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Zな彼女とネクロマンサーの僕  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
188/194

出張で4

 その後もBOWを倒していった司たちは、レッドフィールドたちのいた部屋にたどり着いた。


「こ、これ……」


「ハンター級でさえここまでは出来ない。BOWを放った奴らの仕業だろうな」


「あんな危険なものと一緒に?同士討ちとかは?」


「ハンター級は見た目以上に賢いものが多い。試作品段階の時は『コレとこれ以外は殺せ』みたいな命令までなら出来たが、今は状況と場所によっては銃も使えるほどになってる」


「人間要らなくね?」


「人質の確保とかは出来ないからそういう所には人間は必要だ」


 瓦礫でソファーは潰れて部屋の奥には穴が空いていた。位置から考えて誰かは落ちている。


「御当主!ギム!」


 キムの声が部屋に虚しく響く。瓦礫で即死……というのは考えたくはない。自然と司とキムの身体はソファー近くの瓦礫を退けていく。


 司もレッドフィールドへ声をかけるがこちらも反応はない。


 最悪の可能性がふたりの額に汗を流す。心の声が無意識に溢れる。頼む…頼む…頼む…。


「———上に誰かいるのか?聞こえるか!」


 下の方から誰かに声が聞こえて来る。司は穴を覗き込むと下ではギムと光龍がBOWと戦っていた。


「生きてたか!光龍!」


「伊達に四幻神は名乗っちゃいねえ!レッドフィールドはこっちにいるんだが手が足りない。当主はどうだ!?」


「なら手数を増やす…!カオちゃんチェンちゃんサポート頼む!」


 使い魔たちはぴしりと額に手を———そこまで届いていないが行動は分かる———当てると司とキムの上げた瓦礫の中を進んでいく。


「カオちゃんどうだ?」


「ウギャァ……」


 芳しくないその表情にキムはカオちゃんたちを押し退けると手に傷がつくことを鑑みずにがりがりと瓦礫を退けていく。


「ぐっ……!」


 手傷もそうだが、人ひとりでは持ち上げるには厳しいサイズがキムに立ち塞がる。それを司は肥大化した右腕で顔を真っ赤にしながら持ち上げる。


「御当主!」


 息があるか叩いたり揺らしたりすると、小さく呻き声をあげて顔を震わせる。


「御当主……お怪我は!?」


「あーーー……」


 意識はあるが聴こえていない様子で虚ろ目だ。あれだけの瓦礫に埋もれていたのだ。鼓膜が破けていても不思議ではない。


 司はすぐにそれを把握すると携帯に文字を打ち込みその画面を見せると、ようやく反応が帰ってくる。


「……た、助か……」


「無理しないで下さい。ここから脱出しますので肩を」


 キムが担ぎ司がそれを伝える事で意思疎通をしていく。


 先程まで光龍たちといたのだから彼らから話を聞けば済むこと。まずふたりは合流を目指す為階段を降りていく。


 下の階から足音が鳴る。レッドフィールドを連れてにしては足数が多いことから彼らではないと判断した司は手すりを乗り越えて、肥大化した右腕を重量にものを言わせて振り下ろす。


 光龍たちではなかったが、BOWでもない。司はすぐに敵が持っていた銃に右腕を振り回して吹き飛ばすと腹部に差し込むように左肘打ちを放ち、階段から突き落とす。


 間を空けていなかったこともあってか数人が巻き込まれるが、全員ではない。残った敵が司に銃弾を放つが突き飛ばしと同時に膝をついて右腕を盾にすることでそれを防ぐ。


「ふたりとも頼んだ!」


 使い魔たちは司と同じように飛び降りると、最も近い敵の顔に貼り付いて行動の邪魔をし、その僅かに弾幕が減った瞬間を使って身体を変形させる。


 獣のような姿に変貌した司は全身が肥大化し、その身体で銃弾をはじきながら敵を無力化していった。


 うめき声を上げはするが動けそうな人間はいない。そう判断した司はその形態をすぐに解除して元の姿に戻る。


「レッドフィールド……本当に人間なのか……?」


「あんたがそう思うのも無理ないよな。BOWに慣れてる人から見たらあんなん人とは思えないよな」


「——————」


「……進もう」


 それ以上の言葉はない。そのままふたりは光龍たちとの合流を目指して足を進めた。


 階段をいくら降りていき同じ階につくと光龍はそれに気づいたのか、じりじりとこちらに近づいてくる。


「いい加減きつくなって来たところだ。このままここを放棄して脱出するぞ」


「部外者仕切るな。殿はこちらがする」


 ギムがそういうと光龍は一度表情を変えるがすぐにああ、と頷きレッドフィールドを担ぎ上げる。


「江木さん。あなたに御当主をお任せする」


「了解だ。ちゃんと送り届けるさ、死体でなくちゃんと生きた状態で」


「ありがたい」


「ん?どういうことだ。殿なのは理解できるけど、なんで死ぬみたいなことになってるんだ?」


「いくぞ。お前も疲れてるだろ?それにまともに戦闘に参加出来るのはお前ぐらいになりそうなんだから」


 ギムと光龍の会話が理解出来ない司に、特に返す言葉を言わずに光龍は司の肩を掴み、再び階段へと進む。


 光龍の手を引き離し理由を問いただす。いくら銃弾が飛び交う場所ではないとはいえ多数の中に置いていくことは出来ない。


「光龍、お前がしないなら俺が……」


 背後からギムが司の肩をがっしりと掴み自分に振り向かせ、その後自身の肩を司へと見せる。


 瓦礫で出来た塵でよく見えないが数本の咬み傷がギムの右肩に付いていた。


「ゾンビゲーでよくあるやつだよ。化け物にやられたら最終的にはあれの仲間入りってやつだ」


「けど兵器として運用されてるなら対策手段だって———」


「今現在無いから殿させろって言ってるんだよ。殺されるのは構わないが、味方を殺したりはしたくない……」


 司を押し飛ばし達観した笑顔司に向ける。


「そういう訳でお前さんらは御当主の事を頼みます」


「……いくぞレッドフィールド。折角の時間を無駄にしたくない」


 光龍はそう言うとキムにも声を掛けて階段を降りていく。


「……俺たちが来たからこうなったのかなぁ……」


 ギムは元いた場所に戻ってBOWに武器を向けている為司の声も届かないし聞く気もない。


 肥大化した右腕は通常サイズに戻り、戦う意欲も司から無くなったことが見える状態だ。


 肥大化した右腕に取り付いていたフレイムとヒートは心配そうに司を見つめる。


「大丈夫だよ。反省や後悔は後でする。今は……」


 振り返りギムへ視線を向けるが彼の想いを汲んで司は歯ぎしりを立てた後、光龍たちの後を追った。

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