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Zな彼女とネクロマンサーの僕  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
184/194

サブ

 司が部屋でぐうぐうと寝ている頃。サブとハチは互いに自分の能力を生かした模擬戦を行っていた。


 金属や鉄が混じるハチの能力及び義手はサブに対しては不利を背負う。


 だが不利なのが分かっているなら対策のしようはある。勿論それをさせて貰える程サブも甘くない。


 サブも元々は正規品(オリジナル)の部下だ。その対策をさせない立ち回りは可能だ。何度も手合わせしていれば尚更だ。


 ハチは手を合わせ鉄塊をサブへと飛ばしそれらを壁に距離を詰めていく。


 鉄塊の高度は低く下から入り込むようには近づけない。となればサブから見てハチの近づくルートは鉄塊を壁として使うなら上と左右の3択だ。


 左右へ電気を纏った鎖を放ち上には光剣を放ちつつ前方に左手に持った拳銃から弾丸を鉄塊に撃ち込む。


「ちっ」


 ハチは元々3つのルートから攻めるつもりはなく、近づいた所で鉄塊に衝撃を与え加速させた鉄塊をぶつけるつもりだったが、その前に専用弾を撃ち込まれた事で静電気でビリッとくるのと同じ様なものだった。


 当然出力はそんな生易しいものではないが、金属製でまとめられているハチの腕にとっては非常に厄介極まりない。


 少し遅れてくる左側へと移動すると左腕を取り外しそれを鎖に絡ませて本体への攻撃を回避する。


 ハチはそのままサブへと近づきながら義手を再度作成しつつサブの足元から鉄塊を打ち上げる。


「何度やってもやっぱりお前さんの能力とは相性悪いぜサブ」


 下から上ってくる鉄塊から転がるように降りつつ光剣を再び作り横薙ぎを放つ。


「そう言いながら対応してくるあなたもあなただと思う」


「詰んでないだけでキツいことには変わりはないだろ」


 膝を滑らせて横薙ぎを避けるとアッパーを放つと、サブは光剣の横薙ぎで身体が引っ張られ回避が遅れてしまい直撃を受ける。


 当然回避は出来ないことなどサブ自身も理解していた為身体の周りに電気を纏っていたが、ハチが知らんとばかりにその纏った電気の痛みに耐え打ち上げたのである。


「くっがっ…」


 顎から流れてきた振動が身体中を流れ、動きが取れなくなったせいか受け身も取れないままバタンと仰向けに倒れる。


「コレで一本だなサブ。何戦ぶりだなぁ」


 ハチが伸ばした手をサブは掴みながら立ち上がる。


「やっぱり僕は能力上物理的な攻撃に対しての耐久性が低いな。耐久性を補う為に攻撃面を控えるか…」


「それより上が来たら終わりだろ。上振れ狙ってけ、上振れ。俺だって防御面強くしたらそれこそお前には勝てないんだから。お前も同じようにすりゃいい」


「考えておくよ…」


「さてともう一戦と行こ———」


 トレーニング室にエヴィルが扉をガチャリと音を立てながら入ってくると2人にタオルと水を投げ渡す。


「同じ人間とやり合ってもあまり経験値は回収出来ないだろ。悪癖も付くしな」


「ゼロワンだってソラ…だったか?あいつからここ最近ずっと受けてるだろ。俺たちと変わらないと思うが」


「同レベル同士でやっても意味がないという意味だ。レッドフィールドとサブは私も2人の戦いを見たが、毎回毎回全く違う方法で教えていた。手札が多いんだよあの人。おふたりさんと違ってな」


「言ってくれるねえ。手札の少なさは否定しないが、1枚1枚は劣ってるとは思わないんだが」


「ハチのは手札というより根性で誤魔化してるだけでは?」


「根性は世界を救うぜ?根性育成は大事」


 サブとエヴィルのふたりは溜息を吐き、はいはいそうですねとぼやく。


「見た目が僕たちとそう変わらないのにどうやってあんなに手札を増やせたんだろうか。生まれた頃からやったとしても、あんなには増やせないと思うが…」


「そこだ。君の能力のように基本を応用して武器に形状を変更したとかなら理解出来る。完全に系統の違うものを高水準で行っているのが不思議だって話だ」


 エヴィルは小さいモニターサイズの端末に入力をすると、そこに映った画面をふたりに見せる。


「気になったから「ソラ」という人物について調べてみたらこういうのが出てきた」


「ふむふむ……あいつも外の世界(アウターワールド)の住人なのか」


「アウターワールド?」


 エヴィルとハチは低ランクとはいえ最低限の学習時間は設けられていたこともあり、ある程度の理解は持っているが、サブは巨大人工浮島(ギガフロート)を中心としたものしかない。


「その名の通り外の世界だよ。俺たちの住むこんな世界と比べりゃ規模も何もかもが大きい世界さ」


「規模が大きいことで何か変わったりするのか?」


「1日10キロ歩く人と20キロ歩く人じゃ使ったカロリーは違うだろ?それと同じ原理よ。何もかもこちらより大きいってことは重力とかも大きくなる。自然と体に掛かる負荷も大きくなるからその分だけ経験値量も違う」


「つまりアウターワールドの住人は僕たちが半日かけた訓練をもっと少ない時間で行えるから、その分だけ手札を増やす余裕があるということか」


「そういうこと」


「だがそれはこちらの世界の住人との話の場合だ。外側の人間同士の戦いとなるとまた変わってくるとは思う」


「外側同士では条件は同じだ。つまり得られる経験値は変わらない。ならどうやってあれだけのものを?」


「だから私がふたりの訓練用のデータも含めてそれらを持ってきた」


 端末に再び触れハチの携帯にデータを送る。内容はソラのデータだった。


「戦闘のみのデータをまとめてもらってどうも」


 戦争で目撃されたソラの戦闘をまとめるとなると、それだけ長時間モニターを確認し続けることになる。


 それだけではない。それらのデータを民間企業が持っているということは巨大人工浮島(ギガフロート)から支給されたのだろうか。


「私だけじゃない。木下副主任の手もお借りしているからそれほど難しいものではない」


 木下曰く「ハッキングなんで跳び箱すれば簡単だし、バレても上から武器をつくるために必要だからって言えば誤魔化せる」との事だが、そんな事あるのかとハチとサブは首を傾げエヴィルは知らないと肩をすくめる。


「念の為言うが私はハッキングなんて器用な事出来ないからな」


「知ってるよ。ありがとな」


 水を喉に流しながら立ち上がったハチはエヴィルと共に端末に入ったデータをシミュレーターに取り込んで行く。


「もうすぐで大会が始まる。俺かサブのどっちが出るわけだし最後の締めって事で」


「僕はあなたとのでぼろぼろだけれど、ここまで君とやってきたんだ。最後まで請け負うさ」


 汗を拭き取りタオルと水を角に置くと、サブは拳銃の弾倉を取り替えハチが入力したソラの戦闘データとの戦闘を始めた。


 




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