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Zな彼女とネクロマンサーの僕  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
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開催発表会

 派手なドレスを着た長髪赤髪の女性は色々な男性に色目をかけられながら軽く挨拶をしていた。


「レッド。少し疲れただろ?これを持って外で飲んでこい」


「ええ、そうさせてもらいますね」


 マツナガから飲み物を渡された女性は他の男性に軽く会釈をしながらバルコニーへと向かいそれについて行こうとした男性たちは2人に少年たちが壁になるように立って男性たちを引かせていった。


「はあ……これだからこの姿でいたくないんだよなぁ。ほんと相棒はすごいぜ」


 先程までとイメージがまるで違う声で文句を言っているところにヤミが隣に立つ。


「大変だったな。いつもは男に姿でいるお前が女性として行動するとはどういう風に吹き回しだ?」


「流石に偉い人の集まる所でパーカーはまずいでしょうよ。ですよね?ヤミどの」


「確かにな。あのパーカーにしか導入していないのか?」


「俺が作ったわけじゃないからなぁ。元々俺自身男だと思ってたし、下の学校に行ってた時はパーカーなんて着なくても男だったぞ」


「ふーむじゃあマツナガ氏に聞いてみてはどうだ?常にパーカーを着てるわけにもいかないだろう。同じ物があっても同種のパーカーを着続けるのも違和感感じるだろ?」


「正論ですなぁ」


 容姿について話しているとウェイターがいくつかの飲み物の入ったグラスを持って2人の元へと近づいた。


「ヤミ様。レッドフィールド様。お飲み物はいかがなさいますか?」


「レッドフィールドはまだ飲酒はダメだよな。なら私も今は控えよう。ジンジャーを」


「レッドフィールド様はどうされますか?」


「じゃあオレンジで。すいませんわざわざ外まで」


「いえ。こちらがジンジャーでこちらがオレンジになります。ごゆっくりお寛ぎ下さい」


 ウェイターは頭を下げるとすぐにその場を去っていく。渡されたグラスを2人は相手に向けると口に含み喉を流す。


「甘味がちょっと違うな。砂糖とかのじゃない?」


「農業プラントで生産してる物の中でも糖度の高い物を厳選して使用している。海外からの輸入はしていないからな、取れる量は限られるがその分味はいいだろ?」


 酸味はあまり強くなくかつオレンジの膜などもないので非常に飲みやすいものになっていた。


「流石上級国民様は良いものを飲んでいらっしゃる。俺たち一般人は飲めやしねえ」


「毎日飲んでいる訳じゃない。確かに私たち四幻神は会長グループに関係はしているが、トップというわけではない。毎日のように飲めるのは仕事柄店長(みせなが)だけだ。少なくとも私とエギルは君とそれほど変わらない生活水準だと思うがね」


 冷静に返答を返され負けたと判断し司は残ったオレンジを一気に飲み干す。


「ひとつ聞きたいことがある。構わないか?」


「そりゃ返答出来るものであれば」


「どうやったらそんなに胸が大きくなる。私は何をやっても大きくならん」


「……」


 ヤミが赤面しながらもしてきた質問に呆気を取られる司だったが、コホンと軽く咳き込むと口を開いた。


「揉みゃ大きくなるんじゃねえの?俺は自分が女と分かった時点でこれだったからもしかしたら相棒の方が詳しいかもしれない」


「それもそうだな。またどこかのタイミングで仕事としてではなく個人の人間として聞きにいく」


「胸を大きくしたいって理由で仕事の依頼をするのは酒の場じゃ笑いもんだけどな!」


「だな」


 互いに笑みを浮かべているとバルコニーを繋ぐ扉が開く。またウェイターだろうか。


「レッドフィールドだな」


「あんたは……四幻神の光龍」


 司の顔から笑顔が消える、殺意まではないものの敵意は隠していない。


「先日のことに関しては申し訳ないと思っている。謝って済む問題じゃないのは分かっているが———」


「あんたの自己満はどうでもいいさね。俺はただ妹を危険な目に合わせたのが許せないだけだ」


 司の右手には銃弾の出る蛮刀が握られその銃口を青年へと向ける。


「だからその為に今俺は立っている。責任を果たす為にも俺を撃つか決めてくれ」


「そう言われたら撃つものも撃てないだろ……そういう言い方嫌いだな。それにヤミさんもいる。撃てばこちらが殺されるし実質選択肢はないようなもんだろこれ」


「流石に友人を見殺しに出来るほど私は化け物じゃないからな。悪いが」


 司は納得はしないまま銃を降ろすと、それに合わせて光龍も右膝を付けて司へと頭を垂れる。


「この恩は忘れねえ。俺はあなたに借りを返すことを約束する」


「……」


 司は答えることはなく振り返り外へと視線を移動させた。


 家族を傷付けられて許せる者などはいない。許せる奴は家族愛のない者か頭がお花畑のお人好しだけだ。司はお人好しではあってもそこまでの領域には達していない。


 頭を下げたまま動かない光龍を見かねたヤミは肩をポンと叩き別の機会にと彼に伝える。


「すまないな気分を悪くさせてしまって」


「……あなたが謝ることじゃない。あいつも責任だけじゃなくてちゃんと罪も別の方法で償ってるのは分かってる。首の機械で分かってるよ」


 光龍の首元には機械が取り付けられており起動音が常時していた事からあれがないと生活も送れないのだろう。となれば能力も思うように使えない。


 能力者が無能力者になればどうなるか想像に難くない。それも高ランクの能力者が。


「今出すのはただの弱い者いじめだ。ここに住んでる低俗と同じ事はしたくない」


「ありがとう……」


 再びバルコニーを繋ぐ扉が開くとウェイター2人に声をかける。


「これより店長様の発表がありますのでお二方も中に」


「もうそんな時間か。レッドフィールド終わった後にでも話そう」


「了解だ。こっちはまっちゃん———松長の所に戻っておく」


 ふたりは互いに室内に戻り司はマツナガの横に、ヤミは杖を片手に立つ光龍の隣に移動する。


「どうだった?四幻神との雑談は」


「やっぱり人なんだなってのはよく分かったよ」


「そうかそうか。いかったいかった」


 司がマツナガに感想を聞かせていると中央の一段高い場所に灯りがともる。すると靴音が鳴る。


「お待たせした巨大人工浮島(ギガフロート)に住む同志達よ。これより2年前以来から休止していた所謂国内の代理戦争———そしてオリンピックとも呼べる競技大会の開催を発表する!」

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