3日後6
「まもなく、本部に着きます。副主任どうですか?」
「少なくともさっきのは追ってきてないようだね・・・このまま入る。急いで」
「了解。降下します」
限界高度を進み続けて、会社の上空まで来てから、降下を始める。司が眠っているため当てにはできず木下1人での状況把握になる。
何も他にないというのに降下速度は遅い。安定高度を無視して高度を上げていた以上、ちょっとした事でバランスを崩して落ちてしまう可能性がある。
何とか安定高度まで降りるとそこからは一気に降下した。戦闘機ではないので、秒速数百メートルなどは出来ないが。
「こちら木下。主任を回収して帰還しました。着陸ポイントの提示をお願いします」
『——————GF-12。確認しました第2ポイントの着陸をお願いします』
会社のヘリポートに降ろすのかと思うと、ビルの横が開いて、ヘリはそこから中に入っていく。狭いがそれでも入れるパイロットの実力は折り紙付きのようだ。
「上のヘリポートから行けるのにわざわざ難しい方からなぜ行かせるのか?これがわからない」
「それだけ自分たちの実力を信じて頂いていると思いましょう。そう思わないと、やってられませんし」
「そうだね。いける?」
「問題ありません。入ります」
文句を言いつつもヘリをビルの中に入れて着陸すると、松長と共に何人か社員がヘリを出迎える。
「流石だな。司たちは中にいるんだな?」
木下が扉を開けると、司も瞳も変わらずにヘリで寝ていた。
「(向こうが先に目を覚まして、攻撃してくる可能性だってあるのに、よくもまあ敵の前で寝られるもんだ・・・)」
呆れながらヘリに乗り司の前に立つと、軽く———握りは強く———司の頬を殴る。
「おーい起きろー!」
ゲシゲシッ!頬が揺れる。それでも起きない。だんだん勢いが強くなる。
ゲシゲシッ!という音からガッンガッン!と音が重くなる。
「あの・・・社長・・・?少し度が・・・」
「俺は悪くない。起きない司が悪い。木下、今の間に横の子を運んで置いてくれ。場所は分かるな?」
分かりましたと木下は言うと、ヘリパイロットと2人で、瞳を連れて行く。
「なあなあ。社長ってあんなに赤街技術主任に甘かったっけ?」
「自分たちの知らない所だから想像になるが、そうなんじゃないか?」
松長の行動はまだ続き、周りにいた者たちも警備ついでに話し始める。
そんな状態が数分続くと、やっと司は眼を覚ます。
「う・・・ぁ・・・?」
「お目覚めですかね?司さんや」
「まっちゃん?ああぁあそういうことか。一応回収は出来たのか。あとさ、まっちゃんちょっと気になったんだけどさ、なんか頬が異様に熱いんだが」
「知らね。——————本題に入るぞ。妹たちの方はなんの問題もない。モモの方がお前と同じ矢で負傷はしたものの、命に関わるものじゃない。クルミは無傷だな。次は襲撃者についてだが、相手は瞳君だな」
「知ってる。もう1人が多分雷電だろうな。なんで襲って来たのかの情報は取れそうか?」
「瞳君はさっき回収したばかりだから、今から取るつもりだ。男の方からはもっと前から行ってはいるんだがな・・・収穫はゼロって感じだ。あとお前を前に襲ったゼロツーというやつがトリシュと一緒に来ていたが、それは?」
「俺の護衛として協力してくれたんだ。今は敵じゃない。多分トリシュもみんなも分かってると思うが、攻撃はしてないだろうな?」
「無駄に被害が出るようなことを俺が命令すると思うか?司」
「試しに聞いただけだ。深い意味はない」
腹部を押さえて、松長の肩を借りながらヘリを降りる。取り敢えず今は治療を優先してそのあと、妹たちと合流して最後に瞳に会うことに司は頭の中で考えた。
口に出さなかったのは、瞳の件が理由だと思われる。何故協力すると言ったのに裏切ったのか。どういう理由があったのか。そこの所を司は聞いていない。そこを確認するためにも、時間をかければ話す可能性が上がると思い、まずは自分のことを優先する。それまでは、他に任せる。木下が聞くのなら、先に聞いといてもらうだけだ。多分、無言だとは思うが・・・。
残った社員も軽くヘリの整備と木下の使用した銃の弾の装填などを行ったあと、松長の後を追う。
そして人がいなくなると、無人になったヘリから多分司が使ったうちの1匹?の鎖蛇がさらにその後を身体を捻らせながら、社員と同じように後を追った。