表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/194

2日目の朝

地獄を見た。そこには何もなくあるのはただ肉片だけだった。赤い汗が流れ膝をつく。何が足りなかった。対話能力か?それとも、人間性自体が足りていなかったのか?


もう失敗なんてしたくないと決めながら、また同じ過ちを繰り返してしまった。私という存在自体が間違っているのだろうか。私の名前自体がそれを引き起こしているとすれば、どうすれば良いのだろうか。

『君は僕と同じだね』


ある少年か少女か分からないがどちらともとれる人間は言った。人は、多人数で無ければ生きることができず、少数派の人間を差別し迫害しなければ、生を謳歌出来ない獣の名だと。けど、人はそれだけではないと私はその時思った。それが真実ならば私はとうの昔に処刑されているはずだ。けど・・・・・・代わりとしてなのか、周りの人が死んでゆく。腹を裂かれその腸を肉詰めに使ったり、死なない程度に暴行を加えたりと。自分がされているわけでもないのに気分が害する事ばかりだ。


その人と会う前から、私は特殊な力を研究する機関で学んでいたのだが、成績は芳しくなかった。中の下ぐらいで能力に関してはあまり期待もされてなかった。けど、それは気にしていない。機関からすれば、私は周りの人々を自分に関わるだけで死なせてしまうその運命力だけに目をつけていた。


こんな状況でまともな精神でいられるはずもなく、私は機関からの頼みを全て聞くようになっていた。街を歩いてどれだけの人が死んだかや、教授と重なったりもした。もうダメだ。死にたい。そんな気持ちも薄くなった。


そしてその人と出会った。道具として使われていた私を救ってくれたのだ。機関はその人によって壊滅・・・・・・したにはしたが、かなり大規模なスポンサーがついているらしく、数週間で残党による機関が作られた。


その人によると、今までも潰してきたらしいのだが、極力機関員の殺害は避けているらしく、殺害するときは何度見逃しても繰り返す者だけらしい。そこまでやると分かっているなら完全に潰してしまえばいいのにと思って仕方がない。


他に行くところがなかった私を連れて、その人は色々なところへ連れて行ってくれた。若いなりにも努力を続ける少女とそれを支える青年、そして同階級なのか臆する事もなくそれらと話す右目を刃物で切られた跡のある低身長の少年などを。その人は低身長の少年とは知り合いだったようで、これからの事とか機関の基地がどこにあるのかなどを。


それから数週間後、人を殺すためだけにつくられた子供(名もない人)の殺害に私は出した。助ける手段はあったし、時間もある。それでも私は・・・・・・。


ここで映像が途切れた。


「ぐふっ!また落ちた。さっきのはなんだったんだ?ドキュメンタリー番組みたいだったが?」

ソファーから落ちて今日も目を覚ました司の頭の中には、男女どちらにもとれる人物と、顔までは一人称視点だった為確認は出来なかったが、少なくとも声のトーンからして少女だと思われた。

頭を掻きながら、立ち上がると食卓にB4サイズの紙が茶碗を重石に置いてあった。

茶碗を横に退けて紙を裏返すと、妹の実筆で先に行きますと書かれていた。

「(起こしゃあいいのに・・・・・・)」


司の眠りを邪魔したくなかったのだろうか?最後に小さく追伸、起こしたが起きなかったので放置します。と書かれていたが、司はそこまで目を通さずに茶碗を棚にしまい菓子パンを菓子入れから取り出しそれを朝食にした。


菓子パンを半分程食べてやっと気づく。トリシュをどうするか。学校についてきてもらうというのは、司の胃がもたない。見つかった時どう言って逃れるかが、思いつかないからだ。とはいえ、ハチのような相手にもう一度会った時、トリシュがいなければ今度は確実に殺される。それは嫌だ。勿論、学校では姫と呼ばれていた試作品4号(プロト04)と協力するという事にはなっているが、彼らがそれを守るかどうかまでは分からない。裏切りはしないと言っただけで敵対はしないとは言っていない。これに関しては、司が敵対はかまわないと言ったのも、原因の1つなのではあるが。


菓子パンを食べ終えて自室に向かう。自分の作戦をトリシュに伝えるのも兼ねて起こしに行く。そして扉の前で自分の使い魔であるカオちゃんとチェーンちゃんを呼び出す。

「召喚契約カオちゃん、チェーンちゃん」

「イギュ〜」

「やっぱり、トリシュはここに残しとく。2人はここでトリシュが家を出ないように見張っていてくれ。頼めるか?」


カオちゃんとチェーンちゃんにそう言い残して司は荷物を1つも持たずに自宅を後にし、学校へ向かった。勿論ブックスは持ってきている。あれは荷物扱いではないし。


正門前に着くと、多くの生徒が校舎へと向かっていた。学校なのだから当然なので、司もなんの違和感も持たずに校舎に向かう。すると後ろから司とほぼ同身長の学生が司を抜かし、その前を歩き出した。


後ろから来た人が前を取るのは何故かイライラする。抜かし返すと、学生がもう一度抜かしてきた。抜かされるのが嫌なのか、先程よりも早い。それを司が抜かし返し、それをまたというように繰り返して行くうちに、教室のある階に着く頃には全力疾走の状態だった。

「坂木、邪魔すんじゃねえ!」

「はあ!?邪魔してんのはそっちだろ!俺の前に立つんじゃねえ!」


そんな均衡した状態で教室に入ればどうなるか。予想するまでもない。曲がる時に曲がりきれずに柱に直撃する。少し前側だった司は自分の勢いに加え、坂木の勢いまで重ねて柱に身体打ち付けた。

「ガフッ!ゴフェ!」

「俺の勝ちだな司。ん?どうした?」

「オマエサエイナケレバァ・・・・・・グフ」

「手前に入った師匠が悪いにゃりね。けど、坂木が走るなんて珍にゃしい、にゃんかあったの?」

「俺の前に司が立ったからそれを追い抜いてそれを司がって感じだな。あとニア、似非猫キャラ上手くなってないか?」

「にゃはははは!聞いて驚け!ニアは超すーぱにあににゃったのだっ!」

「おっ、おう。んでどこが変わったんだ?」

「おまえらはなすよゆうあんならてえかせよ・・・・・・」

「嫌なこった」


司が何だとと言うのと同時に予鈴が鳴ったので、そのまま解散し席に座った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ