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1日目の昼(1)

「くふぅ~食った食った。元取れたかねえ」

「この地域での価格からすれば、十分取れていると思いますよ」


 バスを使って帰宅途中だった二人は、最後尾の席を堂々と取っていた。時間帯的にも人は交通機関を使わなくても行くことの出来る範囲で行動するので、バスの中は空いている。そのおかげで席を独り占め出来るわけだ。

「やっぱ、この時間帯は人がいねえなあ。まっ、いない方がこうやってゆっくり出来るわけだし、お昼様々だな。それで、昼飯のバイキング、どうだったか?トリシュ。多少は腹の足しになったか?」

「多少なんてとんでもないです。十分な量をいただきました」

「それならいいや。それにしても、あんな簡単に休みにして貰えるとは思わなかったな。俺は能力がないとはいえ、一応主任だぜ?社長出勤でなおかつ、最速で退社。いくら体がぼろぼろクロスボーンでも、こう易々と帰れるもんかねぇ」

「いつもは違うんですか?」

「平日は普通に学校行ってその帰りに出勤するかんな。結局働いてる時間は平日とそんな変わんねえ。それでも、今日は異様に早い。なんか嫌な予感がする。いつもと違うことをする時って大体嫌なことが起きるもんだし。トリシュ、次のバス停で一回降りよう」


 トリシュが頷くのを確認すると、司は停車ボタンを押す。これで数分後には止まるはずだ。現在、このバスは高速レーンを使っている。市街地と住宅街は歩いて行くにはかなり遠い。基本、学校などは住宅街に全て集められ、市街地は殆ど全てが司が働いてる会社などのような大型企業が置かれている。もちろん、住宅街にも大型企業がないわけではないし市街地に住宅がないわけではない。スネークのいたところもそうだ。住宅兼大型企業と言うのも普通にある。数は限りなく少ないが。


 バス停に到着し二人は降りる。司がトリシュの分までカードで払った。高速レーンを使うバスは高速レーン内のバス停に停車するので、乗客は歩道までは歩いて行かないといけない。多少不便ではあるものの、広い町を素早く移動できるのであれば、そこまで大きな問題では無いだろう。そこは人によって考え方が異なるので、問題だと思うのなら乗らなければ良いという答えも出せる。まあ、司は基本バイク通勤だが、今はないので渋々乗っているだけだ。

「ここからだと家まで三十分位か。そんな遠い訳でもないけどやっぱ歩くの面倒やなあ。酸素吸って二酸化炭素を吐くだけで疲れる俺にとっちゃあきついったらありゃしねえ」

「それなら降りなければ良かったのでは?」

「嫌な予感がしたんだって言わなかったか?説明はし辛いが、こう・・・・・・効果音なら言えるんだが・・・・・・効果音は説明になってないし。ああっ!面倒や。効果音で言うと、でろでろりーんって奴だ。他の言い方だったらキラキラバッシューンとかかな?分かんねえだろ?説明してる俺も分かんねえ」

「何となくであれば」

「分かるんかい!効果音で理解できる奴初めて見たぞ・・・・・・」


 驚きを隠せない司を首を傾げて見るトリシュだったが、どちらかというとそれは理解出来たというよりも、直感的な何かで感じたという方が正しいのかもしれない。まあ、理解出来ないのが普通なのだから、それはそれで良いのだが。司は身体をぐっと伸ばし上を見上げると何か黒い点が見えた。

「・・・・・・ん?トリシュ、なんか上から落ちてきてるんだが、あれなんだろ」


 言われた通りトリシュは空を見上げると、鉄の塊が落ちてきていた。太陽に隠れてよく見えていないのか、司はそこを動かない。司の位置に落ちてきていると判断したトリシュは司を引っ張り自分の後ろに引き込みつつ背中の武器を取る。

「マスター。予想通りでしたね。あのままバスに乗ってたら死んでました」

「何がきてんだよ?トリシュ」

「敵ですね多分。このまま高速レーンを盾にして逃げますよ。今のあなたは傷だらけだ。今のまま戦う訳にはいきません。走れますか?無理なら背負いますので、早く・・・・・・!」

「わ、分かった。お前に判断は任せる。とにかく走ればいいんだな?トリシュ」


 言われた通りに高速レーンの下を走り出すのと同時に、鉄の塊がコンクリート製の道路を貫通し下水道まで落ちた。薄汚れた水が周りに飛び散り、司とトリシュに降り注ぐ。一般車両の幾つかは空いた穴に吸い込まれるように落ちて、それもまた小さな水飛沫を上げた。

「わっぷっ・・・・・・隕石かよ!?」

「隕石なら風圧で吹き飛んでいますよ!とにかく今は距離をとりましょう。もし戦闘になったら一般の人が巻き添えを受けてしまうかもしれません」

「分ーってる。昨日今日ってずっと戦闘に巻き込まれてるし!全くよお、やるなら別ん所でやってほしいわ!」


 野次馬が穴へと集まっていく。救急へ連絡している人もいれば、落ちた人を助けようと降りていく人もいたが、それのおかげで司とトリシュには人の目が向いていなかった。目立たないで逃げられるのは、もし落ちてきたのが本当に敵だった場合、すぐに見つかって戦闘になってしまい街に被害が出るかもしれない。

「なあ、あの人達見捨てて良いのか?俺一人のことを考えれば確かに囮になるかもしれないが・・・・・・」

「速く逃げれば、ここにはいないと判断して誰も手を出さないかもしれません。とにかくマスターがここにいればどちらにせよ多少の被害が出ます。家に逃げるわけにもいきませんし、最終処分場等の人が少ない場所へ逃げましょう」

「ああ・・・・・・また帰ったら妹達に怒られるわぁ。納得できねえ。許さんぞ!まったく・・・・・・ブックス!召喚契約・・・チェーンちゃんをそのまま俺に同調(チューニング)!」


 袖から出てきた鎖を高速レーンの柱にくくりつけながら、振り子の原理で進む。走った方が早いのは事実だが、司の体力ではもう走るほどの体力が残っていなかった。当然ではあるが、一般レーンには信号がある。走っていたら信号に足を取られるかもしれない。それなら多少遅くなっても進み続けられる高速レーンの柱を利用した移動の方がいいと司は判断した。トリシュは柱を飛び移ることで司を追いかける。


その頃、大穴に集まっていた人々は力を合わせ落ちた人をロープで上げていた。救助隊もすぐに駆けつけていたようで効率的に落ちた人を助けていた。何人落ちたかはまだ把握出来ておらず、下水道の奥も捜索範囲に入っているが人が持てるような灯りでは捜すには手間が掛かる。

「やはり、こっちの方にはいないか。付近の被害者は助けたし、戻るか」


 隊員は穴が空いた現場から少し離れたところまで探していないことを確認した後現場へ戻ろうとしたが、数歩水の波紋が広がると途中で波紋が同じところで起きて、最後はなくなった。また波紋が広がり出したが、先程より小さい。歩くことで波紋が起きているしては統一された広がりではなかった。その上隊員の進む方向が現場とは違う方向、司達の方向へと変えていた。ポチャ。ポチャ。ポチャ。と音を立てて隊員は司達の後を追った。

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