大会近く
予選まで近くなったころ、司は睡眠も最低限にソラとの訓練を続ける。
何度も右腕の義手が悲鳴を上げるような訓練を繰り返し、その度に木下達が作った義手に取り替えまたソラと手合いを行う。
「反応が遅い。まだリミッターを6割外している以上本戦の奴らに勝てると思うな」
司は垂れる汗を手で拭い分かってると言いながら2刀のマチェーテを握り走り込んで斜めに切り上げる。
ソラは腕を剣のようにするとそれを上から振り下ろし簡単にバラバラと砕きそれに合わせて左膝を突き上げ胸へぶつける。
関節が抜けるような感覚と、肺から空気が抜ける事で咳き込んでしまう。
「がはっ!ゲホッ…!」
何度も呼吸整えようとするが咳き込みは止まらない。だがその状態でも立ち上がり砕けたマチェーテを作り直す。
「(これで10本目…ソラと会う以前と比べれば同性能の物を維持出来るようになってるからその辺は良くはなってるんだが……)」
武器を構え直した右腕のマチェーテを時計回りに回す。
「十二獣!」
6人の司が生み出されそれらが全て一直線にソラへと飛び掛かる。
ソラは回避行動を取ることもなく全て剣の腕で斬り伏せていく。
司は壁となった6人の司に隠れるように近づき武器を突き出すがそれを消えるように背後に回り込み司の背中を切り裂いた。
「攻撃を隠しながらは良い方法だけどタイミングが遅い。やるなら相手の攻撃のタイミングに合わせろ。攻撃を開始してからの回避は普通なら無理だ。そのタイミングとコツを掴んでいくんだ」
ゴロゴロと転がり、壁にぶつかって初めて止まった司にそうアドバイスをかける。
「それをやろうとしたらしたらでタイミングを僅かにずらして対応するんだろ?」
「そりゃな。そこを実践で掴めって話だし」
ソラの伸ばした手を掴み立ち上がると睡眠不足や疲れからか身体をふらつかせる。
それを支え担ぐと部屋を出てリビングに向かう。
「今日明日は休息日にするか」
「調子の悪い状態での特訓も大事だって言ったろ?少し休んだらまた……」
「大事は大事だが、下振ればかりも良くない。しっかり休んで上振れも知るのも大事だってことよ」
「難しい……」
「ってわけで残りの1日半好きな事に使ってくれ」
ソラはひとり玄関へと歩いていく。
「ソラさんどっかに行くのか?」
「俺の依頼はお前の訓練だからな。お前さんも休みたいように俺も休みたいのよ。俺だってずっと起きてるわけだしな」
「それはそうだな」
「ってな訳でお休み」
「ならひとつお願いがあるんだけど」
「ん?なんだ?」
「ここじゃなくて部屋にしてもらっても?」
「そりゃそうだ。悪い悪い」
再び司の肩を担ぐと部屋まで運び司は夢の中へソラは外へと向かった。