今度は、司の唇の色が薄くなってきてる。
「キノさんや。今度は効き過ぎやしませんかね?こういうのって普通、外の温度に合わせるもんなんじゃありません?」
「最初はそういうものです。主任」
「ちゃうやろ。失敗を全部物のせいにすんなよ。俺も修正するからまずは、それやってからだな。機動性の実験は」
司は強化装甲脱いだあと、班員全員で分解する。まるで、アリのようだねぇ。バラバラバラバラバラバラバラバラ……ピコンッ!おっ、違和感があったみたいだ。司が言ってた通り、温度調節機能に問題があってそれは、コードが切れかかってるようだ。あんまり機械に詳しくないけれど、コードが切れかかってると、危ないのかな?
「ばっきゃろー!キノ、どうしてこんな古いコード使ってんだよ!」
「ばっきゃろーはないでしょう……。これだけ機械を詰め込めば、なりますよ。ならないようにしろって言うんじゃあ、ものを減らさなきゃいけないでしょう。試しに聞いてみますけど、主任ならどうするんです?」
「まずは、緊急脱出装置を取り除いて、あれかなほら、鎧みたいな形にすれば、コストを抑えられる」
「けど、それじゃあ、装甲薄くないですか?」
「何の為にエンジンまで積んでんだ?そこで機動性だよ、機動性。当たらなければ、どうということはないってやつだ。それに、レールガンは、一応量産には成功してんだろ?それをガトリングにすりゃあ、攻撃される前に潰せるしな」
「なるほど!それなら確かに削れますね。でも、こいつはどうするんです?」
「作っちゃんたんだ、ワンオフ物として、使うしかねえだろ。他にも意見は?」
木下を含めて全員反対意見は出ず結果、司の考えている強化装甲が使われることになった。
司は、班員に作ってもらう為に、絵を描く。ちなみに設計図じゃないよ。けど、理解できるかな?司の絵、かなり理解しづらいけどなあ。
出来たみたいだ。司はまずはニアに見せる
「ほら、出来たぞ!どうだ絵、上手く出来ただろ?」
「……ん、うん。上手に出来たほうじゃにゃいかな?そうにゃよね、カオル」
「え、ここで振っゲフンゲフン。確かにいいんじゃない?司にしてはだけどさ」
「ぬっふっふっ~どうだキノ。俺だってやるときはやるんだぜ?」
ニアやカオルは、司の薄い心の硝子を割らないようにしようと思って褒めたのに、調子に乗ってるよ、駄目だこの人……。
他のみんなも言いたげだが、司は本当にやるときにはやるので、文句は言えていないようだ。
「そんじゃあまあ、始めますかね?みんな」
「あれ?早く帰らなくていいの?司」
司はカオルに指摘されて初めて携帯を見る。あっやべ。と呟いた途端、全身から冷や汗が出ている。なんか、まずいことでもしたのかな?
「ごめん!みんな。俺帰る」
「え!?どうゆうことですかって……聞く前に行っちゃったか……」
木下を含め、責任放棄をした司が何で帰るとか言い出したのかが分からない。分かっているのは、ニアとカオルの、司を会社に連れて来た二人だけみたいだ。つまりは……。
「妹さん達に今日は遅くなるって伝えないで来たから、今走って出て行った訳」
「携帯持ってるのにゃら、電話すればいいのにゃ……」
「しょうがないねニア。ここ、電波悪いし。皆さん、今日は解散にしましょう。司がいないと今回のようになりますし」
そうだな、と納得する班員達。司が主任じゃなくてもいいんじゃね?まあ、上が決めたことだから、文句は出ても言えないか。
今日は解散また明日。明日はちゃんと司来るのかな?