1週間目(7)
今日の授業が終わると司たちは一度屋上に上がりこの後のことを話し合う。
「俺が先行する。いつもと同じ道だろうから実際前は要らないとは思うが念の為な。後ろはニアとカオルに任せる。いいな」
「面倒だけど任せて、今度は遅れはとらないつもりだから」
「ニアも了解したにゃ!」
2人は了承すると、そそくさと屋上を後にする。それを司は後ろからついてくるのに何で別の場所に言っているんだと松長に尋ねると、至極普通な回答が返ってきた。
「慣れてないことの連続で、レベルでも下がったか?」
「まっちゃんの言うやつより多分学校で疲れちゃったから知能レベルが下がってると思うのボクね」
「にしては下がり過ぎだ。続編が出たゲームみたいだぞ?」
「事実戦闘なんてそうそうあるもんじゃないし、下がったように感じてもおかしくはないでしょうや」
一度溜息を吐き空気を変える。
「・・・・・・後ろって言っても側だったら意味ないだろ?それに瞳さんの近くに配置するわけにもいかないし。何か守るのなら良い場所でも2人は見つけてるのかもな」
「まあとりあえず2人の事は2人に任せるとして、俺はどういうルートで帰れば良い?まっちゃん。お前が前ならお前の指定したルートじゃないと意味ないだろ?」
「急にレベルの上がる司なのであった。・・・すまんこっちも結構レベル落ちてたわ。とりあえずいつものバス停までは同じで行こう。迂回も特になしでな」
「最短距離でいいと?」
「ちゃんとした最短距離な。ジャンプや使い魔を使った最短距離はカウントしないぞ」
「ゼロツーやゼロスリーじゃあるまいし、出来るわけないでしょうが。まっそれでも何かの理由で屋根は行くかもしれないし、極力普通の最短距離を目指すわ」
司の意味の分からない回答に片腕で頭を抱えてつつももう一度司に説明する。特に今回は司1人ではないので、念を押して伝える。それでもここ最近の状況から不安なのは拭えないが、それでも可能な限りは目指してくれるだろう。
「それじゃ復唱してみろ、司」
「瞳さんがいるから一般道での最短距離を通ること。だな」
「三歩歩いただけで忘れるなよ?お前忘れやすいんだからな」
「首がない鶏なら露知らず、俺はちゃんと首も頭もあるからそこまで酷くねえから。もし鶏なら俺は仕事とか出来てないと思うんですよ」
「分かったのならいい。作戦通りに動けよ」
松長と司は途中まで共に下に降りると、一度司だけを教室に戻させ自分は学校を後にする。
「大体10分ぐらい経ったか。もう充分離れたろ。武器もないいまの状況なんだ。可能な限り敵と鉢合いませんように」
このような時だけ神に祈ってから司も学校を後にする。
「珍しいのね。お友達とは一緒じゃないの?」
「煽ったらリアルファイトになりそうだったから、とりあえず今は別れた。どうせ会社で否応無しに会うんだからその時でも続きをやればいい」
「仲がいいのね。貴方たち」
「少なくとも2年間は一緒にいるわけだしな。相手の嫌がることも手の取るように分かるわけですよ。それじゃ行きますか?瞳さん。俺の下手なエスコートですけど、そこはご勘弁を」
紳士のように瞳さんの手を取って会社へと足を進ませる。
「そういえば瞳さんって人気ですよね。何でなんです?」
「さあ?」
自身の事なのにもかかわらず、返ってきた言葉が知らないと言うのは驚いてしまった。
「本当に知らないのよ。いつの間にか人が近くに集まっていたってだけ。そういう貴方はどうやって松長くんと会ったの?」
「金が無いからここで働かせてくれって直談判したのが最初の出会いだな。そこから何度もしつこくやってやっとの思いで働いてる訳」
「それなら恩人じゃない。なぜ上に刃向かうことを?」
「刃向かうことをあいつは禁止してないしな。代わりに殴られたけど。まっ、死ぬもんでもないし気にするものでもないでしょ」
自分の身の回りの話をしているとバス停が見えてきそうな所で、殺意を感じた。
「瞳さん。これ・・・」
「わざとこちらに気づかせる為ね。つまりは私たちの敵ってことよね」
「ああ。だが今に俺に武器はないんだ」
じゃあなぜ外に出したのか。勿論自分が疑われないようにと司は言ったが、それだからって戻る途中のことは考えていなかったのかと、瞳は驚きを隠せないでいた。
その反応は至極まともで、これは司が準備していないのが悪い。松長たちが手伝うと言ったのは、司が準備をしていないのが目に見えたからだろう。
迂回をした方がいいのではと司に進言するが、そうなると援軍が来れないから、今はこのまま気づいていないフリで行くと司は何を考えているのか瞳には読めない状態のまま歩みを進める。




