2日目の昼(3)
「いい写真だ。よくもまあいいのを撮って来てくれたなぁお前ら。褒美だ、お前らの好きに使いな」
住宅街の1区画だが、草が生い茂り誰も近づこうとしない場所で男は1人不気味な笑みを浮かべて骸骨たちが盗撮したものを見ていた。写真の殆どは未成年でなおかつ学生だ。
「ひひひっ・・・!いいねぇ最高っだねぇ!」
男は涎を垂らしそれが写真の上に乗ることに何も思わない。骨を食べていた骸骨たちはそれを見ていたが、何かの気配に気付き骨を鳴らす。
「この写真を撮ったことに気付いて、骸骨どもを追いかけてきたか・・・お前ら俺の壁になれ———」
骸骨たちは男が言い切る前に動き出して男を守るため、男を囲う。
さあどこから来るか?後ろか前か。さあどっちだ。運良くここは他の場所と比べて草がある分音が立ちやすく、男からも気付きやすい。これは敵からもそうだが、守り側である以上男の方が地の利もあって有利だ。
カサッと草が音を立てるが、男は動かない。男からすると自分が動いた時はもっと音が鳴っていたし、一歩での草のカサッという音の時間が短いというのも分かっているのも合間ってそれがダミーだという事を見切っていた。
囲いの余りの骸骨が囮に反応して近付いていく。何の反応もない。やはりダミーだったか。男は肩を降ろすがそれで草が揺れる。
しまったと口に出す前に、試作品2号———男は知らないが———の拳が男の頬を掠める。
「ぐっ・・・んだてめぇいきなり殴りかかってきやがって、人の土地に入るんじゃねえ!」
「そんな事関係ない。お前は俺らの獲物に手を出した。それだけで充分だ」
「写真を撮った奴の中にこいつの何かがいたみたいだな。謝れば許してもらえないか?」
試作品2号に対して頭を下げる男だったが、試作品2号気にせず拳を握る。
「知らなかったとは言わせない。さあ武器を構えろ、お前の全身全霊の力で逃げてみろ。俺は例えお前が知らなかったとしても、これが冤罪だったとしても関係ない。ぶっ潰す」
草の確認に行った骸骨たちで試作品2号の後ろを狙うが、届かない。いや、辿り着く前に骸骨たちの首から上がなくなり、あと少しというところで消えてしまっているからだ。
「懺悔の用意は出来てるか。それじゃあさよならだ」
残った骸骨を全て試作品2号に向かわせ男はさらに奥へと逃げていく。だが試作品2号は骸骨たちには意識を向けているが、一切逃げた男には意識を向けていない。目の前に骸骨たちという敵がいるからなのかもしれないが、そうだとしても目標なのは先程の男だ。骸骨たちに目もくれず行くのが正しいと思うのだが・・・。
「んだよっ・・・いきなり襲いかかってきやがって。謝ってんだから許してくれたっていいじゃねえか。これだから最近の若者は・・・!」
腰の高さまである草を掻き分けながら他の出口へ向かう。男は骸骨を呼ばなければただの一般人だ。交番などの人のいる場所に行けば、試作品2号でも手は出せないと思ったのだろう。まだ余裕があるように見える。
住宅街を3ブロック抜けて右に曲がる。そこからは草が減り始め、灯りが増えていく。他地区に近づいてきたのだろう。
男は振り返る。誰もいない。骸骨たちもいないが結構な数だ。倒すことは出来なくても充分に時間稼ぎはしてくれたようだ。
「けっ、口程にもねえな。あいつら如きに時間を稼がれるなんてさ」
「だって、ゼロツーだけじゃないからね。君を狙っているのは」
「えっ———」
ザシュ!!!!!
男の胸に片刃の剣が刺さり、血が滲み始める。男は正面を向き直す。いつ前に来たんだ。とでも言いたそうな顔だ。
「ゼロツーに殺って貰っておけば一度の痛みだけで済んだのにね。彼と違ってぼくは生きてる人間をゆっくり殺るのが好きだからね」
「あぁぁぁああぁ・・・た、頼む許して」
「質問に答えてくれたら考えるよ。君は野良かい?それとも誰かの下についてるかい?」
「まず抜いてくれ・・・痛い息が出来ない。頼む———・・・・・・っっっう!?」
剣をさらに奥に差し込み捻る。男は痛みでのたうち回る。
「ぼくの質問に答えたら考えるって言ったでしょうが。さあ、どっちかな?」
「若い女に頼まれたんだよ!学校に攻撃しろって、攻撃方法は好きにしていいってな!」
「どこであったの?」
「そこは確かっ——————」
男の顔が赤く染まり、肉片が飛び散り試作品3号の身体にも男の血が着く。
「元から捨て駒か・・・」
剣の血を拭い、鞘に収めながら動かなくなった男の死体に手を合わせる。どこの何が司たちを狙ったのか、結局のところ分からなかったがそれでも答えようとしてくれた男に、敬意を払う試作品3号だった。
「どうだ、ゼロスリー。分かったか?」
男の出て来た方向から試作品2号が出て来る。数体残していたのか、骸骨たちが付いてくる。
|試作品3号はそれを気にも止めずに言う前に死んだと返答を返すと、肩を落とす。
「どちらにせよ殺る予定だったんだ。まあ、出来ればって言うところだったからそんな気にすることでもないだろう。祈りが終わったのなら行くぞ。あの鎖野郎が待ってる」
「それはいいけど、運ぶのは任せるよ。ぼくは力がないからね」
「それだけ長いもの持てるのだから人ぐらい余裕だろ?だが了解だ」
ビビビと携帯のブザー音が試作品2号のポケットから鳴り、それを取ると審判からだった。
「何だ。珍しく審判のあんたが関与するのか?」
『一時的に君達に協力を仰ぎたい。内容は———』
「どうせゼロワンを攻撃したやつを回収又は殺害とかだろ?もう終わったよ。俺たちがやろうとした時に奪われたみたいだがな」
『・・・・・・そうか。なら死体を持って来てくれ。確認したい』
ああ、と言い残すと電話を切り死体を担ぎ灯りのある方向へと向かい、その試作品2号の後を試作品3号もぴこぴこと付いて行った。




