2日目の昼(2)
———師匠!———
———ニア!今時間がない!あとで顔合わせる時間作るから待ってろ!———
———師匠が死んにゃら会えないじゃにゃいか!———
———生かすためにやるんだよ!下がってろ!木下、先に頼めるか!?———
———任せてください!———
ここは何処だ・・・?ニアがいるという事は学校か?いや違うな。確か俺はカオルを連れてバスに乗ったんだ。そこで後ろから刃物を胸に突き刺されて・・・・・・それでどうだったか思い出せないな・・・。
身体が動かない。目も開かない。麻酔だろうか?いや身体全体が動かない麻酔で意識が保てるとは思えない。事実前にもやった事があるが、その時も目が覚めたら終わってたって感じだったし、多分一部麻酔だろう。
背中に何か痛みが走る。小さな針が同時に俺を刺されるように感じる。さっきの骸骨が俺に対して行った攻撃の痛みが原因だろう。
———傷口が、何で!?何度塞がらないんだよっ!木下!何とか出来ないのか!?———
———こちらも出来る限りのことはやっていますよ!どうやっても、縫ってもまるで常に体が動いている状態で傷が塞がらないんです!———
医療班の悲痛の声が消えそうな俺の意識でも聞こえる。ああ・・・・・・もうダメだな。バスでもここでも多くの血を流した。意識を持っているのが多分珍しいぐらいだろうな。けど、カオルは助かったんだろうか?あいつが助かったんなら良いんだが。
———諦めないほうがいいよ。まだ彼の意識はここにある。ならこちらでも何とか出来る。———
この声はスネークか?何でまっちゃんの会社にいるんだよ。スポンサーが定例会以外で来るのか?
———・・・・・・分かった。あなたに任せる。俺たちが言えた口ではないが頼む、司を———
———責任は取るさ。ミスったらポリスメンにこの人が殺しましたって言ってもいいよ———
スネークの声が聞こえたと思った途端に周りから音が聞こえなくなった。みんな消えたのか?何があったのか見たいが見れない。身体と心が分かれている状態にでもなっているのかもしれない。
何かよく分からないが、こう・・・説明出来ないが、浮いているような感じで。それに合わせて俺の意識も保てなくなっていく。
遠くに白く輝く光が見える。その光に手を伸ばす。それで今自分が意識だけで動いていることをまた思い出す。だがそれでも、分かっていてもまた手を伸ばすような感じを出す。
結局意味がなく俺の意識が消えていった。
「これで今は司君の身体は眠れているかな。なんで出血が止まらないのは、多分呪いの一種だろうね。どうしてこうなったか分かる人はいるかい?」
誰もも司が老人型の骸骨に刺されたなどと気づくはずもなく、学校でやられたのでは?という話になる。
「じゃあ学校ではどんなことがあったんだい?それの内容によってはやった相手が誰かわかるかもしれない」
ニアが手を上げて、スネークの質問に答える。
「校舎内のあちこちに鎖がにゃて、ニアと審判さんっていう人でヒトミを救助しに行って、師匠はにぇつ方向から行こうとしたにゃり。ヒトミの周りには骸骨がいっぱいいたからそれらを倒して、そのあとヒトミにゃんを救助しに行ったんにゃけど、師匠はもう学校から出て行っていたにゃり。何故分かったかというと学校全体に鎖を展開していたのは、審判さんで鎖がそれを感じとったからにゃり」
「つまりは狙われたのはバス内ということか。そこは傷の大きさで分かるけど、その犯人は学校内にも展開しつつも外にも展開できるほどの力を持っているって事だね。ここから推測すると、確実に犯人は元から学校外にいた可能性が高い。いや確定だね。こちらの方で何とかしておくから、君たちは司君の面倒を見ていて」
そのままスネークは司たちの部屋を出て誰かに電話をかけた。
「今回の件は上の考えか?ヤミ」
『主語を言ってから話して頂きたいな。———率直に言ってこちらの者では断じてない。これだけは言い切れる。元から貴方と敵対したところでこちらにはメリットがない』
「じゃあ前回の件はどうなんだ?あれは司は怪我は負ったものの、それだけだった。だが今回に関しては司が死にかけた。どう責任を取ってくれるつもりだ」
『・・・・・・こちらで処理する。その上で司の有利な条件を本人に提示する』
「呪いの類のものなのにどうやって?」
スネークの声は先程までと変わらないが、顔つきは殺意で満ちていた。昔司と何かあったのだろうか?
『犯人は見つけた。映像を送る、確認してくれ』
「・・・・・・分かっていたなら何故処理しなかった?今の状態だってこちらが妥協してのものだったんだ。それぐらいのことも守れないのなら・・・」
『1時間待て。その間に片をつける』
「分かったよ。1時間は待つけどそれ以上は裏切り扱いとして見るから。いいね?ヤミ」
『感謝する。では』
電話を切るとスネークは舌を鳴らしながら足音を強くたてる。向こうの態度が気に食わなかったのだろう。脇目も振れずに会社を後にした。