1週間目
「ふぁっきゅー!!!!!財布の金全部つかわれちまったZE!!!!!」
「その上借金まで背負わされて・・・どうするんだよ?」
「バイト代から出すしかないよな・・・」
「立て替えて置いてやるから余ったらそれをくれれば良い」
「すまねえ」
司の感謝を聞くと調理場に戻って行ったのを見て司は食堂を後にした。
仕事場に戻っている途中でモモとトリシュと顔を合わせた。
「おいおい・・・寝てなきゃダメだろ?」
「ちょっとぐらい外に出てたっていいじゃんか」
「怪我してるんだぞ!傷が開いたらどうするんだ!」
「ごめんなさい・・・でも」
でもじゃないと強く言い肩を掴み先に病室に向かい、ベットに寝かせる。
「寝ることが一番身体にはいいんだから目を閉じるだけでもして休むんだぞ」
「分かったよ司兄。そんなに言わなくたっていいじゃない。クルミも起きちゃうし」
あとはトリシュに任せて病室を出て仕事場に足を進める。少しでも早く借金を返したい司は自分の睡眠時間を削る覚悟を持って部屋に入る。
時間も時間なので電気も消されていて電源も落とされているようだ。
真っ暗な部屋進んでいくと右端にある電源を入れて一部に電気を付ける。
球型小部屋のPCを開きここ最近の戦闘データをブックス経由で入れていく。ブックスがなかった時の情報は手打ちで入力を行う。
時々部屋を出てはコーヒーを飲んで眠気を飛ばしてはもう一度PCの前に座る。
「(こうやって反省しながら見ると、やっぱ俺って武も駄目、文も駄目とかいうクソっぷりがやばいな・・・)」
自分の能力の低さを悲観しつつも冷静にどうやれば、どう動いたら良かったかを確認していく。
「(ゼロツーだけでも戦えるようにならないと2対2の時とかどうするんだよ・・・後衛が俺に出来るわけでもない。かといって前衛もできない。あいつのパターンを叩き込むんだ。そうすりゃワンチャンはあるだろ)」
PC内に入れられるだけの情報を入れると、小部屋を出てシミュレーション室に足を進めてそこに先ほどのデータを入れる。
室内の明かりをつけて部屋に入ると、ゼロツーがその場に立っていた。もちろんこれは司が先程入れたデータを元に作り上げたゼロツーのコピー体だ。本物と比べるまでもなく弱い。だが司からすればそれでも十分といっていいほどの力を持つ。
「よし」
ブックスを腰に取り付けトロワを呼び出してコピーのゼロツーとの戦闘を始めた。
何度コピーのゼロツーと戦っただろうか?数えていないため詳しい数字は分からないが、少なくとも2桁半近くはやっただろうか。
トロワも意識が飛んで床に倒れ込み、司は左膝を付けながら息を荒げる。
「かはぁはぁ・・・くっ!」
「時間がないんだ。パターンを覚えろよ」
「まっ、まっちゃんか。結構な時間なはずだと思うんですけど?」
「深夜に電気が使われてるって警備員が言っていたもんでな。見てきてみたらこうだ。ただ1人でやっても意味ないだろ。特に時間がないんだから他の視点は必要だろ」
「元の目的は金稼ぎだからな。強くなるのは二の次だよ」
膝を引きづりながら扉にあるタオルに手を伸ばし、汗を拭き取る。
「いきなり仕事真面目にやっても給料は増えないぞ?勿論分かってると思うが」
松長は司が自分が飲む為に煎れていたコーヒーを片手に冷蔵庫から硬水を取り出す。
「そうだとしても少しでも・・・ってな」
松長が持ってきた硬水に手を伸ばして半分ほど飲んで残りの一部をタオルにかけて濡らしそれで顔を拭く。
「1人でやってもどこが悪いかが見えないんだ。俺たちがいるんだからそれを使えばいいんだ。何のためにここにいるんだよ」
コーヒーが熱かったようで舌を出してしまうが、それでも話を続ける。
「そうなるとやれる時間が限られるんだよな・・・」
「家を襲撃されてしまった以上、一定期間はこっちに残るようになるだろ?それを利用すりゃあいい」
「そうだけどさぁ・・・」
「とりあえず今無理してやっても殆ど意味ないだろ。今は寝ろ」
丸めた玉のようなタオルケットを松長が投げ付けたのを受け取る。
「へいへい。寝りゃいいんだろ寝りゃあ」
タオルケットを広げて肩にかけて横になる。
「起こしに来るからそれまで寝てろ。それじゃお休み」
「お休み」
松長は小部屋以外の電気消して部屋を出る。2時間ほど経つと社員が入って来ることになるのだが、それまでは何も音がなく静かに眠りについた。