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Zな彼女とネクロマンサーの僕  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
191/194

出張7

遅くなってしまいました。少し鬱気味で書くことが出来ませんでした。

1話1話が短いけれどなんとか進んでいくのでよろしくお願いします。

「また別のBOWか!?」


「一個中隊でも壊滅するレベルのだ!絶対に勝てないからここから逃げて離すしかない!」


 ギムがBOWを閉じ込める為に塞いでしまった為、司の方から逃げるのは難しい。そうなれば司は一度BOWと会敵するしかない。


「(どうする……?通り抜ける為にわずかでも動けない時間を作るにしても、一個中隊で壊滅だったらひとりやふたりでよろけさせるなんてもってのほかだ)」


 司に中隊規模以上の武力を準備する余裕はないし、そもそもそんな力はない。あれと会敵するぐらいなら瓦礫を退けて脱出する方がマシだ。


 だがその選択肢を取る為には、司が瓦礫を退けている間誰かに囮になってもらう必要がある。無線がまともに使えない現状ではそんなものは呼べない。


「……レッド、すまん!」


 謝罪の意思を遠くからでも感じられるほど感情のこもった言葉を発した後、ギムは治療室の方向へと走っていく。


「俺ひとりに構えないよなぁ……となればやつの攻撃を誘発して避ける。それに一か八か———」


 言い切る前に縮地とも思える速さで司の懐に入り込んでいく。


 そんなものに回避など出来るわけもなく義手が間に挟まって弾き飛ぶ。当然それで勢いが殺せるのなら中隊規模が壊滅するわけがない。


 司の身体は手を離してしまった風船のように飛んでいき、その勢いのまま壁を砕いてビルの外へ弾き飛ばされる。


 ギムは背後から聞こえた音で司がどうなったか理解した。もしかしてと叫べば次はこちらが狙われるしそれ以前に聞こえる位置でもない。ギムは口を紡ぎそちらへの思考を外して治療室に隠れるように入り込む。


「ギムだ、まだここに誰かいるか!?」


「ギムさん……」


 連絡が途切れた時点で見捨てられたとしか思えない状況で来たのだからBOWなのではないかと恐る恐る機械の裏側から白衣を着た男たちが現れる。


「脱出する。移動準備は済んでるか?」


「当然です。見捨てられたとは思いましたけどね」


「流石だな。こっちにはBOWがいるから裏口から脱出するが、前衛張れる奴はいるか?しんがりはやる」


 ギムは背後からBOWが来ないよう警戒をしつつ男へ催促を促す。


「あと1分……いえ30秒待って貰えれば……」


「早ければいい。確実にやってくれ」


 機械のモーター音が小さくなっていく。あと少しだと畑違いのギムでも理解出来た。


「ギムさん、入力終了です!荷台に乗せるので手を」


「了解だ」


 ギムは男に近づくと近くの荷台を手に中に入っていた人たちを拘束具に固定して乗せる。


「よしこれで」


 ギムが入ってきた方向から不穏な音が近づいてくる。先ほどのBOWだろう。ギムは荷台を動かす始動を行うと白衣の男に残りを任せ、銃弾の確認を再度行なって壁の方向に銃口を向ける。


 音は変わらず鳴り続けているが、近づく様子はない。荷台の護衛もあるためそちらに視線を向けてそれを追っていった。


 運良くBOWはこちら側には少なくこのくらいなら現状でも処理は出来る。


「ギムさんこれなら脱出は可能です」


「ああ、分かってると思うが最後まで気は抜くなよ」


「どれだけの仲間がやられたと思ってるんです。それぐらい遺伝子に刻まれるぐらいに理解してますよ」


「それもそうだな」


 先行していた男のひとりがエレベーターへと辿り着き状態を確かめると、問題なかったようで後方にいるギム達に親指を立てて合図をする。


「こちら側の地下にはバンが残ってる筈だ。BOWを避けつつ登場後オレを置いて脱出しろ」


「ええ!?なんで……?———了解です、ギムさん」


 ギムは傷口を男に見せるとその理由を理解したようで、敬礼を即座に行いエレベーターへと進んでいく。


 最後の荷台をエレベーターへと近づけたその瞬間、エレベータープレス機のように潰れてオイルが白衣の男に飛び散った。


「ぎゃあああああああ!!!!!???!」


「回り込んできた?それとももう1匹暴君(タイラント)級がいたのか!?」


 ギムは目の前で仲間が潰されて狂乱状態になった男の首元を掴んで背後に回らせると自身に視線が向かうように弾丸を撃ち込んでいく。


「くそっなんでこいつらまで殺されなくちゃならねえんだよ!少なくとも運んでた子達はただ感染してた子でオレ達みたいに人を殺したわけじゃない。それなのに!」


 弾がなくなると同時に弾倉を入れ替えて発砲を続ける。


「なんか悪いことをしたか?オレ達が殺したから他の人が責任を負わなくちゃならないのか?答えろよ!この巨人や———」


 ギムの叫ぶ声が気に入らなかったのだろう。ギムの腹部へ吸い込まれように剛腕が近づいてくる。これでは発症前に死ぬ。逆に考えれば仲間を襲うこともなく死ねるという意味でもある。


 心のどこかが落ち着いていく。ああ……苦しい人生もこれで終わりだと、世界がこのゆっくりとした時間の中でギムへと伝えていく。


 服に掠れる———終わりと思ったその瞬間、その腕はギムの腹部へ入ることはなく近くの壁に刺さり込んだ。


「ギム。そっちに向かわせて悪かったな。こっからはこっちのターンだ」


「……は?」


 脳の理解が追いつかない。この声の主は確実に死んだ筈なのだ。こちらにこれが来た以上あれが生きている筈がない。


「腕は持っていかれたが、元々義手だったおかげで気にせず防御に回せた。地上から登り直しだったから時間はかかったけれど、ちゃんとお礼参りに来たぜ?それじゃ行こうキャンちゃん。痛い思いをさせる事になるけど、今は俺に力を貸してくれ!」


 蟹のような姿をしたBOWの肩に乗っていたのは死んだはずの司なのであった。

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