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一週間目(2)

太陽が少し登ってきた頃に社員が入って来ると、その音で司は目をさます。トロワも身体を消さずにその場で寝ていたようだ。


「主任。お休みのところすみませんが、もうお目覚めになられた方がいいと思います。本日は登校日ですから」


「あと五分・・・」


「ダメです。早く起きてください。ひとつひとつの動きが遅いんですから、もう起きないといつものように焦るだけですよ」


毛布を司から奪い取ると腕を取って引き上げるが司はうなだれたまま立ち上がろうとしない。眠いからというのもあるだろうが、それだけなら反応はしないはずだ。


「今行っても洗面所空いてないだろ?少し空けてから行けば俺でも間に合う。そう信じるだけさ」


「希望論は後がないときにでもしておいてください。学生なんですからさっきと準備して行ってきて下さい。俺みたいに金がなくて行けなかったやつだってここに入るんですから。主任が行かないのなら俺が主任の代わりに行きますよ」


「・・・それ言われたら行かなきゃ行けなくなるだろうが。分かったよ行ってきますよ。後キノの真似すんな」


「木下副主任の真似をすればワンチャンって思って」


「せめて声のトーンぐらいまでは真似ろよ。キノが見たらその似てなさに対してもうちょっととか言いそうだな」


毛布を取られたらエアコンの風が当たり寒いので、渋々起き上がり小部屋を後にする。


その社員が準備してくれたのだろう通学鞄が2つあった。カオルはもう準備しているだろうから、もう1つはニアのか?いや、わざわざ上まで持ってくる必要性が見つからない。じゃあ他に考えられるのといえば。


「(荷物が多くて入らないかっただけだろ)」


2つの鞄を手に持ちながら社員に準備ありがとさんと感謝すると、そのまま食堂に足を運ぶが誰もいない。料理師はいるが、客がいない。


「まだ空いてないか・・・夜遅くに行ったからだろうな。んじゃその辺のコンビニで買うか」


そのまま学校に行くと思いきや、会社内の独房に向かい瞳の部屋に入る。


「・・・・・・何?」


「釈放だ。流石に雷電の方は無理だけど、瞳さんだけは出ていいぜ」


キョンとした目をして司を見る。状況がどうであれ司を攻撃したのは事実だ。そんな相手を外に逃がすなんて変だ。許したわけではないから、雷電を解放しないということか。


「理由がないじゃない。また襲うかもしれない」


「そんときゃそんときだ。俺が瞳さんを捕まえたのは、妹たちに手を出したからだ。俺に対してやったことは気にしてない。雷電は手を妹には出していないけど、あの時の戦い方からすれば狙われる可能性がある。それに」


「それに?」


「あなたが通学しなかったら、俺が疑われるだろ?」


何言ってんのこいつ?とでも言いたそうに司に疑問符を飛ばす。どこが変なのかわからない司は瞳に尋ねる。


「いや、変でしょ?なぜあなたが狙われることになるの?“今日は休みなんだ”程度にしか思われないでしょ」


「瞳さんに学校で会った時、あなたから声をかけてくれただろ。取り巻きは俺とあなたの関係を知らないはずだ。そんな時にあなたがいなくなればどうなるか。俺が疑われる可能性が多少なりとはいえ付くわけでしょうが。変な嘘はつきたくないし」


「・・・・・・馬鹿でしょ。赤街君」


「友人の力で主任になるぐらいには無能だ。ここに残りたいって言うならいてもいいけど、どうしますかね?」


「あなたを困らせたところでこっちにメリットがないもの。大人しく外に出させて貰います」


「おっしゃ、楽出来るぜ。これの中に多分授業道具入ってると思うから使ってくれ」


通学鞄を瞳に投げ渡すと部屋の扉を開ける。部屋を少し警戒しながら出ようとする瞳を尻目に司は監視カメラを睨みつける。———俺が勝手にやったことにしてくれればいい。———伝わるかどうかは怪しかったが、とりあえず口も一緒に動かして瞳と学校へ向かった。

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