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2日目の夜(3)

崖を降りていくが壁がない。流石に崖から飛び降りるとは普通は思わないだろうし、飛び降りた所で死ぬのだから考える訳がない。


「のわぁあああ!!!!!?」


「叫ぶな!舌を噛んで自殺したいのか!」


「フリーフォールは無理なんだよぉぉおお!」


「だから黙れと言っているだろうが!」


下半身から力が抜けていく感覚がずっと続いていく。アトラクションとかでもなることはあるが、それは固定されているからという前提があるので途中で慣れてしまうが、これは違う。紐なしバンジーと何ら変わらない。


大粒の涙を浮かばせながら、試作品2号(プロト02)の腰にしがみつき歯を食いしばる。


試作品2号(プロト02)はそのしがみつき方に少し痛みを感じたが、手を離すことはなくバイクハンドルのスイッチを押す。するとプレートの上部からかぎ爪型のアンカーが飛び出し、背後のブロック壁に引っかかる。


それを使って少しずつ壁に近づいて降下速度を落としていく。地面に着くときにはアンカーとの兼ね合いで———それでも充分早い速度だが———速度は落ちて着地する。


だが止まらない。こうしている間にも壁が少しずつ生えてくるので、通る道が限られていく。止まっている時間はないので、更にエンジンを吹かしていく。


「ゼロツー。援護は僕がする。君はそのまま走るんだ」


「元からそのつもりだ。頼むぜ、俺は何としてもこいつを守るからよ」


前方3方向に壁がそびえ立ち、このままではぶつかる。しかし試作品プロト達は止まらない。


あと少しでぶつかる・・・という所で前の壁が3枚下ろしのように切れて、その間を余った壁を乗り越えながら綺麗に避けていく。


何故3枚下ろしになったのか、ぶつかる衝撃に備えて前を見ていなかった司には分からなかったが、試作品3号《プロト03》がバイクが当たる前にそびえ立つ壁を、一刀で軽々と斬っていたのだ。だが、あれだけの大質量の物をそんな簡単に斬れるのだろうか?


壁を抜けると、何としても通す訳にはいかないとばかりに壁が跳び越えて数メートル先に立っていた。試作品(プロト)達はは何の躊躇いもなく突っ込んでいく。試作品3号(プロト03)が壁を斬っては試作品2号(プロト02)がそれを跳び越える。それを何度も繰り返していく。


間もなく跳び越えた回数が3桁を超える所で、壁は現れなくなった。限界距離に入ったのだろうか?だが、こうなればこちらの方が有利だ。壁が展開出来ないのであれば、先程の子供達はただの歩行者と変わらない。バイクに追いつける訳がない。その上これだけの差だ、縮めることなんて出来ない。


だが、試作品2号《プロト02》は念を押して司の家までフルスロットルで走り、何事もなく家に到着した。


「おい、着いたぞ。さっさと離れろ」


「フキュー」


「男だろうがお前は。この程度でへこたれるなよ!」


「いや、ゼロツーさ、運転してる方はどういう動きするか分かってるから何の問題もないけど、後ろからすればどういう感じに動くか分からないんだから、気が抜けて動けなくなるのはしょうがないでしょ」


「それならこちらが跳ばなくていいようにお前がすればいいんだろうが」


「責任転嫁かい?酷いなぁ僕がいなかったまず壁さえ越えれないんだよ?それはないでしょ」


「俺の拳は天をも砕くんだぜ?そんなの造作もねえよ。さっさとこいつを家に入れるぞ。あのガキ共にもう一度会ったら多分もう守り切れねえしな」


「責任転嫁した事については後で追及するとして、賛成だね。車庫があるしそこにバイクごと入れておけば気づくでしょ———ぬっ!」


試作品3号(プロト03)の刀と何か小さい物が当たり、キィインという弾かれたような音が鳴る。刀のズレから考えて、司の家の方からの攻撃のようだ。


家の方を見ると、カオちゃんとチェンちゃんが歯をむき出しにして試作品2号《プロト02》達を睨んでいる。特に試作品2号《プロト02に対して敵意を出しているのは前に自分達を攻撃し、司を殺害しようとしたのだ。そうなるのも無理はない。


「今回は敵対しにきた訳じゃねぇ。お前さんのマスターを連れて来ただけだ。さっさと帰るからこいつを入れさせろ」


「・・・信用出来るとでも思いますか?」


玄関を開けて出てきたのは、トリシュだった。彼女も試作品2号《プロト02》とは会っている。カオちゃん達のような分かりやすい敵意は出していないが、それでも武器を持っている。


「お前さんも感じているとは思うが、ゼロワンが俺達とは関係のない奴に襲われてな、それで今日だけはその責任でこいつを護衛していただけだ」


していたのはつい先程からだが、まあ司を守る前に襲った男を無力化していたのだから、それも一応護衛したと言えるだろう。


「とにかくそちらが僕達を信じなかったとしてもこちらは事実を言ってるだけだからね。後、ゼロワンのこと頼むよ?彼をるのは僕達なんだから。他の奴らに取られたくないからね〜」


「それなら何故・・・」


「言ったでしょ?僕達がゼロワンをるって。他の人には渡さない。他が彼をやろうとするのなら僕達はそいつの敵になる。それだけだよ」


試作品2号(プロト02)はスタンドでバイクを停めると、試作品3号(プロト03)と共に司の家を後にしようとする。


「念のため確認するが、お前はゼロワンの試作品1号(プロト01)味方なんだな?」


「だから、私はここにいるんです。それ以外で———」


腰から拳銃を取り出してトリシュに向ける。


「俺が聞いているのはそういう事じゃない。全部の試作品達プロトシリーズを倒した後に、ゼロワンをやるつもりなのかって事だ。俺達の様に他に邪魔されたくないから、ゼロワンを守るとかじゃないよな?」


「無論です。私はある人に司を・・・マスターを守れと言われてここに来ているのですから。信用されなくてもいい。命の恩人からの頼み一度ぐらい通したって良いではないですか」


「そうか・・・そいつの事頼む。俺達以外の奴にはらせるなよ」


「心配はご無用です。誰にもマスターは殺させませんので」


最後にそうか・・・と言い残すと、2人は司の家を今度こそ止まらずに後にした。

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